シリア政変でエジプト外相とブリンケン長官が協議 包括的政治解決を確認
シリアでバッシャール・アル・アサド大統領が退陣し政権が崩壊する中、エジプトのバーデル・アブデルアッティ外相と米国のブリンケン国務長官が、今後のシリア情勢や政治プロセス、ゴラン高原の緩衝地帯をめぐる問題について電話で協議しました。2025年12月現在、中東情勢の行方を占う重要な動きとして注目されています。
シリアで何が起きたのか:アサド退陣と政権崩壊
エジプト外務省などによると、今回の協議は、シリアのアサド大統領が辞任し、政権が崩壊した直後に行われました。日曜日、シリア政府は複数の武装勢力による大規模な攻勢を受けて崩壊し、アサド氏は亡命を求めてロシアに到着したとされています。
長年続いたシリア危機は、2025年末に入り大きな転換点を迎えました。権力の空白が生まれる中で、どのような政治枠組みを作り直すのかが、地域の安定と人々の生活に直結する段階に入っています。
エジプトと米国が確認した「包括的政治プロセス」
今週火曜日の夜、アブデルアッティ外相はブリンケン長官から電話を受け、最新のシリア情勢について協議しました。エジプト外務省の発表によれば、両者は「包括的な政治プロセス」が必要だという点で一致しました。
このプロセスは、いかなるシリアの「国民的構成要素」や勢力も排除しない形で進めるべきだとされており、特定の陣営だけが主導権を握るのではなく、幅広い参加を前提とした対話の場を整えることを目指しています。目的は、シリアに安定を取り戻すための道筋をつくることです。
なぜ「誰も排除しない」ことが重要なのか
長期にわたる内戦と分断を経験したシリアでは、宗教や民族、政治的立場の違いが深い不信感となって積み重なってきました。その中で、一部の勢力だけで新たな政治枠組みを決めれば、再び対立や暴力が続くおそれがあります。
今回、エジプトと米国が「誰も排除しない」政治プロセスの重要性を強調したことは、こうした分断を乗り越え、より持続的な和解を目指すためのメッセージとみることができます。
エジプトが示したシリアの主権と領土保全への支持
アブデルアッティ外相は電話協議の中で、シリアの主権と統一、領土の安全を支持するというエジプトの立場を改めて表明しました。政権が崩壊した後も、国家としての枠組みや領土の一体性を守ることが重要だという考え方です。
この立場は、シリア国内だけでなく周辺地域の動きにも関係しています。とくに焦点となっているのが、ゴラン高原とその非武装緩衝地帯をめぐる問題です。
ゴラン高原の緩衝地帯をめぐる懸念
アブデルアッティ外相は、イスラエルがゴラン高原の非武装緩衝地帯や周辺の拠点を掌握しようとしていることを強く批判しました。同外相は、こうした動きを「シリア領土の占領」であり、「国際法の明白な違反」だと指摘しています。
非武装緩衝地帯は、本来、軍事的緊張を抑え、偶発的な衝突を避けるために設けられるものです。その地帯に一方の側が進出し支配を広げれば、緊張を高めるだけでなく、シリアの主権や領土保全にも直接影響を及ぼします。
エジプト外相は、国際社会に対し「シリアへのいかなる攻撃も止めさせる責任を果たすべきだ」と訴えました。これは、シリア情勢が内戦や政変だけでなく、周辺地域の軍事的動きとも密接につながっていることを示しています。
ブリンケン長官が語った「歴史的な好機」と人権尊重
一方、米国務省の声明によると、ブリンケン長官は現在の状況を「シリアの人々にとって、より良い未来を築くための歴史的な好機」と位置づけました。
そのうえで、シリアに関わる全ての当事者に対し、次の三点を守るよう呼びかけています。
- 人権の尊重
- 宗教的・民族的少数派の保護
- 国際人道法の遵守
政権崩壊後の混乱期には、報復や差別、恣意的な拘束など、さまざまな人権侵害が起きやすくなります。そのため、軍事や安全保障だけでなく、人権と法の支配を中心に据えた再建プロセスが重要になると、米国は強調しています。
国際社会の課題:空白をどう埋め、暴力の連鎖を防ぐか
今回の電話協議からは、エジプトと米国がそれぞれの視点から、シリアの主権、領土、そして人権をどう守るかを模索している姿が見えてきます。
一方で、アサド政権崩壊後のシリアでは、以下のような課題が山積しています。
- 武装勢力間の権力争いをどう抑えるか
- 少数派を含む全ての住民が安心できる政治参加の仕組みをどう設計するか
- ゴラン高原を含む周辺地域で、新たな軍事的緊張をどう防ぐか
これらはエジプトや米国だけでなく、広く国際社会全体が向き合うべき課題です。エジプト外相が訴えた「国際社会の責任」と、ブリンケン長官が強調した「歴史的な好機」は、一見すると異なる言葉ですが、いずれもシリアの未来をシリアの人々のためのものにできるかどうかが問われている、という点でつながっています。
私たちが見ておきたい視点
2025年12月の時点で、シリア情勢は大きく揺れ動いています。ニュースの見出しでは「政権崩壊」「亡命」「攻勢」といった言葉が並びますが、その背景には、主権や人権、少数派の保護といった普遍的なテーマがあります。
エジプトと米国の協議は、そのすべてを一度に解決できるものではありません。しかし、「誰も排除しない政治プロセス」と「人権と国際法の尊重」を同時に語り始めたという点で、シリアにとっても、中東全体にとっても、一つの試金石となりそうです。
これからの報道では、どの勢力が勝ったか負けたかだけでなく、誰の声が政治プロセスに含まれているのか、そして少数派や一般の人々の安全が守られているのか、という視点にも注目していく必要がありそうです。
Reference(s):
cgtn.com








