トランプ次期大統領の口止め料事件、量刑延期要請を控訴裁が却下
ニューヨーク州の控訴裁判所が、ドナルド・トランプ米次期大統領の口止め料刑事事件をめぐる量刑手続きの停止を認めず、就任を目前に控えたトランプ氏の法的リスクが改めて注目されています。
控訴裁が量刑停止の申し立てを棄却
火曜日、ニューヨーク州中級の控訴裁判所(アピール部)のエレン・ゲスマー判事は、トランプ氏側が求めていた量刑手続きの一時停止を認めない決定を出しました。この事件は、アダルト映画女優への口止め料支払いをめぐる業務記録改ざん罪で、トランプ氏が有罪評決を受けた刑事事件に関するものです。
ゲスマー判事は審理を開いたうえで判断を示し、量刑は金曜日に予定されたままとされました。量刑日は、トランプ氏の就任式の10日前にあたるとされています。
- 控訴裁が量刑手続きの停止を認めず、金曜日の宣告は予定通り実施される見通しとなったこと
- 一審のフアン・メルチャン判事は、実刑ではなく無条件の免除に近い形の量刑が現実的だと示唆していること
- トランプ氏は事件を政治的な攻撃と位置づけ、政権移行の妨げだと強く反発していること
一審判事は「実刑回避」を示唆
月曜日には、一審を担当するニューヨーク州裁判所のフアン・メルチャン判事が、トランプ氏側の量刑延期要請を退けていました。トランプ氏の弁護団は、5月にマンハッタンの陪審が出した有罪評決を支持した過去の二つの判断について不服を申し立てており、その審理が終わるまで量刑を先送りするよう求めていました。
メルチャン判事は決定の中で、この延期要請は「これまでも幾度となく示されてきた主張を繰り返すものに過ぎない」と指摘し、受け入れませんでした。
同判事は量刑日を金曜日に設定したうえで、トランプ氏を収監する考えはほとんどないとも述べています。トランプ氏がまもなく大統領職に復帰する状況を踏まえ、有罪の事実だけを記録として残し、罰金や保護観察を科さない無条件の免除に近い処分が、現実的な対応だとの見方を示した形です。
トランプ氏は「不正な裁判官」と反発
こうした動きに対し、トランプ氏はニューヨークの裁判官を名指しで強く批判しています。火曜日の審理前、トランプ氏は記者団に対し、ある裁判官が「移行期を円滑にしたい」と述べながら、実際にはその言葉と矛盾する行動を取っていると主張しました。
トランプ氏は、裁判官が自分を辱めようとしていると述べたうえで、自らは何も悪いことはしていないと強調しています。量刑手続きが、大統領職への移行を複雑にしているというのがトランプ氏側の受け止めです。
事件の背景:13万ドルの口止め料
この刑事事件は、トランプ氏の元弁護士マイケル・コーエン氏が、アダルト映画女優ストーミー・ダニエルズ氏に対して支払った13万ドルの口止め料をめぐるものです。ダニエルズ氏は、トランプ氏と約10年前に性的な関係があったと主張しており、2016年の米大統領選挙の直前、この関係について沈黙を保つ見返りとして支払いを受けたとされています。トランプ氏は、この関係自体を否定しています。
検察側は、この支払いを隠すためにトランプ氏の企業の帳簿が虚偽の内容で記載されたと主張し、トランプ氏は業務記録を不正に改ざんしたとして重罪にあたる34件の罪で起訴されました。マンハッタンの陪審は5月、この全ての罪状について有罪評決を下しています。
この事件を起訴したマンハッタン地区検事アルビン・ブラッグ氏(民主党)は、業務記録の重罪としての起訴は同事務所が日常的に行っていると説明しています。一方のトランプ氏(共和党)は、事件は自身の2024年の大統領選挙キャンペーンを妨害するために政治的な意図をもって仕掛けられたものだと繰り返し主張してきました。
この口止め料事件により、トランプ氏は、現職・退任後を問わず、米国史上初めて刑事事件で起訴され、さらに有罪判決を受けた大統領経験者となりました。
最高裁判断と「公式行為」をめぐる争点
トランプ氏側は、米連邦最高裁が7月、別の刑事事件で「大統領は職務上の公式行為については起訴されない」との趣旨の判断を示したことを受け、この口止め料事件も同様に免責されるべきだと主張しました。
しかしメルチャン判事は、この事件はトランプ氏の個人的な行動にかかわるものであり、公的な職務とは関係がないと判断し、事件の棄却要請を退けました。
さらに、トランプ氏が11月の選挙で勝利し次期大統領となった後、弁護団は、在任中に刑事事件が継続することは執務の妨げになると訴えました。これに対してメルチャン判事は、陪審の評決を覆すことは法の支配に対する侮辱にあたると述べ、この主張も認めていません。
司法と政治の緊張が投げかける問い
トランプ氏側は、有罪評決の取り消しをこれまでに2度試みましたが、いずれも退けられてきました。量刑の内容だけでなく、この事件は米国の民主主義や司法制度をめぐる幅広い問いを投げかけています。
- 大統領経験者も他の市民と同じように刑事責任を問われるべきか
- 司法手続きが選挙や政権移行にどこまで影響すべきか
- 公式行為と私的な行動の線引きをどう考えるか
トランプ氏の量刑がどのような結末を迎えるにせよ、この事件は「法の前の平等」と「政治的中立性」という、どの国の民主主義にも共通するテーマを改めて浮かび上がらせています。日本からこのニュースを見る私たちにとっても、権力者と司法の距離をどう保つのかを考える材料になりそうです。
Reference(s):
New York appeals court denies Trump bid to halt hush money sentencing
cgtn.com








