中秋節の1,000年伝統 山西省・唐甘露「空心月餅」が今も愛される理由 video poster
2025年の中秋節は10月6日でした。秋の夜空に月が映えるその季節、中国・山西省懷仁市では、約1,000年続くとされる伝統的な月餅「唐甘露(とうかんろ)」が今年も人々の食卓を彩りました。
山西省・唐甘露「空心月餅」とは
唐甘露の最大の特徴は、その名のとおり甘さと形にあります。中国語の名前は、その甘い味わいと、かまどのように中が空洞になった独特の形から来ているとされます。
見た目は素朴ながら、ひと口かじると外側は香ばしくサクッとした歯ざわり、中には黒糖のようなコクのある甘みが広がります。さらに中心部には自然にできた空洞があり、この「空心(月餅の中が空っぽの状態)」こそが、唐甘露を他の月餅と分ける存在感になっています。
1,000年続くとされる伝統のしくみ
唐甘露は、懷仁市で約1,000年前から受け継がれてきたとされる月餅です。長い年月の中で、作り方の基本は変わらず守られてきました。
- 外側はこんがりと焼き上げた香ばしい皮
- 中には素朴で甘い黒砂糖の餡(あん)
- 焼き上げる過程で自然に形成される中空の構造
- 全体として、かまどを思わせる立体的な形
特にユニークなのが、人工的に空洞を作るのではなく、焼成の過程で自然と中が膨らみ、空洞が生まれる点です。このため、一つ一つの仕上がりには微妙な違いがあり、そこに手仕事らしい味わいも生まれます。
2025年の中秋節と「月餅シーズン」
今年(2025年)の中秋節は10月6日でした。懷仁市でもその前後には「月餅シーズン」が本格化し、唐甘露の空心月餅が店先にずらりと並んだとされています。
記事を読んでいる今はすでに12月で、中秋節は過ぎていますが、あの時期にだけ漂う月餅の香りや、人々が箱を手に行き交う光景は、地域の記憶として心に残り続けます。唐甘露の月餅は、単なるお菓子というよりも、季節を告げる「合図」のような存在です。
空洞が生む食感と物語
唐甘露の月餅は「中が空っぽ」という、一見すると不思議な特徴を持っています。しかし、この空洞こそが、食感と物語の両方を生み出しています。
軽やかな食べ心地
中が詰まっていない分、全体は意外なほど軽く、外側の香ばしい皮と甘い餡のバランスが際立ちます。濃いお茶や中国茶と合わせても重くなりすぎず、最後まで飽きずに楽しめるのが魅力です。
かまどの形に込められたイメージ
かまどのような形と空洞は、家族が火を囲んで食事をする温かい時間や、豊かな実りへの願いを思い起こさせます。中秋節が「家族団らん」の象徴とされる行事であることを考えると、唐甘露のデザインにも、その精神が重なっているように感じられます。
変わりゆく時代と、変わらない味
通信販売やショート動画、SNSが当たり前になった今でも、懷仁市で受け継がれてきた唐甘露の空心月餅は、地域に根ざした味として静かに生き続けています。
職人から次の世代へ
1,000年という時間は、ひとりの職人では到底たどり着けない長さです。代々続く作り手たちが、レシピや焼き方の勘どころを言葉や手の動きで伝え、そこに小さな工夫や変化を重ねてきたことで、今の唐甘露の姿があります。
ローカルな味が持つ「世界性」
月餅や中秋節は、すでに世界各地で知られる季節のキーワードになりつつあります。その中で、唐甘露のようなローカルで個性的な月餅は、「中国のどこかの町には、こんな味がある」という具体的なイメージを私たちに与えてくれます。
グローバルな情報があふれる時代だからこそ、特定の土地で長く愛されてきた一つの菓子に目を向けることで、国や地域を超えた共通点や違いが、より立体的に見えてきます。
「読む」中秋節から、「味わいを想像する」中秋節へ
2025年の中秋節はすでに過ぎましたが、唐甘露の空心月餅のようなストーリーを知ることで、来年以降の中秋節の見え方も少し変わるかもしれません。
月を眺める夜に、どんな菓子がどこの町で焼かれているのか――。そんな想像を重ねながらニュースを読むことは、遠く離れた地域や人々に静かに思いを寄せる、小さなきっかけにもなります。
唐甘露の空心月餅は、約1,000年の時間を超えて続いてきた地域の記憶です。その甘さと軽やかな食感、そして空洞というユニークな形を通じて、私たちは「伝統」が今も日常の中で息づいていることを改めて感じることができます。
Reference(s):
cgtn.com







