スペイン中小企業は米国関税にどう立ち向かうか video poster
米国による対EU関税の引き上げが、スペインの中小企業の現場を直撃しています。創業66年の機械工具メーカー、Técnica del Decoletaje は、自社製品の約35%が影響を受けているといい、その余波は自動車産業のサプライチェーン全体に広がっています。
マドリードの老舗企業を直撃する関税
Técnica del Decoletaje はマドリードに拠点を置く機械工具メーカーで、長年にわたり金属部品を生産してきました。米国は同社にとって重要な海外市場であり、マネージングディレクターのマリオ・ロバト氏はCGTNの取材に対し、同社の機械部品が自動車に組み込まれ、その車両が米国に輸出されていると説明しています。
米国によるEUへの関税が引き上げられる中で、自動車に使われる部品も例外ではありません。ロバト氏によると、同社製品のおよそ35%が関税の影響を受けており、売上や受注に直接の打撃となっています。
自動車産業チェーン全体に広がる負担
EU向け関税の引き上げは、完成車メーカーだけでなく、部品メーカーや素材メーカーまでを含む自動車産業チェーン全体に影響を与えています。Técnica del Decoletaje が生産するような機械部品は、多くの工程を経て最終製品に組み込まれるため、どこか一つのコストが上がると、サプライチェーン全体の価格と利益構造が揺らぎます。
現場で働くラファエル・ロサ氏は、こうした変化を肌で感じている一人です。同氏は、関税が何もポジティブなものをもたらしていないと話し、むしろ生産に必要な材料価格の上昇を招き、多国籍企業から中小企業までが深刻な影響を受けていると指摘します。
材料費高騰が中小企業の体力を奪う
関税が引き上げられると、輸入部材や原材料のコストが上昇し、それが生産コストの増加として企業にのしかかります。規模の大きい多国籍企業は、価格転嫁や生産拠点の調整など一定の対策を取りやすい一方で、Técnica del Decoletaje のような中小企業は、交渉力や資本力に限りがあるため、コスト増を吸収しきれないリスクが高くなります。
ロサ氏が語るように、材料が高くなり、誰にとっても得がないという状況は、特に中小企業にとって致命的になりかねません。採算が悪化すれば、新規投資や雇用の抑制につながり、地域経済にも波紋が広がります。
中小企業にとっての現実的な選択肢
こうした環境の中で、スペインを含む多くの中小企業に残された選択肢は限られています。現実的な方向性としては、次のような手段が考えられます。
- 生産効率の向上や無駄の削減によるコスト圧縮
- 米国以外の市場開拓による売上先の分散
- 仕入れ先の見直しや共同購入による材料費の抑制
- サプライチェーン上の他企業との連携強化
ただ、いずれの対応も時間と資金、そして人材を必要とします。創業から66年続く企業であっても、急激な関税環境の変化には、慎重かつ継続的な対応が求められます。
日本の読者にとっての示唆
2025年現在、世界の貿易環境は不確実性が高まり、多国間の関税や通商摩擦はいつどこで起きても不思議ではありません。スペインの中小企業が直面している状況は、日本の製造業や中小企業にとっても決して遠い話ではないはずです。
特定の国や市場に売上や調達を依存している企業ほど、政策変更や関税の影響を受けやすくなります。Técnica del Decoletaje の例は、サプライチェーンの一部に位置する中小企業であっても、国際政治や貿易政策の変化から逃れることはできないという事実を浮き彫りにしています。
関税そのものの是非は一朝一夕に決まるものではありませんが、企業側としては、何が起きてもおかしくないという前提に立った備えが求められています。スペインの工場で働く一人ひとりの実感は、グローバル経済の時代に生きる私たちに、静かだが重い問いを投げかけていると言えるでしょう。
Reference(s):
cgtn.com








