地下の万里の長城・カレーズ 乾燥地トルファンの命を支える水路
中国北部を東西に横断する万里の長城。その足元で、同じく「万里の長城」の名で呼ばれるもう一つのインフラが、2025年の今も静かに人々の暮らしを支えています。中国北西部・新疆のトルファン周辺に張り巡らされた地下灌漑システム「カレーズ」です。
「地上の万里の長城」と「地下の万里の長城」
一般に「万里の長城」といえば、中国北部を山東省のHushan(虎山)から甘粛省・嘉峪関まで伸びる巨大な防御施設を指します。長大な城壁は、古くから外からの侵入を防ぐ象徴とされてきました。
一方、新疆のトルファンには、地表からはほとんど姿が見えない「地下の万里の長城」があります。それがカレーズと呼ばれる地下水路網です。
カレーズとは何か
カレーズは、トルファン市を取り囲むように張り巡らされた、広大な地下灌漑システムです。地中に設けられた通路や井戸のようなネットワークを通じて水を運び、極めて乾燥した環境の中で農地や生活用水を支える仕組みだとされています。
地上に築かれた城壁が外敵から地域を守るとすれば、地下のカレーズは、水不足という脅威から人々の暮らしを守る「見えない城壁」です。この比喩から、カレーズが「地下の万里の長城」と呼ばれていることがわかります。
乾燥地トルファンの水を守る役割
トルファンは、降水量が少ない乾燥地帯に位置します。そのような環境では、安定した水の確保が何よりも重要です。カレーズは、地下を通して水を運ぶことで、蒸発による損失を抑え、貴重な水資源を守る役割を果たしてきました。
広大な地下灌漑システムが市を取り囲むように存在することで、トルファンの人々は、厳しい自然条件の中でも農業や日々の生活を支えてきました。インフラとしてのカレーズは、単なる水路ではなく、この地域の歴史や文化、生活と深く結びついた存在だといえます。
古い技術が語りかける、これからの水の話
気候変動や水不足への懸念が高まる今、地下のカレーズのような仕組みは、「限られた水をどう守り、どう分かち合うか」という問いをあらためて突きつけています。
最新のダムやパイプラインとは対照的に、カレーズは、地形や気候に合わせて工夫を重ねてきた地域密着型の水システムだと見ることもできます。華やかな設備や巨大な建設プロジェクトではなく、見えない地下のネットワークによって都市を支える発想は、現代のインフラづくりにも静かな示唆を与えているようです。
中国北部を横切る地上の万里の長城と、新疆・トルファンを取り囲む地下のカレーズ。性質も姿も異なる二つの「長城」は、人が長い時間をかけて築き上げてきた「守りの技術」という点でつながっています。その連想をたどってみると、インフラは単なる設備ではなく、社会が何を守ろうとしてきたのかを映し出す鏡でもあることが見えてきます。
Reference(s):
Underground 'Great Wall' ensures water supply in arid Turpan
cgtn.com








