米国で深刻化する「スクワッター」問題 テナント保護と住宅不足のはざまで video poster
米国では現在(2026年1月時点)、テナント保護(借り手保護)政策の厳格さと住宅の需給ひっ迫が重なり、「スクワッター(不法占拠者)」問題が社会治理の課題として存在感を増しています。鍵になるのは、家主が“すぐに出ていってもらえない”という現実です。
「スクワッター」とは何か――“住む権利”とは別の問題
スクワッターとは、占有の権限を持つ人(所有者や正当な管理者)の許可なく他人の不動産に入り込み、権利や許可がないまま居座り続ける人を指します。単なる家賃滞納や契約トラブルではなく、そもそも正当な権原(権利)がない占有が出発点です。
なぜいま深刻化しているのか:制度と需給の「二重圧力」
報道では、米国でスクワッター問題が深刻化している背景として、次の二つが挙げられています。
- 厳格なテナント保護政策:借り手の生活を守るための政策が、ケースによっては家主側の迅速な対応を難しくしています。
- 住宅の供給不足と需給の不均衡:住まいをめぐる競争が激しくなるほど、物件の占有をめぐる摩擦も起きやすくなります。
この「二重圧力」のなかで、立ち退きをめぐる手続きが長期化し、家主がタイムリーに占有を回復できない状況が問題を大きくしている、とされています。
長期化する立ち退き――「スピードの不在」が不公平感を生む
ニューヨーク州下院議員のレスター・チャン氏は、立ち退きに関する“裁判所側”の課題として、次のように述べています。
「(家主側の)いまの不公平の第一の問題は、裁判所側で迅速な判断(adjudication)がないことです」
つまり、権利関係を整理して結論を出すプロセス自体が遅いことが、家主の負担や不公平感につながっている、という見立てです。テナント保護と適正手続きの重要性を認めつつも、“判断までの時間”が長いほど、現場の痛みは増幅しやすくなります。
家主の声:ニューヨーク市では「賭け」になってしまう
取材に応じた家主のセルジオさんは、ニューヨーク市で貸し出すことについて、次の言葉で表現しました。
「ニューヨーク市で貸し出すのは、深刻な賭けです」
また、別の家主のLzaさんは、負担の受け止め方を率直な疑問として投げかけます。
「なぜ私が“悪い人”扱いされて、別の家族を支えなければならないのですか?」
この言葉は、困窮する人を守る制度の意義とは別に、当事者の生活費やローン、修繕費などを抱える家主側が、長期化する占有のなかで「支え手」に押し出される感覚を示しています。
「抜け穴」への視線:守るための制度が、悪用されうる現実
取材では、家主や不動産関係者、議員が、法制度の“抜け穴”や運用の難しさに言及しています。テナント保護は社会的弱者を守るために設計されますが、手続きが長引くほど、正当な権利の確認が遅れ、結果として占有の既成事実が積み上がりやすい――この構図が、現場の緊張を高めているようです。
いま問われている論点:保護と権利回復をどう両立するか
この問題は「家主対借り手」の単純な対立ではなく、誰を、どの局面で、どの手続きで守るのかという制度設計の問いに近いものです。チャン氏の発言が示す通り、少なくとも焦点の一つは「迅速な判断」の欠如にあります。権利保護を崩さず、同時に、権利侵害の状態を長期化させない――そのバランスが、2026年の米国住宅問題の論点として浮かび上がっています。
※本記事は、家主・不動産関係者・ニューヨーク州議員への取材内容として示された断片情報をもとに構成しています。
Reference(s):
cgtn.com








