新疆・天山の秘境「天池」 神話が息づく天空の湖 video poster
中国西北部・新疆の天山山脈の奥深くに、古くから「神々の池」と語り継がれてきた湖があります。天池(Celestial Lake)です。氷河と森に抱かれたこの湖は、雄大な自然と物語性のある風景をあわせ持つ場所として知られています。
天山山脈に浮かぶ「神々の池」
天池は、天山山脈の山あいに静かにたたずむ湖で、中国の神話では神仙が住む「天上界」と結び付けられてきました。名称の「天池(天の池)」には、空からの恵みをたたえた神聖な水面というイメージが重ねられています。
周囲を取り巻く山々は一年の多くの時期に雪をいただき、その白い稜線が湖面に映り込むことで、まるで空と大地の境界が溶け合ったような光景をつくり出します。訪れる人は、まずその静けさと透明感のある風景に息をのむことでしょう。
氷河が形づくった「二重構造」の湖
天池は、氷河の動きによって生まれた湖です。氷河そのものが水をせき止める「氷河堰止湖」であると同時に、氷河が運んだ岩石や土砂が堆積して自然のダムをつくる「モレーン湖」の性質もあわせ持つ、典型的な例とされています。
氷河が山を削り、砕かれた岩や砂を運ぶことで谷の地形は少しずつ変化します。その結果として生まれたくぼ地に水がたまり、さらに堆積物がせき止めることで、現在のような深く静かな湖が形づくられてきたと考えられます。天池の水面は、その長い時間の積み重ねを静かに映し出しているともいえます。
雪山とトウヒの森を映す澄んだ水面
天池の大きな魅力は、その水の透明さです。結晶のように澄んだ湖面には、周囲の雪をいただいた山並みと、濃い緑の中国トウヒ(スプルース)の森がくっきりと映り込みます。風がない日には、上下が反転したような「鏡の世界」が水面に現れます。
こうした風景は、写真や映像だけでは伝えきれない立体感と静寂をたたえています。雪を頂く峰々の白と、トウヒの深い緑、そして青みを帯びた湖水のコントラストは、見る人の視覚だけでなく、肌で感じる温度や空気の匂いまで想像させてくれます。
木道を歩く「天然の酸素バー」体験
湖の周辺には木製の遊歩道が整備され、訪れる人はトウヒの森の中を歩きながら景色を楽しむことができます。木道は足元の土壌や植物への負担を減らしつつ、誰もが安全に湖畔へ近づけるようにする工夫ともいえます。
この一帯には、およそ千種におよぶ野生の植物や動物が生息しているとされ、季節ごとにさまざまな表情を見せます。豊かな森と清らかな空気から、天池はしばしば「天然の酸素バー」とも呼ばれます。歩みをゆるめて深呼吸をすると、日常の雑念が少しずつほどけていくような感覚を味わえるでしょう。
自然と向き合う観光地として
天池のように、貴重な自然環境と観光の魅力をあわせ持つ場所では、景観を守りながらどう楽しむかが大きなテーマになります。木道を歩く、決められたルートを外れない、ゴミを持ち帰るといった基本的な行動が、長い時間をかけて形づくられた環境を守る力になります。
遠く離れた新疆の湖について日本語で知ることは、単なる観光情報にとどまりません。自分たちの身近な山や湖をどう大切にしていくかを考えるきっかけにもなります。スマートフォンの画面から世界の風景に触れることは、小さな一歩かもしれませんが、自然との向き合い方を静かに問い直す時間にもなりうるのです。
Reference(s):
cgtn.com








