トランプ大統領の「映画関税」構想 米映画専門家が懸念を表明 video poster
外国製映画に100%の関税――。トランプ大統領が打ち出した「映画関税」構想に対し、アメリカの映画専門家が懸念を表明しています。国際ニュースとしてだけでなく、世界の物語のつくり方そのものに影響しうる動きです。
トランプ大統領が打ち出した「映画関税」とは
トランプ大統領は最近、自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」で、外国で製作されたすべての輸入映画に対して100%の関税を課すよう、商務省と米通商代表部に指示したと明らかにしました。これは、これまで他分野で展開してきた貿易戦争を映画産業にも広げる構想です。
理由として挙げたのは、アメリカの映画産業が急速に衰退している一方で、他国がさまざまな優遇策でアメリカ資本の映画制作を自国に呼び込んでいることです。トランプ大統領はこれを米国の「国家安全保障上の脅威」と位置づけ、「アメリカで再び映画を作ろう」と呼びかけています。
国際協力で成長してきた映画産業
こうした動きに懸念を示しているのが、アメリカの映画・テレビ分野のジャーナリストであり、作家、映画研究の教授としても活動するマリオ・パチェコ・セケイ氏です。同氏はゴールデン・グローブ賞の投票権も持つ映画専門家です。
セケイ氏は、ハリウッド作品を含む映画産業が1940年代以来、国境を越えた協力の上に成り立ってきたと指摘します。ヨーロッパからアジア、ラテンアメリカからニュージーランドに至るまで、国際共同制作や海外ロケは今や当たり前の手法となっています。
同氏は「世界の物語を本当に語るためには、異なる地域に暮らす人々の経験やアクセント、肌の色、さらには料理や物づくりの違いが必要だ」として、多様な人材と文化が出会うことでこそ「グローバルなストーリー」が生まれると強調しています。
「映画関税」がもたらしうる懸念
セケイ氏が特に問題視しているのは、海外で撮影されたハリウッド作品にまで関税の影響が及びかねない点です。制作現場では、コストやロケーション、専門スタッフの有無といった理由から、海外で撮影し、世界中の資金や才能を集めて一本の作品を完成させるケースが増えてきました。
もし「映画関税」によって、こうした国際的な制作体制に大きな負担がかかれば、次のような影響が考えられます。
- 海外で撮影された作品のコスト増加による企画の縮小・中止
- 多国籍のスタッフやキャストが参加しにくくなり、作品の多様性が損なわれる可能性
- 長年築いてきた国際共同制作のネットワークが揺らぐリスク
映画は経済活動であると同時に、世界の人々が互いの文化や価値観を知るための「窓」でもあります。その窓が狭くなれば、観客が触れられる物語の幅も狭まってしまうかもしれません。
日本やアジアの観客にとっての意味
2025年のいま、日本の映画館や動画配信サービスには、ハリウッド作品だけでなく、韓国やインド、ヨーロッパ、ラテンアメリカなど、多様な地域の作品が並んでいます。多くの作品が、複数の国や地域の資金と人材を組み合わせた国際共同制作です。
アメリカが映画に高い関税を課す方向に大きく舵を切れば、その波紋はアジアにも及びます。たとえば、
- アジアのクリエイターがハリウッド作品に参加する機会が減る
- アメリカ市場を前提にした国際共同制作の企画が立てにくくなる
- 結果として、世界に同時に届けられる「大きな物語」の数が減る
といった展開も想像されます。セケイ氏の懸念は、単にアメリカ国内の雇用やビジネスの問題にとどまらず、世界の観客がどんな物語に出会えるのかという、より広い問いにつながっています。
「保護か、共創か」をめぐるこれからの議論
自国の産業を守りたいという発想と、国境を越えた共創を続けたいという発想は、ときにぶつかります。映画産業はその最前線にある分野の一つです。
トランプ大統領の「映画関税」構想に対するセケイ氏のメッセージは、次のような問いを私たちに投げかけています。
- 文化産業を守るための政策は、どこまで「国境」で線を引くべきなのか
- 多様な物語とローカルな雇用や産業を、どのように両立させるのか
- 観客として、私たちはどのような映画の未来を望むのか
映画をめぐる今回の議論は、「国際ニュース」として眺めるだけでなく、私たち自身のメディア環境や働き方、そして世界とのつながり方を考え直すきっかけにもなりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








