国際ニュース 新疆の若きモデルが民族文化を世界へ ファッションで光る物語 video poster
リード:民族文化が輝く「ファッションの舞台」
新疆ウイグル自治区の設立70周年を迎えた2025年、民族文化を前面に押し出したファッションが静かに、しかし力強く存在感を高めています。中国西部の「生きた民族博物館」とも呼ばれるこの地で、若い世代が伝統を現代の表現へとつなぎ直そうとしているからです。
多民族が暮らす「活力あふれる新疆」
新疆ウイグル自治区は、Uygur(ウイグル)、カザフ、キルギスなど、さまざまな民族が共に暮らす地域です。2025年は、この自治区が設立されてから70年という節目の年にあたります。
この「肥沃な大地」では、異なる民族の人びとが肩を並べ、日々の暮らしや祭り、音楽や衣装を通じて、それぞれの文化を大切に育んできました。そうした積み重ねが、「幸せの物語」として今も書き続けられています。
遊牧の記憶をまとうモデル・Guyay
その物語の一人の主人公が、キルギスの若い女性モデル、Guyay(グヤイ)さんです。彼女は新疆ウイグル自治区のKizilsu Kirgiz(キジルス・キルギス)自治州の出身で、幼い頃はユルトと呼ばれる移動式住居で育ちました。
現在、Guyayさんは契約モデルとして、ミラノ・ファッションウィークのランウェイにも立ってきました。世界的なファッションの舞台に立ちながらも、彼女は自分が「中華民族の一員」であることに誇りを持ち続けています。
物心がついた頃から、彼女の耳にはいつも叙事詩「マナス」の歌声がありました。祖母や母が歌い継いできた「マナス」は、中国の三大叙事詩の一つとされる壮大な物語です。そのリズムや言葉の響きは、Guyayさんのアイデンティティの核となり、いまも創作の源泉になっています。
ふるさとで始まった「Xijiファッションショー」
近年、Guyayさんは世界の都市からふるさとに戻り、「Xiji Fashion Show(Xijiファッションショー)」という試みを始めました。目指したのは、都会のショーとはまったく違う、新疆ならではのステージづくりです。
特徴的なのは、プロのモデルだけでなく、地元の村人たちをランウェイに招いたことです。日常の衣装や民族衣装を身にまとった人びとが、そのまま主役として歩きます。観客と出演者の境界が薄れ、ファッションショーは村全体の「お祭り」のような場になります。
会場づくりにも工夫があります。山や草原で育つ草花などの農村の植物を装飾として取り入れ、キルギスをはじめとする民族の楽器をライブ演奏に用いることで、空間全体が「ふるさとの記憶」を呼び起こす装置になります。
こうしてGuyayさんは、民族の無形文化遺産とされる歌や音楽、刺繍や織物などを、農村の暮らしと結びついたかたちでファッションの舞台に組み込みました。伝統を単に「保存」するのではなく、「いま生きている文化」として見せる工夫だと言えます。
民族文化とファッションが出会う意味
民族文化を前面に出したファッションというと、「観光向けのショー」を思い浮かべるかもしれません。しかし、Guyayさんの取り組みは、そのイメージとは少し違います。
- 服だけでなく、音楽や物語、生活の場そのものを含めて表現していること
- 「見られる人」だけでなく、村人を含む多くの人が主役になれること
- 世界のファッション都市と、草原や村を同じ線上でつなごうとしていること
こうした点で、彼女の活動は、文化の多様性を尊重しながら、新しい表現を模索するプロジェクトと見ることができます。伝統と革新、地方とグローバル、日常と非日常。その間を軽やかに行き来する試みは、多民族が共に暮らす新疆ならではの発想とも言えそうです。
日本の私たちへのヒント
日本でも、地域の祭りや方言、民謡や工芸など、受け継がれてきた文化をどう次世代につなぐかが課題になっています。Guyayさんの例から、いくつかのヒントが見えてきます。
- 地元の人びと自身が、表現の「主役」になる場をつくる
- 伝統文化を、観光や商品としてだけでなく、日常と結びつけたまま発信する
- 世界とつながる舞台に立ちながら、出発点であるふるさととの関係を深め続ける
2025年という節目の年に、「活力あふれる新疆」で生まれているこうした動きを知ることは、グローバル化が進むなかで自分たちの文化をどう守り、どう開いていくかを考える手がかりにもなります。
華やかなランウェイの裏側には、祖母や母から受け継いだ歌や物語、草原の風や村の暮らしがあります。その重なりをそのまま「美しさ」として見せようとする試みは、国や地域を問わず、多くの人の心に静かに響いていきそうです。
Reference(s):
cgtn.com







