四川・瀘州の油紙傘 6代続く職人一家の物語 video poster
2025年のいま、国際ニュースでは大国間の政治や経済が注目されがちですが、中国四川省・瀘州市の小さな町でも、静かに受け継がれている物語があります。それが、6代続く瀘州の油紙傘(オイルペーパーの傘)づくりです。
巨大なクスノキの下で続く、6代目の仕事
瀘州市の Fenshuiling(フェンシュイリン)鎮には、大きなクスノキが一本立っていて、枝を四方に広げる姿はまるで空に広がる巨大な傘のようだといいます。その木陰で、「瀘州油紙傘」の6代目の継承者である Bi Liufu(ビー・リウフー)さんが、今日も祖先から受け継いだ仕事を続けています。
「私たちの家族は、何世代にもわたって油紙傘を作ってきました。昔、私たちは『artisan(職人)』と呼ばれていました。手で物をつくる人という意味です」と Bi さんは話します。家で受け継がれてきたのは、単なる技術ではなく、手仕事への誇りそのものです。
竹一本から生まれる傘 細部に宿るこだわり
瀘州の油紙傘づくりは、材料選びからすでに時間と手間のかかる仕事です。骨組みに使うのは、3〜5年ほど育った竹。まずは天日に干し、その後およそ1か月間、水に浸しておきます。これは、竹の中に潜む害虫を防ぐための大切な工程です。
乾かした竹は、一本一本が傘の骨になるよう丁寧に割られます。竹の節の長さは少なくとも25センチ以上でなければならず、節と節のつなぎ目は、わずかなずれもないように正確に調整されます。最後に紙を貼る工程でも、全体に均一に圧をかけて貼り込むことが求められます。
こうした細部へのこだわりが、美しく開き、きちんと閉じる一本の傘を生み出します。工程のどこか一つでも妥協すれば、仕上がりの傘にすぐに表れてしまう世界です。
大学卒業後に家業へ 父が突きつけた「一本作れ」の課題
しかし、伝統があるというだけでは、現代社会でこの仕事を続けていくことは容易ではありません。Bi さんの息子である Bi Yuanshen(ビー・ユエンシェン)さんが大学を卒業して家業を継ごうと決めたとき、周囲には半信半疑の空気もあったといいます。
Bi Yuanshen さん自身も、本当に自分にやっていけるのか確信が持てない中で工房に入りました。そんな息子に対して、父の Bi Liufu さんが出した条件はシンプルで厳しいものでした。「最初から最後まで、自分一人の手で一本の傘を作ってみなさい」。
Bi さんは「傘を作ることは、人として生きることと同じだ。必要なのは決意と忍耐、そしてあきらめない心だ」と息子に伝えました。骨組みから紙貼り、仕上げまで、慣れない手つきで向き合い続けた15日目、一本の傘がようやく完成します。
出来上がったその傘は、完璧とは言えなかったかもしれません。しかし Bi Yuanshen さんにとっては、自分の決意と粘り強さが形になった、かけがえのない一本になりました。
名前より大切なもの どう受け継ぎ、どう発展させるか
Bi Yuanshen さんは「この技が自分たちの姓を冠しているかどうかは気にしていません。大事なのは、どう受け継ぎ、どううまく発展させていくかだけです」と語ります。
家族の名よりも、技そのものの未来を優先するという考え方には、2025年の今を生きる多くの人が共感できるのではないでしょうか。仕事のやり方や働き方が大きく変わる中で、「何を残し、何を変えていくのか」という問いは、ものづくりに限らず、多くの分野で共有されるテーマになっています。
巨大なクスノキの下で一本の傘を作り続ける親子の姿は、伝統工芸のニュースであると同時に、私たち一人ひとりの働き方や生き方を問いかける物語でもあります。あなたなら、自分の仕事や技術、経験を、次の世代にどう手渡したいと思いますか。
Reference(s):
cgtn.com








