海南島・五指山の生物多様性 自由貿易港の「緑の心臓」を歩く
海南島の内陸部に広がる五指山の熱帯雨林は、古くからの樹木が生い茂り、無数の植物と多様な昆虫が暮らす、生物多様性の宝庫です。いま、この森は国際的な自由貿易港として発展を続ける海南島において、環境保護と持続可能な開発が両立しうることを示す象徴的な存在になりつつあります。
海南島の「緑の心臓」五指山とは
五指山は、熱帯気候に育まれた豊かな雨林に覆われ、島の経済や観光の活性化が進む中でも、手つかずの自然に近い姿を保っているエリアです。高くそびえる樹木が厚い樹冠をつくり、その下に、シダ植物や低木、苔類など多様な植物層が重なっています。
開発の波が押し寄せる地域において、このような広大な森が維持されていること自体が、海南島が環境保護に力を入れていることを物語ります。五指山は、島の「緑の心臓」として、気候や水資源を支える役割も担っていると指摘されています。
雨林が支える豊かな生物多様性
五指山の熱帯雨林では、生物多様性が層のように積み重なっています。人の目に入りやすいのは巨大な樹木ですが、その足元には、無数の生命が静かに息づいています。
- 樹冠部では、陽光を受けて成長する高木やつる植物が複雑なネットワークを形成
- 中層には、鳥類や小型の動物、昆虫が行き交い、花粉や種子を運ぶ役割を担う
- 地表近くでは、落ち葉や倒木を分解する微生物や昆虫が、森の栄養循環を支える
こうした多様な生き物のつながりが、森全体の回復力を高めています。一本の古木や、ひとつの倒木の下にも、目に見えない豊かな世界が広がっていると考えられます。
整備されたトレイルに映る「共存」のかたち
五指山の特徴の一つは、よく整備されたトレイルがあることです。雨林の中に延びる遊歩道を歩くと、濃い緑に包まれ、湿った土の匂いや、見慣れない昆虫の動きに自然と意識が向きます。
適切に管理されたトレイルは、二つの意味で重要です。一つは、訪れる人が安全かつ快適に森を体験できること。もう一つは、人の歩く範囲をあらかじめ限定することで、他のエリアへの影響を抑えられることです。道を外れて自由に歩き回るスタイルに比べ、植生の踏み荒らしや野生生物へのストレスを減らしやすくなります。
五指山のトレイルは、こうした考え方にもとづき、自然観察と環境保全を両立させようとする試みの一端といえます。訪れる人は、単なる観光ではなく、「保護された自然の中に入れてもらっている」という感覚を持ちやすくなるでしょう。
自由貿易港の中で示す、環境保護と開発の両立
海南島は、自由貿易港として国際的な物流や投資を呼び込み、観光やサービス産業の成長も期待されています。その一方で、自然環境の保全は、長期的な持続可能性を左右する重要なテーマです。
五指山の雨林は、そのバランスをどうとるかを考える上で、象徴的な場所です。整備されたトレイルや保護されたエリアは、次のようなメッセージを発しているように見えます。
- 自然を観光資源として「消費」するのではなく、守りながら共有するという発想
- 短期的な開発利益よりも、長期的な環境価値を重視する姿勢
- 生態系の保全を前提にしたうえでの、持続可能な地域経済づくり
こうした取り組みが、自由貿易港としての発展と同時に進むことで、海南島全体のブランドや信頼にもつながっていくとみられます。
五指山から考える、これからの観光とライフスタイル
2025年の今、気候変動や生物多様性の損失は、世界共通の課題となっています。その中で、五指山のように生態系を守りつつ、人々が自然に触れられる場所は、各地で注目されています。
五指山の事例から見えてくるポイントを、簡単に整理すると次のようになります。
- 生物多様性の保全は、地域の魅力やブランド価値とも両立しうる
- トレイルなど人の動線を工夫することで、観光と保護のバランスをとりやすくなる
- 訪れる側も、静かに自然を観察し、痕跡を残さない行動を意識することが求められる
都市で暮らす私たちにとっても、五指山のような場所は、「開発か保護か」という二項対立ではなく、「どのように共存させるか」を考えるヒントを与えてくれます。海南島の自由貿易港の中心に残されたこの森は、今後も環境保護と持続可能な発展を見つめるうえで、重要な指標になっていきそうです。
Reference(s):
Exploring Wuzhishan: A haven of biodiversity in the heart of Hainan
cgtn.com








