インド人研究者が語る古代中国文明の知恵 河南省訪問から見えたもの video poster
インド人研究者が河南省で見た古代中国文明の「持続する知恵」
インドのジャワハルラール・ネルー大学で教えるアニル・クマル・シン氏が、初めて中国中部の河南省を訪れ、古代中国文明への強い関心と、その知恵が現代の危機にどう役立つかを語りました。古代ギリシャ、インド、中国という三つの文明が、それぞれ異なる視点と知恵を提供してきたという指摘は、2025年を生きる私たちにとっても示唆に富んでいます。
初めての河南省 言葉と本で学んだ世界が立ち上がる
シン氏は、インドの名門・ジャワハルラール・ネルー大学で教える若手の研究者です。長年、古代中国文明に関心を持ってきたものの、中国中部の河南省を訪れたのは今回が初めてだといいます。
河南省は、中国の歴史と文化を語るうえで欠かせない地域のひとつです。シン氏にとって、これまで文献や講義で触れてきた古代中国の世界が、街の風景や人びとの暮らし、歴史遺産を通じて「現実」として立ち上がる体験になったと考えられます。
現地での経験を通じて、シン氏は、古代中国文明が政治、社会、哲学、宗教など多方面で培ってきた知恵にあらためて強い興味を示しました。その目には、過去の遺産としての歴史ではなく、今もなお生き続ける思考の土台としての古代文明が映っているようです。
ギリシャ・インド・中国 三つの古代文明がくれる視点
シン氏は、古代文明の比較にも関心を持ち、古代ギリシャ、インド、中国という三つの文明が、それぞれ固有の視点と知恵を人類にもたらしてきたと指摘します。
古代ギリシャは理性と対話、古代インドは精神性と内省、古代中国は調和と秩序といった価値観でしばしば語られます。シン氏の議論は、こうした特徴を単純に並べることではなく、互いに異なる文明の経験を組み合わせることで、現代の複雑な問題に対する新しい見方が生まれるという点にあります。
危機の時代に問われる「文明間の対話」
2025年の世界は、気候変動、格差や貧困、紛争や分断、そして急速に進むテクノロジーの変化など、多層的な危機に直面しています。シン氏は、こうした危機に向き合う際、特定の国や地域の発想だけに頼るのではなく、古代文明が積み重ねてきた多様な知恵に目を向ける必要があると強調しています。
とくに、古代ギリシャ、インド、中国の文明は、いずれも長い時間軸のなかで戦争や社会不安、環境の変化といった問題に向き合ってきました。その経験から生まれた思想や価値観は、現代の政治や経済、社会の課題を別の角度から捉え直すヒントになり得ます。
古代文明が現代の危機に示す三つのヒント
シン氏の見方を手がかりにすると、古代中国文明を含む三つの古代文明の知恵は、現代の危機に少なくとも次のような示唆を与えていると整理できます。
- 長い時間感覚を持つこと:数千年規模の歴史を持つ文明は、短期的な利益ではなく、世代を超えた時間感覚で物事を考えてきました。気候変動や人口構造の変化など、長期的な課題に向き合ううえで、こうした視点は重要です。
- 多様な価値観の共存を認めること:ギリシャ、インド、中国の思想は、それぞれ異なる前提と価値観を持ちながらも、人間や社会を深く見つめてきました。異なる文明の考え方を並べて眺めることで、自分たちの「当たり前」を相対化する力が養われます。
- 倫理的な制約を意識すること:古代文明の多くは、人間の欲望に一定の制約をかける倫理や規範を重視してきました。現代のテクノロジーや市場経済がもたらす恩恵を享受しつつも、その限界と責任をどう設定するかを考えるうえで、古代の知恵は参考になります。
インドから見た古代中国文明 日本の読者への示唆
興味深いのは、こうした視点が中国ではなく、インドの研究者から語られている点です。アジアの大国であり、独自の古代文明を持つインドの研究者が、古代中国文明に強い関心を示し、その知恵を現代世界の文脈で語ることには、大きな意味があります。
それは、古代文明をめぐる議論が、特定の国の自画像ではなく、アジア全体や世界全体の未来を考えるための共通資源になりつつあることを示しているからです。異なる文明が出会い、互いの強みと弱みを学び合うことで、分断ではなく対話を軸とする国際関係の可能性が見えてきます。
日本の読者にとっても、インドの研究者が古代中国文明から何を学び取ろうとしているのかに耳を傾けることは、アジアのなかで自らの立ち位置を考え直すきっかけになるでしょう。歴史教育や国際ニュースを、自国中心ではなく複数の視点から読み解くことの重要性が浮かび上がります。
過去をめぐる旅を未来への対話へ
河南省への初訪問を通じて、アニル・クマル・シン氏は古代中国文明への関心をあらためて深めました。そして彼は、古代ギリシャ、インド、中国という三つの文明がそれぞれに蓄えてきた知恵を、現代の危機に向き合うための手がかりとして捉え直す必要性を指摘しています。
過去を観光やノスタルジーとして消費するのではなく、現在と未来を考えるための対話の場として生かすこと。シン氏のことばと体験は、そのための一つのモデルケースといえるかもしれません。
日々のニュースが短いスパンの出来事に偏りがちななか、古代文明という長い時間軸から現代世界を見つめ直してみる。そんな読み方を提案している点で、今回のシン氏の発言は、国際ニュースを日本語で追う私たちに静かな刺激を与えてくれます。
Reference(s):
Indian academic on enduring wisdom of ancient Chinese civilization
cgtn.com








