トルコの家庭料理ゴズレメに込められた家族の物語 video poster
トルコ(Türkiye)の家庭料理ゴズレメは、ただの薄焼きパンではなく、家族の記憶や地域の文化が折り重なった一皿です。Karabük出身のエミネ・オズデミルさんの30年にわたるゴズレメ作りの物語から、その背景にあるトルコの食文化を見ていきます。
ゴズレメとは何か トルコの素朴な国民食
ゴズレメは、薄く伸ばした生地に具材を包み、鉄板などで焼き上げるトルコの家庭料理です。日本でいえば、お好み焼きやクレープのように、街角でも家庭でも親しまれる、身近な一品だといえます。
エミネさんにとって、ゴズレメは「パンケーキの一種」でありながら、それ以上の意味を持つ料理です。生地の薄さ、具材の選び方、焼き加減といった細部に、その家の流儀や地域の個性が表れます。
15歳で受け継いだ技 30年かけて磨かれたゴズレメ
Karabük出身のエミネ・オズデミルさんは、15歳のときに母親と祖母からゴズレメ作りを学び始めました。それから約30年、家庭の台所で試行錯誤を重ねながら、その技を少しずつ磨いてきたといいます。
最初は生地の扱いに慣れず、破れてしまったり、焼き加減が均一にならなかったりと、失敗も多かったと振り返ります。しかし、そうした失敗こそが、手の感覚やタイミングを覚える近道になりました。
Karabükならではの味 薄い生地と庭のほうれん草
エミネさんの故郷のゴズレメには、はっきりとした特徴があります。まず、生地がとても薄いこと。そして具材には、自宅の庭で育てた新鮮な野菜、とくにほうれん草をよく使うことです。
薄い生地は焼き上がりを軽やかにし、噛むほどに小麦の香りが広がります。そこに自家栽培のほうれん草の風味が重なることで、シンプルなのに印象に残る味になるといいます。エミネさんは、こうした細かな違いこそが、故郷のゴズレメを特別なものにしていると話しています。
失敗から学ぶ 手仕事が「誇り」に変わるまで
エミネさんは、何度も失敗を重ねながら、少しずつ生地の伸ばし方や火加減を身につけていきました。うまくいかなかった日の味も、家族の反応も、すべてが次の一枚につながる「学び」だったといいます。
長い年月をかけて身につけた技は、レシピだけでは伝わらない「手の記憶」です。ゴズレメ作りは、単なる家事の一つではなく、自分のルーツと日々向き合う時間であり、今ではエミネさんにとって誇りそのものになっています。
食べ物以上の存在 ゴズレメに込められたトルコの思い
エミネさんは、ゴズレメ作りは「技術」以上の意味を持つと話します。それは、トルコの人びとの食への愛情と、伝統を守ろうとする思いを象徴する行為でもあるからです。
- 家族や親戚が集まる場で囲む温かい一皿
- 母から子へ、祖母から孫へと受け渡される家庭の味
- 地域ごとの工夫や誇りが詰まったレシピ
こうした要素が重なり、ゴズレメは「お腹を満たす料理」であると同時に、「文化や記憶を受け渡す器」としての役割も果たしています。一枚一枚のゴズレメには、その家族の物語が刻まれているのだといえます。
日常に溶け込む物語 トルコ社会でのゴズレメの位置づけ
エミネさんにとって、ゴズレメは特別な日のごちそうというより、日常生活の一部です。朝食や軽い昼食、来客時のおもてなしなど、日々のさまざまな場面に自然に登場します。
だからこそ、ゴズレメには「社会の空気」も映し出されます。忙しい日常の中でも、手間をかけて生地を伸ばし、具材を包む時間を持つこと。その行為自体が、慌ただしい時代にあっても大事なものを手放さない、静かな意思表示にも見えます。
日本の家庭料理との共通点から見えるもの
日本にも、おにぎりや味噌汁、家庭ごとのレシピで受け継がれる煮物など、家族の記憶と結びついた料理が多くあります。ゴズレメの話は、そうした日本の家庭料理にも通じるものがあります。
レシピ本には載らない「母の手つき」や「祖母の勘」、家族で食卓を囲む時間の積み重ね。それらは国や地域が違っても、どこか共通しているのかもしれません。トルコのゴズレメを知ることは、同時に自分自身の家庭の味を振り返るきっかけにもなります。
2025年の今、何を受け継いでいくのか
2025年の今、世界中で料理動画やレシピがオンラインで共有される一方で、エミネさんのように、家の台所で時間をかけて技を受け継ぐ人びともいます。その二つは対立するものではなく、むしろ補い合う関係にあるのかもしれません。
エミネさんのゴズレメには、トルコの食文化、家族の歴史、日々の暮らしが折り重なっています。国際ニュースや世界の動きを日本語で追うとき、こうした一人ひとりの物語にも耳を傾けてみると、遠い国が少し身近に感じられるのではないでしょうか。
Reference(s):
cgtn.com








