イスラエル首相、1974年のシリアとの国連緩衝地帯協定は崩壊と宣言
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は現地時間の日曜日、イスラエルとシリアの間に設けられた1974年の国連監視下の兵力引き離し協定について「もはや崩壊した」との認識を示し、ゴラン高原の緩衝地帯にイスラエル軍を展開すると表明しました。中東の安全保障枠組みを揺るがしかねない動きとして注目されています。
何が起きたのか:ネタニヤフ首相の発言
ネタニヤフ首相は、イスラエルが併合を主張するゴラン高原にあるベンタル山を視察した際に発言しました。同氏は、シリアとの国境地帯を見渡せるこの高地で、イスラエルのイスラエル・カッツ国防相とともに記者団の前に立ち、1974年の兵力引き離し協定が「崩壊した」と述べました。
同協定は、イスラエルとシリアの間に非武装の緩衝地帯を設け、その状況を国連が監視することで、両国の直接的な軍事衝突を避ける役割を担ってきたとされます。ネタニヤフ首相は、その仕組みがもはや機能していないとし、イスラエル軍に対し緩衝地帯へ進入し、拠点を確保するよう命じたと説明しました。
首相は「いかなる敵対勢力にも、我々の国境沿いに拠点を築かせることはない」と強調し、シリアで反体制派の攻勢を主導しているとされる武装組織ハヤート・タハリール・アル・シャームへのけん制とみられています。
アサド政権の崩壊と連鎖反応
ネタニヤフ首相は、バッシャール・アル・アサド政権の崩壊が「中東全体に連鎖反応を引き起こした」と述べ、シリアの中央政府が機能を失ったことで生まれた権力の空白が周辺地域の不安定化につながっているとの見方を示しました。
同時に、シリアの統治機構が崩れたことは、イスラエルにとって「新しく非常に大きな機会」を生み出しているとも指摘しました。具体的な内容には踏み込みませんでしたが、イスラエルが安全保障上の優位性を確保しやすくなる可能性などを念頭に置いているとみられます。一方で、首相はリスクも大きいと強調し、動向を注視しながら「国境と安全を守るために必要なあらゆる措置をとる」としました。
ゴラン高原の緩衝地帯にイスラエル軍を展開
ネタニヤフ首相は、イスラエル軍に対し緩衝地帯へ進入し、要所を確保するよう命じたと明らかにしました。目的は、武装組織などの「敵対勢力」が緩衝地帯を足場として国境付近に根を下ろすことを防ぐためだとしています。
カッツ国防相も、閣議の承認を得てイスラエル軍に対し、緩衝地帯と戦略的な高地を掌握するよう指示したと述べました。その狙いについて同氏は、ゴラン高原に住むユダヤ系住民とドルーズ派住民を含むすべての地域社会を「反対側からの脅威」から守るためだと説明しています。
こうした動きは、国連が監視する既存の枠組みの下で維持されてきた現状に、イスラエル側が独自の安全保障上の判断から踏み込む形となります。国連やシリア側、周辺のアラブ諸国がどのように反応するかが、今後の焦点の一つとなりそうです。
「善隣政策」への言及とその含意
ネタニヤフ首相は一方で、将来的にはシリアとの間で「善隣政策」を築きたいとの希望も述べました。軍事的な警戒を強めつつも、国境を挟んだ地域住民同士の安定した関係や、緊張緩和の可能性を完全には閉ざさない姿勢を示した形です。
ただし、緩衝地帯にイスラエル軍が実際に展開することになれば、シリア側や、シリア国内で影響力を持つ他の勢力からは主権や領土をめぐる懸念や反発が出る可能性もあります。「善隣政策」がどのような具体像を持つのかは、現時点では不透明です。
レバノン・シリアでの軍事行動拡大とのつながり
昨年10月にレバノンでヒズボラとの戦闘が始まって以来、イスラエルはシリア領内への空爆を増やしてきたと説明しています。イスラエル側は、これらの攻撃がイランやヒズボラと関係する民兵組織や活動を標的にしたものだと主張しています。
今回、イスラエル軍がシリアとの緩衝地帯に進出する方針を明確にしたことは、対ヒズボラやイラン関連勢力をにらんだ広域的な安全保障戦略の一環と見ることもできます。複数の前線が絡み合う中で、局地的な衝突がより広い地域的な対立へと発展するリスクも指摘されています。
これから何に注目すべきか
今回の発表は、約半世紀にわたり維持されてきたイスラエルとシリアの国境管理の前提に変化が生じつつあることを示しています。8日現在、現地の状況や関係各国の反応は流動的であり、中東情勢を見守るうえで次のような点が注目されます。
- 国連や関係国が、1974年の兵力引き離し協定の位置づけをどのように評価し直すか
- シリア側およびシリア国内の諸勢力が、イスラエル軍の緩衝地帯進出にどのように対応するか
- ゴラン高原やシリア南部の住民の安全や生活にどのような影響が及ぶか
- レバノンやシリアを舞台とするヒズボラやイラン関連勢力との緊張が、さらに高まるのか抑制されるのか
イスラエルの動きは、自国の安全保障を守るための措置だと説明されていますが、同時に、既存の国際的な枠組みや地域秩序にどのような影響を及ぼすのかという問いも突きつけています。読者の皆さんは、国境の安全と地域全体の安定のバランスをどのように考えるでしょうか。
Reference(s):
Israeli PM: 1974 UN-monitored Disengagement Agreement defunct
cgtn.com








