韓国国会議長「共同声明は違憲」 ユン大統領の権限巡り政局緊迫
韓国(大韓民国)で、大統領権限の扱いを巡る憲法論争が一気に表面化しています。2025年12月7日(日)、国会のウ・ウォンシク議長が、首相と与党代表による共同声明を「憲法の明白な違反だ」と批判し、ユン・ソクヨル大統領を巡る政局は新たな局面に入りました。
首相と与党代表の「共同声明」とは
7日、ハン・ドクス首相と与党「国民の力」を率いるハン・ドンフン代表は共同声明を発表しました。声明は、ユン・ソクヨル大統領が退任前に国内外の事案に関与しないことを確認し、その間の国の内政・外交から距離を置くとする内容でした。
声明は、大統領が事実上職務を行わない間、首相と与党指導部が国政を主導する構図を示唆していると受け止められています。これに対しウ議長は、首相と与党が共同で大統領権限を行使する形になれば、「憲法の明白な違反」だと強くけん制しました。
ウ議長「主権は国民にあり、権限停止は弾劾のみ」
ウ議長は国会での記者会見で、共同声明について「違憲行為をあたかも正当な措置であるかのように見せかけ、国民を惑わせる行為だ」と批判し、「傲慢だ」とまで言及しました。
さらに、「大統領権限の源泉は国民にあり、その移譲や制限のプロセスは、憲法と国民主権の原則に従わなければならない」と指摘しました。そのうえで、「大統領の職務執行を停止できる唯一の合法的な手続きは弾劾だ」と述べ、憲法に基づく手続きを経ずに、首相や与党が政治的合意だけで大統領権限を肩代わりすることは認められないとの立場を明確にしました。
ここでいう弾劾とは、国会が大統領などの高位公職者の重大な違法行為を理由に訴追し、憲法裁判所が最終的に罷免を判断する制度です。ウ議長は、この正式なプロセスを経ない「暫定的な権限移譲」は許されないと強調した形です。
戒厳令宣言が政局緊迫の引き金に
今回の事態の背景には、ユン大統領が今週火曜日に宣言した戒厳令があります。戒厳令とは、非常事態において軍が治安維持などで特別な権限を持つ制度で、通常の民主的な統治を一時的に制限する強い措置です。
ユン大統領による戒厳令の宣言は短時間で終わったものの、宣言そのものが重大な政治問題となりました。野党だけでなく、社会全体から「必要性や手続きは適切だったのか」を問う声が上がり、韓国の民主主義のあり方を巡る議論に発展しています。
ウ議長は、戒厳令をめぐる混乱を受けて、与党と最大野党の間で協議の場を設けることを提案しました。協議では、ユン大統領の職務を直ちに停止するかどうかを含め、政治的混乱を収束させるための具体策を話し合うべきだとしています。
内務・安全相が辞任、野党は弾劾を追及
同じ7日には、政局に関わるもう一つの動きがありました。ユン大統領は、イ・サンミン行政安全部(内務・安全)長官の辞表を受理しました。イ長官は声明で「これ以上の混乱と統治の支障を避けるため、職を退く必要があると判断した」と述べ、辞任の理由を説明しました。
野党第1党「Democratic Party of Korea」(民主党)は前日の6日、イ長官に対する弾劾訴追案を国会に提出していました。訴追案は、イ長官が戒厳令の宣言に関与した疑いがあることに加え、戒厳令の過程で警察を動員し、国会議員が本会議場に入るのを阻もうとしたと批判する内容です。
辞任により弾劾審議は事実上の方向転換を迫られる可能性がありますが、野党側は「責任の所在」を引き続き追及するとみられます。大統領に近い閣僚が退任したことで、ユン政権内の求心力がどう変化するかも注目されています。
何が問題なのか――憲法秩序と権力空白のリスク
今回の国際ニュースが重要なのは、一国の政局という枠を超え、民主主義国家における「非常時の権限行使」と「憲法秩序」の関係を問い直している点です。韓国では大統領制が採用されており、大統領の権限は強力です。その権限をいつ、どのような手続きで制限できるのかが、今まさに問われています。
首相と与党が政治合意によって事実上の「暫定体制」を敷く場合、少なくとも二つのリスクが指摘されます。
- 憲法に明記された弾劾手続きを迂回し、国民の代表である国会と憲法裁判所の役割が軽視されるおそれ
- 「誰が最終的な責任を負うのか」が不明確になり、権力の空白や二重権力状態を生みかねない点
ウ議長の発言は、こうした懸念を背景に、「手続きの正当性こそが政治的安定の条件だ」というメッセージを発しているとも読めます。
日本から見たポイントと今後の注目点
韓国の政治動向は、日本の外交・安全保障や経済にも直接影響を与えうるため、日本語でフォローすべき国際ニュースの一つです。特に今回のように、戒厳令や大統領権限の行使といったテーマは、民主主義の根幹に関わる問題として注目されます。
今後の焦点として、次の点が挙げられます。
- ユン大統領に対する弾劾訴追が現実味を帯びるかどうか
- 首相・与党が共同で国政を主導する構想が、憲法論争の中でどのように修正されるのか
- イ長官辞任を受けて、政権内からさらなる辞任や路線転換が出てくるのか
- 韓国の外交・安全保障政策にどこまで影響が及ぶのか
韓国の憲法秩序をめぐる今回の議論は、一過性の政局ではなく、非常時における権力のあり方をめぐる長期的なテーマでもあります。隣国の動きを冷静に追いながら、自国の制度について考えるきっかけにもなりそうです。
Reference(s):
S. Korean parliament speaker: Joint statement is unconstitutional
cgtn.com








