米国最高裁、トランプ氏の口止め料量刑延期を認めず
トランプ氏が次期大統領だった時期、いわゆる「口止め料」事件をめぐり米国最高裁が量刑延期を認めなかった判断は、政治と司法の関係をめぐる議論を一段と深める出来事となりました。本記事では、その決定のポイントと背景を整理します。
- 米国最高裁は、トランプ氏の量刑手続きの一時停止要請を退けた
- トランプ氏側は「大統領免責」を理由に、就任前の刑事手続き中断を主張
- 量刑は、重罪有罪となった次期大統領としての位置づけを公式にする意味を持つと指摘されている
米国最高裁が量刑延期を認めなかった決定
国際ニュースとして注目されたのが、米国最高裁がトランプ氏の「口止め料」事件の量刑延期を認めなかったという決定です。これにより、トランプ氏はニューヨーク州の裁判所で予定どおり量刑言い渡しの手続きに臨むことになりました。
トランプ氏は、いわゆる口止め料をめぐる刑事事件で有罪評決を受けた後も、一貫して無罪を主張し、不服申し立てを続けてきました。今回、米国最高裁に対しては、量刑手続きを一時的に止めるよう緊急に求めていましたが、裁判所はこれを退けました。
米国最高裁は保守派判事6人、リベラル派3人という構成とされていますが、その多数派構成にもかかわらず、トランプ氏側の「土壇場の」要請を認めなかった形です。1月20日に予定されていた就任式を前に、トランプ氏に対する刑事事件の量刑手続きを止めるべきかどうかが問われたのです。
争点となった「大統領免責」
トランプ氏の弁護団が前面に押し出したのは、「大統領免責(presidential immunity)」という概念でした。これは、大統領としての職務に関連する行為については、刑事訴追から一定の保護が与えられるべきだとする考え方です。
弁護団は、米国最高裁が7月の判断でトランプ氏に「大統領免責」を認めたとし、そのロジックを今回の口止め料事件にも適用すべきだと主張しました。ニューヨーク州の裁判所が、次期大統領であるトランプ氏について、大統領就任前の「移行期間」における刑事訴追の免責を認めなかったのは誤りだと指摘しています。
また、弁護団は、トランプ氏がかつて大統領を務めたことを理由に、そもそもこの刑事訴追そのものが免責の対象になりうるかという法的問題についても、改めて争う構えを見せています。そのため、ニューヨークで進行中の刑事事件を一時停止し、免責の有無に関する上訴審の結論を待つべきだと米国最高裁に求めていました。
下級審への異議申し立て
トランプ氏の弁護団は、ニューヨークの控訴裁判所にも訴えを起こし、マンハッタン地区検事のアルビン・ブラッグ氏と、事件を担当するフアン・メルチャン判事を相手取り、「大統領免責」主張を退けた判断に異議を申し立てました。こうした複数の法廷戦略を同時に展開しながら、量刑手続きをできるだけ遅らせようとしていた構図が浮かび上がります。
有罪評決と量刑手続きの意味
この事件では、2024年5月にニューヨークの陪審が評決を出し、トランプ氏はビジネス記録を改ざんした重罪34件すべてについて有罪とされました。評決によれば、その目的は、2016年の最初の大統領選挙の際、いわゆるアダルト映画女優への口止め料の支払いを隠すことにあったとされています。
トランプ氏は起訴内容について無罪を主張し続けており、量刑手続きにおいても本人は出廷を予定していました。報道によれば、トランプ氏はニューヨーク・ロウアー・マンハッタンの法廷に、オンライン形式で姿を見せる意向を示していたとされています。
ニューヨークのフォーダム大学ロースクールのシェリル・ベイダー教授は、「彼が量刑言い渡しを嫌がっているのは、それが彼を重罪で有罪となった人物だと公式に認定する判断だからです」と語っています。量刑は、単に刑罰の内容を決めるだけでなく、「重罪犯」としての法的なレッテルを確定させる節目になるという指摘です。
米紙ニューヨーク・タイムズは、「数カ月にわたる遅延を経て、量刑はトランプ氏の有罪判決を正式なものとし、『重罪犯としてホワイトハウスに入る初の人物』という地位を固めることになる」と論評しました。次期大統領としての立場と、重罪で有罪とされた被告人という立場が重なるという、歴史的にも異例の状況が強調されています。
保守多数の最高裁が示したメッセージ
今回の国際ニュースが注目された背景には、「保守派多数」とされる米国最高裁が、トランプ氏の要請をあえて退けたことがあります。判事のイデオロギー構成と、個別事件における判断が必ずしも一致しないことを、改めて示した出来事とも受け止められました。
一方で、トランプ氏側は「大統領免責」を武器に、刑事手続きを政治的な攻撃だと訴える構図を強めており、司法判断が政治的な分断をどう深めるのかという点も、米国内外で関心を集めました。
私たちはこのニュースから何を考えられるか
今回の一連の動きは、次のような問いを投げかけています。
- 国家元首や次期指導者に、どこまで特別な免責や保護を認めるべきか
- 選挙と刑事司法が交錯する場面で、「法の支配」をどう維持するか
- SNS時代において、法廷の動きが政治的メッセージとしてどのように消費されるのか
日本から国際ニュースを追う私たちにとっても、これは遠い国の出来事ではありません。権力の監視や司法の独立、メディアの役割など、民主主義の根幹に関わるテーマが凝縮されたケースだからです。
今後も、トランプ氏をめぐる裁判や米国政治の行方は、世界経済や安全保障にも影響しうる重要なニュースとして、継続的に注視していく必要があるでしょう。
Reference(s):
U.S. Supreme Court declines to halt Trump's hush money sentencing
cgtn.com







