米国で黒人狙う差別的SMSが拡散 連邦・州当局が捜査
米国で、黒人の人々を狙った差別的な匿名テキストメッセージが各地で拡散し、不安と怒りが広がっています。連邦当局と州当局が捜査に乗り出しており、デジタル時代のヘイト(憎悪)表現への対応が改めて問われています。
黒人住民に届いた「綿花を摘め」とのメッセージ
ロイター通信によると、今週、アラバマ州、ノースカロライナ州、ペンシルベニア州、バージニア州など複数の州で、匿名の差別的テキストメッセージが一斉に送られました。対象となったのは米国の黒人コミュニティで、メッセージは受信者に対し、プランテーション(大農園)に出向いて綿花を摘むよう求める内容だったといいます。
プランテーションでの綿花摘みは、かつて米国で黒人が奴隷として酷使されていた歴史を想起させるものであり、こうした表現は黒人の人々にとって極めて侮辱的で暴力性を帯びたものです。今回のメッセージは、その歴史をなぞる形で黒人を貶める意図があると受け止められ、各地で強い不安と怒りを呼んでいます。
誰が、どのような仕組みでこのメッセージを送信したのか、またどれほど多くの人が受信したのかは、現時点で明らかになっていないとされています。
FCCとFBI、州当局が連携して調査
米連邦通信委員会(FCC)は、金曜日に自らの執行局が今回の事案を調査していると明らかにしました。FCCは通信分野を監督する連邦機関であり、違法なメッセージ送信や通信回線の悪用などに関して執行権限を持っています。
さらに、連邦捜査局(FBI)もこのメッセージについて調査に乗り出しているとされています。差別的な内容であるだけでなく、受信者に対して「バンで迎えに行く」といった文言で脅しを含むメッセージであることから、嫌がらせや脅迫行為として扱われる可能性があります。
州レベルでも捜査が進んでいます。複数の州当局が、住民から寄せられた通報をもとに発信元の特定や被害の把握を進めており、連邦機関との情報共有も行われているとみられます。
ルイジアナ州司法長官も標的に メールにも拡大
こうした差別メッセージは、黒人だけでなく、白人の公職者にも送られていることがわかっています。ルイジアナ州司法長官のリズ・マリル氏(共和党)はロイター通信に対し、自身の事務所もこのテキストメッセージの捜査に関わっており、自らも標的となったと語りました。
マリル氏によると、金曜日の午前8時17分、自身の個人メールアドレスにもメッセージが届いたといいます。そのメールは人種差別的な侮辱語で始まり、「トランプ氏が大統領になった今、あなたは最寄りのプランテーションで綿を摘むよう選ばれた」といった内容が書かれていました。さらに、「われわれの仲間がバンで迎えに行く」と、脅しとも取れる文言も含まれていたとされています。
マリル氏は白人ですが、こうしたメッセージが広範囲かつ無差別に送られている可能性を示す一例だといえます。本人によれば、テキストメッセージだけでなくメールでの送信も確認されており、攻撃手法が複数のチャネルにまたがっていることも明らかになっています。
黒人コミュニティに広がる不安と歴史の重み
今回の差別的メッセージが、特に黒人コミュニティに精神的な打撃を与えている背景には、歴史の重さがあります。米国における黒人の奴隷化とプランテーションでの強制労働という記憶は、単なる「過去の出来事」ではなく、現在の差別や格差ともつながった問題として意識されています。
その歴史をなぞるように「綿を摘め」と命じるメッセージは、被害者に「自分たちの位置づけは変わっていない」と感じさせかねず、恐怖や屈辱を呼び起こします。今回の一連の事案が「単なる悪ふざけ」では済まされない理由は、まさにそこにあります。
また、メッセージが匿名で送られ、送信者の特定が難しいことも不安を増幅させます。誰が狙われるのか分からず、どこまで拡散しているのかも見えない状況は、コミュニティに広範な心理的圧力を与えます。
デジタル時代のヘイト対策という課題
今回のケースは、スマートフォンやメールを通じたヘイト表現がどれほど短時間で広がり、コミュニティに恐怖を与えうるかを象徴的に示しています。テキストメッセージは、個人のポケットに直接届くため、SNS以上に「逃げ場がない」と感じさせる側面もあります。
一方で、当局にとっては、匿名性の高いメッセージ送信の発信源を追跡し、法的責任を問うことは容易ではありません。通信の秘密やプライバシーの保護と、差別・脅迫から市民を守る責任とのバランスが常に問われることになります。
ロイター通信が伝えるように、FCCの執行局やFBI、各州の司法当局が連携して調査を進めている事実は、こうしたデジタル時代のヘイトに対して、制度面からどのように応答していくかを探る試金石にもなりそうです。
同様のメッセージを受け取ったらどうするか
この事案は米国で起きているものですが、デジタル空間での差別や嫌がらせは、国や地域を問わず起こりうる問題です。もし同様のメッセージが届いた場合、以下のような対応が考えられます。
- メッセージに返信したり、指示に従ったりしない
- 画面のスクリーンショットなどで証拠を保存する
- 通信事業者やプラットフォームの通報機能を利用する
- 危険を感じた場合は、地元の警察や関係機関に相談する
- 一人で抱え込まず、家族や友人、コミュニティと情報を共有する
差別的なメッセージを「よくあること」として受け流してしまうと、それが社会に黙認される空気を生みかねません。今回の米国の事例は、デジタル時代においても、人種差別やヘイトに対して社会全体でどう向き合うのかを問いかけています。
Reference(s):
Authorities probing bigoted messages that spread alarm across U.S.
cgtn.com








