海口・騎楼老街の朝市に見る、海南ローカルと国際化のいま video poster
国際ニュースを日本語で追っていると、大きな会議や経済指標に目が行きがちですが、中国・海南島の都市、海口(Haikou)にある「騎楼老街(Qilou Old Street)」の朝市には、島が国際的な目的地へと変わりつつある今を映す、小さなニュースが詰まっています。
歴史あるアーケードの下で目を覚ます市場
騎楼老街は、歴史あるアーケードが続く通りです。そのアーチの下で、夜明けとともに朝市が動き出します。まだ空気がひんやりしている時間帯、店先のシャッターより先に目を覚ますのは、市場で働く人たちです。
通りには、漁師たちがその朝に揚がったばかりの魚介類を並べます。光を受けてきらりと光る魚や貝は、「今日の海」のコンディションをそのまま伝えるニュースのような存在です。そのすぐ隣では、熱せられた中華鍋がじゅうじゅうと音を立て、黄金色のエビの揚げ餅が次々と揚がっていきます。
油のはぜる音、立ちのぼる香り、行き交う人の声。騎楼のアーチがつくる半屋外空間は、五感すべてで楽しむ「朝のニュースルーム」のようにも感じられます。
エビの揚げ餅が語る、海南ローカルフードの力
この朝市を象徴する一品が、黄金色に揚がったエビの揚げ餅です。中華鍋の中で丸く固められた生地が、じわりと膨らみながらきつね色になっていく様子は、つい足を止めて見入ってしまう光景です。
揚げたてをかじると、外はカリッと、中はふんわり。エビの旨味が広がり、朝の空気の冷たさと対照的な、温かくやさしい味わいが口いっぱいに広がります。この一皿には、海に囲まれた島としての暮らしと、日々の食卓を大切にしてきた海南の文化が凝縮されています。
観光パンフレットに載る「ご当地グルメ」というラベル以上に、エビの揚げ餅は、地元の人にとっては朝のルーティンであり、生活の一部です。その意味で、ここで揚がる一枚一枚が、海南の「日常」を伝える、食べられるニュースだと言えるかもしれません。
ローカルな朝市に流れ込む「グローバル」
この騎楼老街の朝市が興味深いのは、どこまでもローカルでありながら、同時にグローバルにも開かれている点です。海南島は、国際的な観光・ビジネスの目的地として存在感を高めつつあり、「島が国際的な目的地へと成長している」という変化は、こうした路地の風景にも静かに反映されています。
朝市を歩くと、多くは地元の人たちですが、ときおり旅の途中の訪問者と思われる人の姿も混ざります。彼らが見つめるのは、観光地として整えられた「見せる風景」ではなく、海南の人々の暮らしそのものです。ここでは、世界各地からの人の流れと、長く続いてきたローカルな日常が、騎楼の影の中で自然にすれ違っています。
島の外からやって来る視線が増える一方で、並んでいるのは昔ながらの魚、野菜、揚げ餅。市場のリズムは大きく変わらないまま、そこに交わされる会話や支払いの手段、人々の服装の中に、じわじわと「国際化」の要素が入り込んでいる――そんな現在進行形の姿がにじみます。
2025年のいま、なぜこの朝市に注目するのか
2025年12月現在、海南島の国際化は引き続き進んでいますが、その変化は必ずしも大規模な開発プロジェクトや統計だけで語れるものではありません。むしろ、騎楼老街の朝市のような、ごく日常的な場所にこそ、時代の変化が最も正直な形で表れます。
この朝市をじっくり眺めてみると、次のようなポイントが浮かび上がります。
- 漁師や屋台の人たちの動きから見える、海南の生活リズム
- 歴史ある騎楼アーケードの下で受け継がれてきた、ローカルフードの技と記憶
- 島が国際的な目的地として注目される中で、外からの視線と内側の暮らしがどう共存しているか
- 「映える」観光地の裏側にある、変わらない朝の買い物風景
国際ニュースを考えるとき、外交や安全保障だけでなく、こうした市場の風景からも、世界と地域がどうつながっているのかを読み解くことができます。騎楼老街の朝市は、その意味で、海南という島の「いま」を知るための生きた教科書のような場所です。
ヘリテージとモダニティ、その間にある「生活」
騎楼という歴史的な建物の下で開かれる朝市は、「ヘリテージ(文化遺産)」と「モダニティ(現代性)」の交差点でもあります。写真に収めたくなる街並みの美しさと、魚の値段をめぐる何気ないやりとりが、同じフレームの中に共存しています。
一日の始まりを告げるこの市場では、伝統はガラスケースに入れられた展示物ではなく、揚げたてのエビの揚げ餅や、今朝の漁の成果として、そのまま人々の手に渡っていきます。観光地として整えられた表舞台と、地元の人が日々使う生活空間。その境界線が、朝の市場ではほとんど見えないほど溶け合っています。
毎朝繰り返されるこの風景は、華やかなイベントのように大きく報じられることはありません。しかし、島が国際的な目的地として歩み続ける限り、騎楼老街の朝市は、海南の素顔と変化を静かに伝え続ける、もう一つのニュースの現場であり続けるでしょう。
Reference(s):
cgtn.com








