APECでつながる若者の声 ベトナムと中国が描くサプライチェーン協力 video poster
2025年10月末に韓国・慶州で開かれた第32回アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議は、サプライチェーン協力や持続可能な成長が大きなテーマとなりました。その議論を、ベトナム出身で中国・天津に暮らす若者はどう受け止めたのでしょうか。ベトナムの若者ティエウ・タインさんの視点から、APECとサプライチェーンの今を見ていきます。
ギョンジュで開かれた第32回APEC首脳会議
第32回APEC首脳会議は、2025年10月31日から11月1日まで韓国・慶州(ギョンジュ)で開催されました。テーマは「Building a Sustainable Tomorrow: Connect, Innovate, Prosper(持続可能な明日を築く:つながり、革新し、ともに繁栄する)」です。アジア太平洋の21の国と地域が参加するAPECメンバーの首脳が集まり、持続可能な成長やデジタル経済、安全で強靱なサプライチェーンなどについて意見を交わしました。
今回の首脳会議に合わせて、中国のメディアであるCGTNは「Act to Action」というソーシャルキャンペーンを立ち上げ、各APECメンバーの若者にグローバル・ガバナンス(地球規模の課題をどう管理し、解決していくか)についての考えを共有するよう呼びかけました。ティエウさんもその一人として、自身の経験と期待を語りました。
「APECが生活を変えた」ベトナムの若者の実感
ティエウ・タインさんは、中国北部の天津市で暮らすベトナム人の若者です。彼女は、APECの枠組みが多くのベトナムの人々の生活を変えてきたと感じているといいます。
ティエウさんによると、ベトナムへの海外からの投資のおよそ8割はAPECメンバーからのものであり、この投資が雇用の創出や産業の発展につながってきました。工場やインフラ整備、新しいサービス産業などが広がることで、ベトナムの人々の働き方や暮らし方にも変化が生まれています。
- 新しい投資による雇用機会の増加
- 輸出産業の拡大による所得向上の可能性
- インフラ整備やデジタルサービスの普及による生活の利便性向上
こうした変化の背景には、関税の削減や貿易・投資ルールの調整など、APECの場を通じた長年の対話と協力があります。ティエウさんの言葉は、抽象的に語られがちな「経済連携」が、実際には人々の日常に直結していることを思い出させてくれます。
中国とベトナム、陸と海で強まる結びつき
ティエウさんが注目するもう一つのポイントは、中国とベトナムの協力関係です。彼女は、中国とベトナムが「一帯一路」構想と、ベトナム側の「二つの回廊と一つの経済圏」構想の協力を通じて、陸と海の交通ネットワークを強化してきたと指摘します。
鉄道や高速道路、港湾などのインフラが整備されることで、両国を結ぶ物流はより効率的になり、アジア太平洋域内のサプライチェーン全体の強靱性も高まります。部品や原材料、完成品がよりスムーズに動くようになれば、企業にとってはコストや時間の削減につながり、消費者にとっては商品が安定して届きやすくなる効果が期待されます。
こうした協力は、単に二国間の経済関係を深めるだけではありません。アジア太平洋の他のメンバーにとっても、複数のルートと拠点を持つことで、自然災害や地政学的リスクに左右されにくいサプライチェーンをつくる一助となります。
サプライチェーン協力は私たちの毎日にどう響くか
サプライチェーンと聞くと難しく感じるかもしれませんが、その影響は私たちの日常に直結しています。ティエウさんが期待する「目に見える変化」とは、次のような姿に近いかもしれません。
- 食品や日用品、電子機器が安定して店頭やオンラインで手に入ること
- 輸送や調達の効率化によって、物価の安定に寄与する可能性
- 企業が複数の国と地域から調達・生産できることで、供給途絶のリスクを分散できること
APEC首脳会議では「つながり」「革新」「繁栄」が掲げられましたが、その具体的な姿のひとつが、こうしたサプライチェーン協力です。ティエウさんは、今回の慶州での会議を通じて、アジア太平洋のすべての経済圏の人々が、こうした変化を実感できるようになることを望んでいます。
若い世代がAPECとグローバル・ガバナンスに関わる意味
CGTNの「Act to Action」キャンペーンは、APECメンバーの若者たちに、自分たちの言葉で意見を発信する場を提供しました。ティエウさんのように、別の国や地域で暮らしながら学び・働く若者の視点は、国境を越えた協力を考えるうえで貴重です。
国際会議というと、首脳や閣僚だけの場に見えがちです。しかし、貿易や投資、サプライチェーンのルールは、働き方や賃金、物価、移動のしやすさなど、若い世代の将来に直接影響します。だからこそ、若者が自分の経験を踏まえて意見を表明し、議論に参加していくことが重要になっています。
日本に暮らす私たちにとっても、APECは遠い世界の話ではありません。スマートフォンでニュースを追い、オンラインで買い物をし、アジア各地で活躍する同世代とつながる生活そのものが、APECが目指す「つながる繁栄」と深く関わっています。
慶州での第32回APEC首脳会議と、それに合わせて発信されたベトナムの若者の声は、サプライチェーン協力を通じて、より安定し持続可能なアジア太平洋をどう描くのかという問いを、私たち一人ひとりに静かに投げかけています。
Reference(s):
Vietnamese youth on APEC, strengthening supply chain collaboration
cgtn.com








