米国の一律関税に揺れるベトナム ハノイから見える「双方が痛む」現実 video poster
米国のドナルド・トランプ大統領が一律10%の新たな関税を導入し、さらに60カ国にはより高い税率を課したことで、輸出依存のベトナムでは「米国とベトナムの双方が痛みを負う」との声が上がっています。米国を最大の輸出市場とするベトナムにとって、この通商政策は日常生活にも影響しかねないテーマになっています。
トランプ大統領の新関税 10%をベースに60カ国へ上乗せ
トランプ大統領は最近、幅広い輸入品に対して一律10%の関税を課す決定を行い、さらに60カ国についてはそれを上回る税率を適用しました。この関税は、米東部時間の土曜日午前0時1分に発動され、米国の港湾や空港、通関倉庫で適用が始まっています。
対象は特定の品目に限られた措置ではなく、「一律10%」をベースとする広範な関税です。貿易の現場では、企業が突然コスト増に直面することになり、価格設定や調達先の見直しを迫られる可能性があります。
米国はベトナム最大の輸出市場 2024年輸出額はGDPの約3割
ベトナムは、製造業の成長を背景に輸出で稼ぐ「輸出志向」の経済構造を持っています。米国はその最大の輸出市場であり、2024年には米国向け輸出額が1420億ドルに達し、ベトナムの国内総生産の約3割を占めました。
電機製品や衣料品、家具といった日用品から、部品や中間財に至るまで、多くのベトナム製品が米国市場に向かっています。こうした背景を踏まえると、米国の関税政策がベトナム経済に与える影響は小さくありません。
「アメリカ人がコストを負担する」ハノイの教師の見方
ハノイで取材に応じた教師のロンさんは、今回の関税をこう受け止めています。
ロンさんは「米国は多くの国に関税を課してきました。アメリカの品物の値段は必然的に上がり、そのコストは最終的にアメリカの人々が負担することになるでしょう」と語りました。
関税は輸入品にかかる税金ですが、実際には輸入企業のコスト増となり、それが価格に上乗せされる形で消費者に波及しやすいとされます。ロンさんの見方は、こうした基本的な仕組みを直感的に捉えたものだと言えます。
「ベトナムにも大きな打撃」学生が懸念する二国間関係
同じくハノイに暮らす学生のドゥック・アインさんは、ベトナム側への影響を心配します。
ドゥック・アインさんは「この関税はベトナムの人々に大きな影響を与え、ベトナムと米国の交流や協力を傷つけてしまうと思います」と話し、経済だけでなく人と人との行き来や文化的なつながりへの悪影響も懸念しました。
米国がベトナムの主要な輸出先である以上、企業収益や雇用、賃金に波及する可能性があります。若い世代にとっては、将来の就職機会や留学、ビジネス交流にも影を落としかねないテーマとして受け止められているようです。
両国が直面し得るリスク 「勝者なき関税」になる可能性
ベトナムの街角から聞こえてくるのは、「相手だけでなく、自分たちも傷つく」という実感です。今回の関税措置で考えられるリスクを整理すると、次のような点が見えてきます。
- 米国側のリスク:輸入品価格の上昇により、企業のコストや消費者物価が押し上げられる可能性があります。とくに日常的に使われる製品や中間財の価格が上がれば、生活費や生産コストに波及します。
- ベトナム側のリスク:米国向け輸出の採算が悪化すれば、生産縮小や投資の先送り、雇用への影響につながるおそれがあります。輸出企業が価格を維持できなければ、利益圧縮や賃金抑制の圧力も高まります。
- 二国間関係への影響:経済面の緊張が続くと、ビジネスや観光、教育など幅広い分野の交流が冷え込む可能性があります。学生や若手ビジネスパーソンが感じる不安は、将来の人的ネットワークにも影響を及ぼしかねません。
グローバルなサプライチェーンが張り巡らされた現在、関税を通じて「一方だけが得をし、もう一方だけが損をする」という構図は成立しにくくなっています。ハノイの市民の声は、そうした現代の貿易構造を反映したものとも言えます。
日本の読者にとっての示唆 通商政策は「遠い話」ではない
今回の米国とベトナムをめぐる動きは、日本の読者にとっても無関係ではありません。日本企業もまた、ベトナムを含むアジア各地に生産拠点や調達先を広げており、通商政策の変化はサプライチェーン全体に影響し得ます。
ハノイの教師や学生の言葉から浮かび上がるのは、通商政策が単なる関税率や貿易統計の問題ではなく、人々の生活や将来への期待に直結するテーマだという現実です。
ニュースの見出しに並ぶ「関税」「貿易摩擦」といった言葉の背後には、価格の上昇を心配する消費者や、仕事の行方に不安を抱く労働者、国境を越えた交流の行方を案じる若い世代の姿があります。ベトナムでの反応は、そうした視点から国際ニュースを読み解くヒントを与えてくれます。
関税の是非をめぐる議論は今後も続きそうですが、ハノイの街から聞こえる「双方が痛む」という声は、通商政策を考えるうえで一つの重要な問いを投げかけています。それは、「誰のための政策なのか」という問いです。国際ニュースを追う私たち一人ひとりが、この問いを自分事として考え始めることが求められているのかもしれません。
Reference(s):
We Talk: Vietnamese believe U.S. tariffs will hurt both countries
cgtn.com








