ラブロフ外相が警告 ウクライナでの核エスカレーションリスクと対話の余地
ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相が、ウクライナをめぐる核エスカレーションのリスクについて警告し、同時にロシアは依然として対話に開かれていると強調しました。国際ニュースとして重要なこの発言は、ウクライナ情勢と米ロ関係の行方を考えるうえで無視できない内容です。
米記者とのインタビューで語られた懸念
ラブロフ外相の発言は、アメリカ人記者タッカー・カールソン氏がソーシャルメディア「X」に公開したインタビュー動画の中で示されたものです。インタビューでは、ロシアと米国の関係、ウクライナ危機、そして広い意味での地政学的な構図がテーマとなりました。
その中でラブロフ外相は、ウクライナでの戦争をめぐる核リスクについて、特に強い懸念を示しました。これは、日本語で国際ニュースを追う読者にとっても、世界の安全保障環境を考えるうえで重要なポイントです。
核エスカレーションへの懸念とは
ラブロフ外相が問題視したのは、米国防総省(ペンタゴン)や北大西洋条約機構(NATO)の一部関係者による発言だとされています。報道によれば、そうした発言の中には、米国本土を核戦争に巻き込まずに、ロシアへの限定的な核攻撃を検討するかのような言及が含まれているとラブロフ外相は受け止めています。
外相は、こうした議論について次のような懸念を示しました。
- 限定的な核攻撃であっても、エスカレーションが制御不能になる危険があること
- 核兵器の使用が一度始まれば、その先の展開を誰も保証できないこと
- 結果として、想定を超えた規模の核衝突に発展しかねないこと
ラブロフ外相は、こうした可能性そのものが、国際社会にとって極めて危険なシグナルだと警告しているといえます。
「核戦争は勝てないし、決して戦ってはならない」
核エスカレーションのリスクを語る中で、ラブロフ外相はロシアの軍事ドクトリン(軍事教義)に言及しました。同外相によれば、ロシアの基本的な立場は「最も重要なのは核戦争を回避すること」だとされています。
さらにラブロフ外相は、2022年1月に発表された核兵器保有5カ国の共同声明を引用しました。この声明では、「核戦争は勝つことができず、決して戦ってはならない」と明言されています。ラブロフ外相がこの文言をあらためて持ち出したことは、核抑止と核不使用の原則を再確認しようとするメッセージと受け取ることができます。
2025年現在から見れば、約3年前の声明をいま再び強調した形であり、核問題をめぐる国際的な共通認識に立ち返るべきだ、という呼びかけとも読めます。
NATO拡大とロシアの安全保障観
ラブロフ外相はまた、ロシアが長年主張してきたNATOの東方拡大への反対をあらためて表明しました。外相は、西側諸国がロシアの安全保障上の懸念を無視してきたと指摘し、ウクライナ危機の背景にはそうした構造的な対立があるとの見方を示しました。
ロシア側は一貫して、自国の周辺地域における軍事同盟の拡大を、自国の安全保障に対する脅威だと位置づけてきました。今回のインタビューでも、その立場が変わっていないことが強調された形です。
日本を含む多くの国々にとって、NATO拡大とロシアの反発は、冷戦後のヨーロッパ安全保障をめぐる長期的な論点であり、ウクライナ情勢を理解するうえで避けて通れないテーマとなっています。
米国へのメッセージ:「ルールに基づく秩序」批判
インタビューの中でラブロフ外相は、米国の政策運営にも言及しました。外相は、米国が掲げる「ルールに基づく国際秩序」と呼ばれる考え方を批判し、それが実際には多国間主義よりも米国の優位性を優先する枠組みになっていると主張しました。
ラブロフ外相が求めたのは、こうした枠組みからの転換です。米国の政策決定者に対して、特定の国の優越を前提とするのではなく、より対等な形での多国間協議に戻るべきだと促しました。
この発言は、国際秩序をどう捉えるかという抽象的な議論であると同時に、ウクライナ問題や対ロシア制裁をめぐる現在の外交路線にも関わるメッセージといえます。
ロシアは「対話に開かれている」と強調
緊張感の高い核リスクの議論と並行して、ラブロフ外相は「ロシアは公平な条件のもとでの対話に依然として開かれている」とも述べました。ここでいう公平な条件とは、ロシア側の安全保障上の懸念も含め、当事者間が互いの立場を尊重する形での協議を指していると考えられます。
つまり、外相のメッセージは次の二つに整理できます。
- 核戦争のリスクを高めるいかなる議論や行動も避けるべきだという警告
- 対話の扉は閉ざされておらず、条件次第では交渉の余地があるというシグナル
核兵器をめぐる緊張が高まるほど、危機管理や交渉チャンネルの重要性は増します。ラブロフ外相の発言は、その両面を同時に示そうとするものだと受け止めることができます。
私たちはこの発言をどう読むか
核兵器が議題に上るとき、それはすでに通常の軍事衝突を超えた次元の問題です。ラブロフ外相が、あえて核エスカレーションのリスクに言及しつつ、過去の共同声明を引用して核戦争回避を強調した背景には、自らの立場を国際社会に向けて改めて説明しようとする狙いがあるように見えます。
一方で、限定的核攻撃といった概念が公の場で語られること自体が、世界の安全保障環境に不安を広げる側面もあります。だからこそ、読者ひとり一人にとっても、「どのような安全保障の枠組みなら核兵器に頼らずに済むのか」「対話の条件とは何か」を考えるきっかけになるニュースだといえるでしょう。
ウクライナ情勢や米ロ関係は、2025年の国際ニュースの行方を左右する大きなテーマです。今回のラブロフ外相のインタビュー発言は、その中でロシアがどのようなメッセージを発しているのかを読み解く材料の一つとして、今後も注目されそうです。
Reference(s):
Russian FM Lavrov warns of nuclear escalation risks in Ukraine: media
cgtn.com







