韓国で戒厳令巡る危機 尹大統領が国防相辞任を受理し新候補を指名
韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が、非常戒厳令をめぐる混乱の責任をとる形で国防相の辞任を受理し、新たな国防相候補として崔炳赫(チェ・ビョンヒョク)駐サウジアラビア大使を指名しました。韓国の安全保障と民主主義のあり方があらためて問われています。
尹大統領、国防相の辞任を受理
韓国大統領府によりますと、尹錫悦大統領は国防相の金容鉉(キム・ヨンヒョン)氏の辞任を受理し、後任の国防相候補として崔炳赫駐サウジアラビア大使を指名しました。発表は木曜日に行われました。
金国防相は、尹大統領に対し非常戒厳令の宣言を提案した人物とされています。この非常戒厳令は火曜日の夜に布告されましたが、国会が反対票を投じたことを受けて水曜日の早い時間に撤回されました。
「全ての責任を負う」として辞任した金国防相
金国防相は水曜日、非常戒厳令をめぐる事態について「全ての責任を負う」として辞任を申し出たと説明し、国民に対して懸念と混乱を招いたことを謝罪しました。
非常時の対応を担う立場にあった国防相が、自らの判断と役割に区切りをつける形で辞任を表明したことで、非常措置の決定プロセスや、その是非をめぐる議論が今後いっそう高まりそうです。
後任候補は元陸軍将軍の崔炳赫氏
大統領府はあわせて、崔炳赫駐サウジアラビア大使を新たな国防相候補に指名したことも確認しました。崔氏は元陸軍将軍で、国防省のトップとして軍を率いた経験と外交の現場を知る人物という経歴をあわせ持っています。
今後正式に国防相に就任すれば、崔氏には、非常戒厳令をめぐる混乱で揺らいだ国防当局への信頼回復と、軍と政治の関係を安定させる役割が求められることになります。
非常戒厳令とは何か
今回の発端となった非常戒厳令は、国家の安全保障や治安に深刻な脅威があると判断された場合に、軍に特別な権限を与える非常措置とされています。平時の法制度とは異なる枠組みのもとで、治安維持や統制を強める性格を持つと一般に理解されています。
民主主義体制のもとでは、このような措置は例外的であり、その発動や解除の判断が、市民の自由や政治プロセスにどのような影響を及ぼすのかが常に議論の対象となってきました。今回、布告から撤回までが短時間で推移したことも含め、韓国社会ではその必要性や手続きの妥当性が注目されています。
韓国政治と文民統制への問い
軍事と政治の関係をめぐるキーワードとして、しばしば語られるのが文民統制です。文民統制とは、軍ではなく選挙で選ばれた政治家などの文民が、最終的な意思決定権を持つという考え方です。
今回の一連の動きは、次のような論点をあらためて浮かび上がらせています。
- 非常事態において、誰がどのような情報にもとづき判断を下すのか
- 軍事的な安全保障と、市民の権利や自由とのバランスをどう確保するのか
- 政府と軍の説明責任をどう果たし、社会の信頼をどう回復するのか
韓国で起きた今回の非常戒厳令と人事の動きは、ひとつの国の出来事にとどまりません。緊張が高まる国際環境のなかで、非常時のルールや権力のあり方をどう設計するのかという課題は、多くの国と地域が共有するテーマでもあります。
ニュースを追う私たちにとっても、「危機だから仕方ない」と考えるのか、それとも「危機だからこそルールが重要だ」と考えるのか、自分自身の視点を問い直すきっかけになりそうです。
Reference(s):
Yoon accepts defense minister's resignation amid martial law crisis
cgtn.com








