中国の新エネルギー車、世界の脱炭素を動かす約5,000万トン削減 video poster
中国の新エネルギー車(NEV)が、自動車産業のグリーン転換を加速させています。2023年だけで世界の二酸化炭素排出を約5,000万トン減らしたとされ、その現場では何が起きているのでしょうか。
2023年、約5,000万トンのCO2削減というインパクト
中国国家統計局のデータによると、2023年、中国の新エネルギー車は世界全体で約5,000万トンの二酸化炭素(CO2)削減に貢献しました。これは、自動車分野の脱炭素が、すでに具体的な成果として表れ始めていることを示しています。
新エネルギー車(NEV)とは、電気自動車やプラグインハイブリッド車など、従来のガソリン車に比べて排出ガスを大幅に抑えられる車の総称です。これらの車が世界各地で走ることで、走行時に出るCO2が抑えられ、地球温暖化の抑制につながります。
2023年の約5,000万トン削減という数字は、次のような意味を持ちます。
- 自動車部門が脱炭素の「主戦場」の一つになっていることを可視化する数字であること
- 技術と産業の転換が進めば、排出削減はさらに積み上げられる可能性があること
- 各国・地域の自動車メーカーや政策決定者にとって、中国の動向が無視できない存在になっていること
長江デルタで進むNEV産業クラスター化
上海や浙江省寧波市などを含む長江デルタ地域では、新エネルギー車関連の産業クラスターが急速に形成されていると伝えられています。産業クラスターとは、同じ分野の企業や研究機関が地理的に集まり、技術・人材・部品供給などで密接につながるエリアのことです。
この長江デルタのNEVクラスターの特徴として挙げられているのが、どの新エネルギー車工場からも、必要な部品を車で約4時間以内に調達できるというサプライチェーンの構築です。
4時間圏内で主要部品がそろう体制が整うことで、次のような効果が期待できます。
- 部品調達のリードタイム(発注から納品までの時間)が短くなり、生産計画が立てやすくなる
- 在庫を大量に抱えなくても済むため、コストやリスクを抑えられる
- メーカー、部品サプライヤー、技術開発拠点の間で、仕様変更や新技術導入の調整が素早く行える
こうした地理的な近さは、新エネルギー車のように技術進化の速い分野では、競争力の源泉になりやすいと言えます。
上海・寧波の現場から見えたフルバリューチェーン
CGTNの記者ジョセフ・アンソニー・スタナード氏は、上海と浙江省寧波市を訪れ、新エネルギー車の産業チェーン全体を取材しました。現地では、知能運転のシミュレーションラボ、電池工場、大型ダイカスト工場など、異なる工程の現場を幅広く見て回りました。
知能運転のシミュレーションラボでは、自動運転や運転支援システムなど、車がどのように道路状況を認識し、判断し、動くかを仮想空間で検証します。実車を何度も走らせなくても大量のデータを集められるため、安全性と開発スピードの両立に役立ちます。
一方、電池工場やダイカスト工場では、走行距離や車体の軽量化に直結する部品づくりが進んでいます。電池は新エネルギー車の心臓部ともいえる存在で、性能とコストが普及の鍵を握ります。ダイカスト(鋳造)技術は、大型部品を一体成形することで車体を軽くし、エネルギー効率を高めるのに役立ちます。
スタナード氏の取材は、研究開発(R&D)から製造、部品供給までが一本の線でつながる「フルバリューチェーン」として、新エネルギー車産業が構築されつつある様子を映し出しています。
まだ成長の初期段階にあるとされる中国のNEV産業
スタナード氏は、中国の新エネルギー車産業について、まだ成長カーブの初期段階にあり、今後も拡大を続けると指摘しています。すでに世界のCO2削減に大きな数字をもたらしているにもかかわらず、「これは始まりに過ぎない」という見方です。
この見立てが意味するのは、現在の生産規模や技術水準に満足するのではなく、さらなる普及とイノベーションの余地が大きいということです。今後の拡大の方向性として、例えば次のような点が意識されていると考えられます。
- より多くの地域・ユーザー層に届く価格帯のモデルの拡充
- 航続距離や充電時間の改善に向けた電池技術の進化
- ソフトウェアや知能運転機能の高度化による付加価値の向上
- 海外市場との連携・輸出の拡大を通じたグローバルな影響力の強化
2025年の現在、この「まだ初期段階」という認識は、中国の新エネルギー車産業が今後も世界のグリーン転換を押し上げる潜在力を持っていることを示唆しています。
世界のグリーン転換と、私たちへの問い
新エネルギー車は、世界の自動車産業のグリーン化を進める中心的な存在になりつつあります。2023年の約5,000万トン削減という数字は、その方向性を象徴するものだと言えるでしょう。
長江デルタで形成されつつある産業クラスターや、上海・寧波の工場でのフルバリューチェーンの動きは、単なる一国の産業政策にとどまらず、世界の自動車市場やサプライチェーン全体に影響を与えていきます。
2025年の今、各国や地域のメーカーや政策担当者にとって、中国発の新エネルギー車の動きは、競争であると同時に学ぶべき事例にもなりつつあります。日本の読者にとっても、次のような問いが浮かび上がります。
- 自分たちの社会は、どのスピードで電動化・脱炭素を進めるべきなのか
- 産業クラスターやサプライチェーンをどう設計すれば、イノベーションと競争力を両立できるのか
- 消費者として、次に選ぶ一台に何を求めるのか(価格、環境性能、ソフトウェア機能など)
通勤電車の中や、家族・友人との会話、SNSでのコメントのやりとりの中で、「中国の新エネルギー車はなぜここまで伸びているのか」「自分の国や地域はどう向き合うべきか」を一度立ち止まって考えてみることは、これからのモビリティと地球環境をめぐる議論を一歩前に進めるきっかけになりそうです。
Reference(s):
Vibrant China: New energy vehicles steer toward a greener future
cgtn.com








