APEC韓国会合とAIの未来 チリの若者が語る「責任ある活用」 video poster
韓国・慶州で今年10月31日から11月1日まで開かれた第32回APEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議では、持続可能な明日を築くことがテーマとなりました。この枠組みの中で、AI(人工知能)をめぐる議論にも世界の注目が集まっています。
CGTNは、APECの場に合わせて若者の声を集めるソーシャルキャンペーン「Act to Action」を展開し、アジア太平洋の若者にグローバルガバナンス(地球規模の課題をどう管理し、協力していくか)について語ってもらいました。
そのひとりが、チリ出身の若者、ラケル・エレーラさんです。彼女が最も関心を寄せているのは、責任あるAIの活用。働き方やコミュニケーションのあり方を大きく変えつつあるAIを、どうすれば公平で透明性があり、環境にも配慮した形で使えるのか――その問いをAPECに投げかけています。
AIはチャンスか、それとも新たな格差の入り口か
ラケルさんが注目するのは、AIがもたらす光と影の両面です。AIは仕事の効率化や新しいサービスの創出など、多くの可能性を広げています。一方で、使い方を誤れば、既にある格差や不平等をさらに深めてしまうリスクもあります。
彼女が懸念しているのは、例えば次のような点です。
- アルゴリズムの偏りによって、一部の人や地域が不利な扱いを受ける可能性
- 高度なAIを使える国・企業と、そうでない人々とのあいだで生まれる新たなデジタル格差
- AIの導入によって、雇用構造が変わり、一部の仕事が失われる懸念
こうした課題を放置すれば、AIは誰かのための便利な道具ではなく、ごく一部の人だけが得をする仕組みに変わってしまうかもしれません。だからこそ、ラケルさんはAPECのような国際的な場で、平等で包摂的なルールづくりが進むことを期待しています。
環境にもやさしいAIを目指して
ラケルさんは、AIが環境に与える影響にも強い関心を持っています。大規模なAIを動かすには、データセンターなどで大量の電力が必要になります。その電力の供給源によっては、地球温暖化を加速させる一因にもなりえます。
だからこそ、彼女は持続可能性をキーワードに、次のような方向性を提案しています。
- 再生可能エネルギーを活用したデータセンターの普及
- 無駄な計算や処理を減らす、省エネルギー型のAI技術の開発
- 環境への影響を開示し、利用者が選べるようにする透明性の確保
AIを進歩の象徴としてだけではなく、地球に負荷をかけない技術として育てていけるかどうかも、これからの国際議論の大きなテーマになりそうです。
国際協力でつくる公平・透明・持続可能なAI
今回のAPEC首脳会議の議題には、つながりと革新というキーワードが含まれていました。ラケルさんのメッセージは、まさにその両方に関わるものです。ひとつの国や企業だけでは、AIのルールづくりや環境対策を十分に進めることはできません。
彼女は、AIをめぐる国際協力に、少なくとも次の3つのポイントが必要だと考えています。
- 公平性:特定の国や大企業だけが利益を独占しない仕組みづくり
- 透明性:AIの仕組みや意思決定プロセスを可能な範囲で開示し、説明責任を果たすこと
- 持続可能性:環境への負荷や社会への影響を長期的な視点で評価し、対策を共有すること
APECは、経済協力を土台に、こうしたルールづくりを議論する場でもあります。ラケルさんのような若者の声が、各エコノミーの政策担当者や企業の意思決定にどこまで届くのかが、今後の焦点になっていくでしょう。
日本から考える、AIとの付き合い方
アジア太平洋の反対側に位置するチリの若者の声は、日本に暮らす私たちにとっても他人事ではありません。AIサービスを日常的に使うようになった今、私たち自身も次のような問いを持つことができます。
- 自分が使っているAIは、どんなデータを元に動いているのか
- そのAIは、誰かを不当に排除したり、傷つけたりしていないか
- 便利さの裏側で、環境にどんな負荷がかかっているのか
- 学校や職場で、AIを前提としたスキルやルール整備が進んでいるか
AIをただの便利なツールと見るのか、社会のあり方を変えるインフラと捉えるのかで、これからの選択は大きく変わります。ラケルさんのような若者の視点に耳を傾けながら、私たちもそれぞれの立場からAIの未来に参加していくことが求められています。
AIを進歩のエンジンにするのか、それとも新たな分断の火種にしてしまうのか。その分かれ目は、技術そのものではなく、私たちがどのようなルールと価値観を共有できるかにかかっているのかもしれません。
Reference(s):
We Talk: Chilean youth expects APEC to make AI a tool for progress
cgtn.com








