上海協力機構サミットとロシアのパンケーキ 家の味がつなぐ国際ニュース video poster
2025年8月末から9月初めにかけて中国の天津で開かれた上海協力機構(SCO)サミットでは、国際政治だけでなく、加盟国それぞれの食文化にも光が当てられました。本稿では、ロシアのパンケーキを通じて見える「家の味」ともてなしの心を、日本語の国際ニュースとしてやさしく読み解きます。
上海協力機構サミットと「パンケーキ・フェスティバル」
2025年のSCOサミットは8月31日から9月1日まで天津で開催されました。会議にあわせて、加盟国の食文化を紹介する企画として、パンケーキに焦点を当てたシリーズが展開されています。
テーマとなっているのは「パンケーキ」という、世界中どこにでもありそうな薄い生地料理です。シリーズでは、中国、インド、トルコ(トルコ共和国)、ロシアなど、それぞれの国や地域で形や食べ方を変えながら受け継がれてきたパンケーキが紹介されています。
一見ありふれた料理を通じて、多様な文化や暮らしを伝えようとするこの試みは、硬くなりがちな国際ニュースに、生活者の目線を持ち込む試みともいえます。
ロシア家庭のパンケーキ 材料はシンプルでも「家」の味
シリーズの中でロシアを紹介する回に登場するのが、エレナ・コネワさんです。彼女が作るパンケーキは、牛乳、卵、小麦粉という、ごく日常的な材料から生まれます。しかしその味は、ロシアで育った人にとって「ふるさとの味」そのものだと語られています。
家庭ごとに違う「マイレシピ」
ロシアでは、ほとんどの家庭にパンケーキのレシピがあるといわれています。厚めに焼くか、クレープのように薄く焼くか。甘いソースを合わせるか、塩気のある具材を包むか。その組み合わせは家庭の数だけ存在します。
- 厚い生地で食べ応えを出すスタイル
- 薄く伸ばして具材を巻き込むスタイル
- 甘いジャムやクリームと合わせる食べ方
- 肉や野菜を包む食事としてのパンケーキ
エレナさんのパンケーキも、そんな数えきれないレシピの一つです。特別な材料を使わなくても、焼き上がった瞬間にただよう香りや、焼き具合のわずかな違いが、その家ならではの記憶と結びついていきます。
祝祭から日常まで パンケーキが寄り添う時間
ロシアでは、パンケーキは特別な日の料理というだけでなく、日常の食卓にもよく登場する「定番メニュー」です。その一方で、歴史的に見ると、パンケーキはさまざまな祝祭や儀礼にも深く関わってきました。
紹介されているのは、例えば次のような場面です。
- 結婚式に集う人たちをもてなす料理としてのパンケーキ
- 故人をしのぶ場で、思い出話とともに囲むパンケーキ
- クリスマスに家族がそろって味わうパンケーキ
- マースレニツァと呼ばれる行事の食卓に並ぶパンケーキ
人生の門出や別れ、季節の節目から日々の暮らしまで、さまざまな時間にパンケーキがそっと寄り添っていることが分かります。
ことわざ「最初のパンケーキはいつも失敗」
ロシアには「最初のパンケーキはいつも失敗」という意味のことわざがあります。フライパンの温度や生地の状態がまだ安定しない一枚目は、どうしてもうまく焼けない。そんな経験から生まれた言葉だと考えられます。
しかし、そこで語られるのは単なる失敗談ではありません。たとえ形が崩れても、焼き色がいびつでも、その一枚目を笑い合いながら分け合う時間こそが、家族にとっての大切な思い出になっていきます。
エレナさんが焼くパンケーキも、完璧さより「一緒に食べること」が重視されています。多少の失敗も含めて受け入れ、楽しむ文化が、ことわざの背景に見えてきます。
紅茶とパンケーキが伝えるロシアのもてなし
映像の中で印象的なのは、焼きたてのパンケーキを紅茶と一緒にサーブする場面です。アツアツのパンケーキを皿に重ね、湯気の立つポットから紅茶を注ぐ。そのシンプルな所作に、世代を超えて受け継がれてきたもてなしの心がにじみます。
パンケーキは、次のような役割を果たしているように見えます。
- 家族や友人をテーブルに呼び集める「合図」
- 会話を促し、沈黙をやわらげる「間」をつくる存在
- 世代を越えてレシピや思い出を受け渡す「媒体」
国際ニュースの中では、ロシアはしばしば政治や安全保障の文脈で語られます。しかし、一枚のパンケーキから見えてくるのは、家族と食卓を大切にする、ごく素朴な日常の姿です。
パンケーキが映す「ふるさと」のかたち
上海協力機構サミットに関連したこのパンケーキ企画は、加盟国の文化を紹介する試みであると同時に、「ふるさと」とは何かを問い直すきっかけにもなっています。
材料も作り方も違うパンケーキが、中国、インド、トルコ、ロシアなど各地に存在しますが、そこに共通しているのは次の点かもしれません。
- 特別なごちそうというより、身近で作りやすい料理であること
- 家族や友人など、近しい人と一緒に食べる時間と結びついていること
- レシピ以上に、思い出や物語が受け継がれていくこと
激しく動く国際情勢の中でも、台所で生地を混ぜ、フライパンで焼き上げるという小さな営みは静かに続いていきます。天津で開かれたSCOサミットの周辺で紹介されたロシアのパンケーキは、そんな「変わらない日常」が世界のあちこちにあることを、ささやかに教えてくれているようです。
ニュースを追うとき、政治や経済の見出しだけでなく、その国の人々が何を食べ、どんな言葉やことわざを大事にしているのかに目を向けてみると、世界の見え方が少し変わってくるかもしれません。
Reference(s):
SCO Pancake Festival: A taste of home and Russian hospitality
cgtn.com








