韓国政治の激動1カ月:戒厳令から弾劾、現職大統領への逮捕状まで
韓国で何が起きていたのか:2024年末〜2025年初めの政治危機
2024年12月3日から2025年1月3日にかけて、韓国(大韓民国)の政治は、戒厳令の発令と撤回、国会による弾劾可決、捜査機関との緊張、そして現職大統領に対する初の逮捕状発付という、異例の展開が矢継ぎ早に続きました。この記事では、約1年前から今年初めにかけての1カ月間を時系列で振り返り、その意味合いを整理します。
1カ月の流れを時系列で見る
まずは、2024年12月から2025年1月初めまでに起きた主な出来事を確認します。
12月3日:戒厳令の発令と数時間後の解除
2024年12月3日、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は、緊急の戒厳令を発令しました。戒厳令は、軍が治安維持などに大きな権限を持つ非常措置です。この命令は数時間後に解除されましたが、短時間とはいえ現職大統領による戒厳令発令は、韓国の民主主義と統治のあり方に強い衝撃を与える出来事でした。
12月14日:国会の弾劾可決と憲法裁判所の審理開始
12月14日、韓国国会が尹大統領の弾劾訴追を可決しました。これを受けて、憲法裁判所が尹氏の弾劾裁判手続きを開始し、尹氏は大統領としての職務を停止されました。政治の主導権は、行政府から立法府と司法へと移る局面を迎えます。
12月15日:検察の召喚に応じず
翌15日、戒厳令をめぐる捜査を進める検察は尹氏に出頭を求めましたが、尹氏は最初の召喚に応じませんでした。弾劾審理と刑事捜査が同時進行する中で、大統領と捜査当局との対立が表面化していきます。
12月20日:ハン・ドクス大統領代行への事情聴取
12月20日には、戒厳令の経緯を調べる警察が、ハン・ドクス大統領代行(当時)への事情聴取を実施しました。大統領職務を代行する立場にある人物が捜査対象となったことで、危機は政権中枢全体を巻き込む性格を強めます。
12月23日:大統領室が再び召喚要請を拒否
12月23日には、戒厳令に関する捜査チームが出した再度の召喚要請に対し、大統領室が応じない姿勢を示しました。捜査機関の要請を繰り返し退けることで、政権側と捜査当局の緊張は一段と高まります。
12月27日:大統領セーフハウスへの家宅捜索
12月27日、警察は戒厳令をめぐる捜査の一環として、大統領の安全確保のための施設とされるセーフハウスを家宅捜索しました。大統領の居住や警護に関わる施設への強制捜索は、権力機構内部の信頼関係が大きく揺らいでいることを象徴する動きといえます。
12月29日:3度目の召喚も応じず
12月29日、尹氏は戒厳令捜査を担当する当局からの3度目の出頭要請にも応じませんでした。召喚要請のたびに「不出頭」が続いたことで、捜査と政権の対立は長期化の様相を呈します。
12月31日:現職大統領に初の逮捕状
大みそかの12月31日には、戒厳令をめぐる疑惑に関連して、尹大統領に対する逮捕状が発付されました。現職大統領に対して逮捕状が出されたのは、韓国で初めてのケースとされています。政治史上に残る大きな節目となる出来事でした。
1月3日:公邸でのにらみ合いと逮捕状執行の停止
2025年1月3日、捜査当局は尹大統領の公邸を訪れ、逮捕状の執行を試みましたが、公邸での緊迫したにらみ合いの末、いったん執行を停止しました。尹氏の警護チームは、公邸への立ち入りは住居への不法侵入に当たるとして、捜査側に対して法的措置も辞さない姿勢を警告しました。
この政治危機から見えるもの
約1カ月の間に、戒厳令の発令と撤回、弾劾可決、捜査当局との対立、現職大統領への逮捕状発付、公邸での対峙という出来事が立て続けに起きました。この流れからは、いくつかの重要なポイントが浮かび上がります。
1. 「非常措置」の重さとその後始末
戒厳令の発令と数時間後の解除は、非常措置の発動がいかに政治を揺さぶるかを改めて示しました。戒厳令の正当性や必要性をめぐる評価はさまざまあり得ますが、その後に弾劾や刑事捜査へと発展したことは、非常措置の判断が政治指導者自身の責任問題に直結しうることを物語っています。
2. 立法・司法によるチェックのフル稼働
国会による弾劾可決と憲法裁判所の弾劾審理開始は、行政府のトップに対しても制度的なチェックが働きうることを示しました。一方で、捜査当局の召喚要請を大統領側が繰り返し拒否し、最終的に逮捕状の発付と公邸でのにらみ合いにまで至った経緯は、法の支配と権力の行使をどう両立させるのかという、現代民主主義に共通する難題を突きつけています。
3. 安全保障と法的正当性のせめぎ合い
公邸への立ち入りをめぐり、捜査当局は逮捕状の執行を試み、警護チームは住居侵入に当たる可能性を理由に法的措置をちらつかせました。安全保障上の配慮と、捜査権・逮捕権の正当な行使との線引きは、国家のトップをめぐる場面ではとりわけ繊細です。この事案は、その難しさが表面化した一例といえます。
日本からどう読むか
日本からこの一連の韓国政治の動きを見ると、次のような問いが浮かびます。
- 非常時における権限行使を、誰がどのようにチェックするのか。
- トップリーダーへの刑事捜査と政治的プロセス(弾劾など)を、どのような順番と関係性で進めるのか。
- 捜査機関と政治権力の対立が長期化したとき、民主主義への信頼をどう維持するのか。
2025年12月の今、昨年末から今年初めのこの1カ月を振り返ることは、韓国だけでなく、多くの国に共通する「民主主義のストレステスト」を考える手がかりにもなります。短い期間に圧縮された政治危機のプロセスを丁寧に追い直すことで、私たち自身の社会がどのような制度と文化で権力をコントロールしているのかを、静かに問い直す機会となるでしょう。
Reference(s):
cgtn.com








