APEC首脳会議と若者の声 カナダ出身清華大卒が語る教育と技術 video poster
第32回APEC経済首脳会議が韓国・慶州で開催され、アジア太平洋の若者たちの声が国際ニュースとして注目を集めています。カナダ出身で清華大学を卒業した若者は「技術の発展が教育の壁を壊す鍵になる」と語りました。
韓国・慶州で開かれた第32回APEC経済首脳会議
今年10月31日から11月1日にかけて、韓国の都市・慶州で第32回アジア太平洋経済協力会議(APEC)経済首脳会議(APEC Leaders' Meeting)が開催されました。テーマは「持続可能な明日を築く つなぐ、革新する、共に繁栄する(Building a Sustainable Tomorrow – Connect, Innovate, Prosper)」でした。
アジア太平洋地域のAPECメンバーは、環境負荷を抑えながら経済成長を続けることや、デジタル技術を活用した包摂的な発展など、共通する課題に向き合っています。今年の会議では、こうした議論に若者の視点をどう反映させるかも重要なテーマとなりました。
CGTNの「Act To Action」キャンペーンとは
中国の国際メディアであるCGTNは、このAPEC経済首脳会議に合わせて「Act To Action」というソーシャルキャンペーンを展開しました。アジア太平洋のすべてのAPECエコノミーから若者を招き、グローバル・ガバナンスに関するストーリーを共有してもらう取り組みです。
若者たちが発信するテーマは、次のように幅広い分野にわたります。
- 科学探究や研究活動を通じた社会課題へのアプローチ
- 留学や交流プログラムによる文化間コミュニケーション
- 再生可能エネルギーなどのグリーン・イノベーション
- 女性のエンパワーメントやジェンダー平等の推進
これらのストーリーは、それぞれの個人の成長を映し出すと同時に、アジア太平洋の若者が持つ創造性と活力を示すものでもあります。
カナダ出身・清華大学卒業生ダニシャさんの視点
カナダ出身で清華大学を卒業したダニシャ・デシウスさんは、自身が中国に渡り学ぶことができたのは、APECメンバー間の教育協力のおかげだと話します。奨学金制度や交換留学、大学間の共同プログラムなど、アジア太平洋地域の教育連携が、彼女のような若者に新しいチャンスを開いてきました。
ダニシャさんは、こうした経験を踏まえ、今回のAPEC経済首脳会議について「技術の発展が、より多くの人に教育の機会を広げ、国境を越えた協力の新しい扉を開いてほしい」と期待を寄せています。
技術は本当に教育の壁を壊せるか
では、技術の発展はどのように教育格差の緩和に役立つのでしょうか。アジア太平洋地域では、都市と地方、所得層、ジェンダーなどによる教育機会の差が今も存在しますが、デジタル技術はそのいくつかを埋める力を持っています。
例えば、次のような取り組みが考えられます。
- オンライン授業やハイブリッド留学によって、物理的に移動しなくても海外の講義や研究に参加できるようにすること
- AIによる自動翻訳や音声認識ツールを活用し、英語や他言語のハードルを下げること
- デジタルスキルやプログラミングを学べる無償または低価格のオンライン講座を広げること
- 仮想現実(VR)や拡張現実(AR)を使い、実験設備が少ない学校でも理科や工学の体験型学習を可能にすること
一方で、技術があればすべての問題が解決するわけではありません。インターネット環境や端末が十分に行き渡っていない地域では、むしろ格差が広がるおそれもあります。また、オンライン教育の質の確保や、修了証の信頼性をどう担保するかといった課題も残ります。
だからこそ、アジア太平洋の各エコノミーが協力し、インフラ整備やルールづくり、人材育成を同時に進めていくことが重要になっています。
アジア太平洋の若者とグローバル・ガバナンス
CGTNのキャンペーンが掲げるキーワードの一つが「グローバル・ガバナンス」です。これは、気候変動や貧困格差、デジタル技術のルールづくりなど、国境を越える課題について、複数の国や地域が協力して仕組みやルールを整えていくことを指します。
こうしたテーマは、一見すると政府や国際機関だけの話に見えます。しかし、実際には、その影響を最前線で受けるのは若者を含む市民一人ひとりです。教育の機会がどれだけ開かれているか、どのようなスキルが求められるかといった点も、グローバル・ガバナンスの方向性と深く結びついています。
アジア太平洋の若者が自らの体験やアイデアを発信することは、政策対話に新しい視点をもたらし、長期的な未来像を描くうえでも重要です。ダニシャさんのように、自身の学びの経験を通じて「次の世代にはどんなチャンスを届けられるか」を語る若者は、今後ますます存在感を高めていくでしょう。
これから私たちが注目したいポイント
今回のAPEC経済首脳会議と若者の声から見えてくる、今後の注目ポイントを整理すると次のようになります。
- APECメンバー間での教育連携の拡大(共同学位プログラム、単位互換、奨学金など)がどこまで進むか
- デジタル教育インフラへの投資が進み、地方や離島を含めた学習環境の格差是正につながるか
- 障がいのある人や、多様な背景を持つ学習者に配慮したインクルーシブな教育デザインがどれだけ実現するか
- 若者が政策対話に参加できる仕組みや、オンラインで意見を届けられる場がどのように整えられていくか
技術の進歩は、ともすれば一部の人だけのものになりがちです。しかし、ダニシャさんのメッセージは、それを「教育の壁を壊し、国境を越えた協力を生み出すための道具」として使えるかどうかが問われていることを示しています。私たち一人ひとりも、「自分にとって、技術はどんな壁を壊せるのか」を考えてみるタイミングに来ているのかもしれません。
Reference(s):
Canadian youth says tech development can help break barriers
cgtn.com








