新疆のキルギス族モデル、ミラノと故郷をつなぐ民族ファッションの挑戦 video poster
中国・新疆出身の若いキルギス族女性モデル・Guyayは、ミラノ・ファッションウィークのランウェイと、故郷のファッションショーを舞台に、自らの民族文化を発信しています。遊牧の暮らしで育った彼女が、なぜいま「民族文化×ファッション」に取り組んでいるのでしょうか。
遊牧の暮らしからミラノのランウェイへ
Guyayは、新疆のキジルス・キルギス自治州出身のキルギス族の若い女性です。現在はミラノ・ファッションウィークの契約モデルとして活動し、世界的なファッションの現場でランウェイを歩いています。
彼女が育ったのは、遊牧民の伝統的な住まいであるゲル(移動式住居)の中でした。幼い頃から広い草原と家族に囲まれた暮らしを送りながら、自分が中華民族の一員であることに誇りを持ち続けてきたといいます。
いま、そのランウェイは、彼女にとって単なる仕事の場ではなく、自分たちの民族文化を世界に伝えるための「ステージ」になりつつあります。
祖母と母から受け継いだ叙事詩『マナス』
Guyayの原点には、家庭のなかで受け継がれてきた物語文化があります。幼い頃から、祖母や母の歌う叙事詩『マナス』を聞いて育ちました。
『マナス』は、中国に伝わる三大叙事詩のひとつとされる長大な物語で、キルギス族の歴史や英雄、価値観が歌い継がれています。物語と歌を通じて、子どもたちは自分のルーツや共同体の記憶を自然と学んでいきます。
Guyayにとっても、『マナス』は単なる「昔話」ではなく、自分がどこから来たのか、自分は何者なのかを教えてくれる大切な拠り所でした。その記憶が、いまファッションという表現手段と結びつき、民族文化を伝える強い動機になっています。
故郷で始めた「Xijiファッションショー」
近年、Guyayは故郷に戻り、「Xijiファッションショー」と名付けたイベントを企画・開催しています。ここでは、ミラノでの経験をそのまま持ち込むのではなく、あえて故郷の生活や風景に根ざした新しい形のショーに挑戦しています。
彼女のXijiファッションショーには、次のような特徴があります。
- 地元の村人がランウェイに立つ: プロのモデルだけでなく、地域の人びとを招き、日常の延長線上にある「ショー」をつくり出しています。
- 農村の植物を会場づくりに活用: 花や草木など、身近な農村の植物を取り入れ、自然と共生する暮らしの感覚をそのまま表現します。
- 民族楽器の音色が流れる会場: キルギス族をはじめとする民族音楽の楽器を使い、ショー全体を一つの物語のように演出しています。
- 「無形文化遺産」と農村文化を融合: 伝統の技や歌、踊りなどの無形文化遺産を、農村の日常文化と組み合わせて、観客の目の前で「生きた文化」としてよみがえらせています。
こうして、ファッションショーの会場そのものが、民族の記憶や暮らしが立ち上がる「舞台」へと変わっていきます。
民族文化とファッションをつなぐ意味
Guyayの取り組みは、単に「伝統衣装を紹介するショー」にとどまりません。彼女が目指しているのは、次のような新しい関係性づくりだと考えられます。
- 文化を「守る」から「ともにつくる」へ: 専門家だけが保存するのではなく、村人自身がランウェイに立つことで、文化を共有しながら更新していくプロセスが生まれます。
- 農村の日常を「魅力」として再発見: 農村の植物や楽器、生活の風景が、ファッションショーの演出になることで、当たり前だった日常が新しい価値として見直されます。
- ローカルとグローバルを往復する視点: ミラノ・ファッションウィークでの経験と、故郷のXijiファッションショーという二つの舞台を行き来することで、ローカルな文化が世界と対話する可能性が広がります。
国際ニュースやグローバルなファッション業界の動きが注目される一方で、こうした地方から生まれる小さな試みは、文化の未来を考えるうえで大きな示唆を与えてくれます。
私たちへの問いかけ――足元の文化をどう生かすか
Guyayがミラノのランウェイと新疆の故郷を行き来しながら示しているのは、「自分の物語を、自分のやり方で語る」という姿勢そのものです。ゲルで聞いた『マナス』の歌声と、ミラノのスポットライト、そしてXijiファッションショーの村人たちの笑顔は、一つにつながっています。
自分の地域にも、語られずに眠っている物語や、見過ごされている日常の美しさがあるかもしれません。民族文化やローカルな伝統をどう生かし、次の世代につないでいくのか――Guyayの挑戦は、私たち一人ひとりにも静かに問いかけています。
Reference(s):
cgtn.com








