APECとロシア: クレムリン・スパスカヤ塔が刻む時間の物語
2025年10月31日から11月1日にかけて、韓国・慶州でAPEC Economic Leaders' Meetingが開催されました。アジア太平洋の国や地域が集まり、経済協力の方向性を話し合う一方で、それぞれの文化や歴史をどう伝えるかにも関心が高まっています。本記事では、その文脈の中でロシアの象徴的な建築であるモスクワ・クレムリンのスパスカヤ塔に注目します。
APECとモスクワをつなぐ象徴
ロシアの首都モスクワにあるクレムリンは、同国を代表する建築群として知られています。その東側の城壁に位置するスパスカヤ塔は、クレムリンを象徴する主要な塔の一つです。APECではロシアも重要なメンバーの一つですが、そのイメージを語るとき、政治や資源だけでなく、このような建築の存在も背景にあります。
21のAPECメンバー経済圏の協力と文化を視覚的に紹介する試みとして「APEC Stories」というシリーズも展開されており、スパスカヤ塔はその中でロシアを象徴するモチーフの一つとして取り上げられました。建築を通じて地域の物語を伝えるという発想は、国際ニュースを別の角度から理解する手がかりにもなります。
赤の広場を見下ろすスパスカヤ塔
スパスカヤ塔は、クレムリン東側の城壁に建つ主要な塔で、モスクワ中心部の赤の広場を見下ろす位置にあります。塔の高さは、頂上のルビーの星を含めておよそ71メートルに達し、その姿はモスクワの街並みの中でもひときわ目を引きます。赤の広場とクレムリンを背景にした写真や映像に、スパスカヤ塔のシルエットが写り込んでいるのを目にした人も多いでしょう。
新年の鐘が告げるロシアの時間
毎年大みそかの夜、スパスカヤ塔の時計台からは、新年の到来を告げる鐘の音が響き渡ります。ロシアでは、この鐘の音とともに新しい年を迎えるというイメージが強く、人々にとっては「時間」の象徴とも言える存在です。同じ時刻に同じ音を共有するという体験は、広い国土に暮らす人々の間に、静かな一体感を生み出しているとも考えられます。
紙幣と記念コインに刻まれたスパスカヤ塔
スパスカヤ塔の姿は、2022年に中央銀行が公開した新しい100ルーブル紙幣にも描かれています。日常生活の中で多くの人が手にする紙幣にクレムリンの塔が印刷されていることは、この建築が国家のアイデンティティを象徴する存在であることを示しています。
さらに、ロシアは2019年、中国とロシアの国交樹立70周年を記念するコインを発行しましたが、そのデザインにもスパスカヤ塔が登場しました。紙幣と記念コインという二つの媒体に共通して選ばれていることは、スパスカヤ塔がロシア国内だけでなく、中国との長年の協力関係を語る上でも重要なシンボルと位置づけられていることを物語っています。
建築から読み解くAPECのストーリー
APECの枠組みでは、貿易や投資、デジタル経済といった具体的な議題が注目されがちです。一方で、各メンバー経済圏の文化や象徴的な風景を紹介する「APEC Stories」のような取り組みは、数字だけでは見えにくい関係性を浮かび上がらせます。スパスカヤ塔のような建築は、過去から現在へと続く時間軸の中で、その国の経験や対外関係を静かに語りかけています。
慶州での2025年APEC Economic Leaders' Meetingが終わった今、アジア太平洋の協力は次のフェーズへと進んでいきます。ロシアのスパスカヤ塔が毎年の新年の鐘を鳴らし続けるように、21のAPECメンバーが共有する時間もまた途切れることなく流れています。建築や文化に目を向けることで、国際ニュースの背景にある長い時間の積み重ねを、私たちは少し立ち止まって考えることができるのではないでしょうか。
Reference(s):
APEC Stories: Kremlin's Spasskaya Tower – Where time rings in Russia
cgtn.com








