米連邦判事、トランプ氏の出生地主義撤廃令を全米で一時差し止め
米連邦判事、大統領令による出生地主義撤廃を一時差し止め
米ワシントン州シアトルの連邦地裁で先週木曜日、ドナルド・トランプ米大統領が署名した出生地主義の撤廃を目指す大統領令について、全米を対象とする一時差し止め命令が出されました。アメリカの市民権制度の根幹を揺るがす動きに、司法が強いブレーキをかけた形です。
- シアトルの連邦地裁が大統領令の全国適用を一時差し止め
- 判事は大統領令を「明白に違憲」と批判
- 少なくとも14日間は施行が停止される見通し
- 複数の州と移民支援団体が全米各地で提訴
「これほど明白な違憲問題はない」連邦判事が指摘
一時差し止め命令を出したのは、シアトルの連邦地裁で上級判事を務めるジョン・コーフナウアー氏です。同判事は、トランプ大統領の大統領令が発効するのを全国レベルで一時的に止める仮処分を認めました。
コーフナウアー判事は法廷で「裁判官として40年以上ベンチに座ってきたが、ここまで問いが明快な事件は他に思い出せない。これは明白に違憲な大統領令だ」と述べました。さらに、「率直に言って、これが合憲だと言い切れる弁護士がいること自体、理解に苦しむ」と、政府側の主張を厳しく批判しました。
今回の仮処分により、大統領令は今後少なくとも14日間、効力を持たない状態となります。その間に、ワシントン州をはじめ各地で起こされている複数の訴訟が審理される見通しです。
出生地主義を狙い撃ちするトランプ大統領令
今回の大統領令の焦点になっているのが、アメリカの市民権ルールとして長年定着してきた「出生地主義」です。これは、合衆国の領土内で生まれた人には、原則として自動的に合衆国市民権を与えるという考え方です。
米憲法修正第14条は「合衆国で生まれ、または帰化したすべての人は、合衆国の市民である」と定めており、100年以上にわたる判例が、国内で生まれた人びとに市民権を認めてきたとされています。
しかしトランプ大統領の大統領令は、この理解を根本から見直そうとするものです。大統領令は、親が合衆国市民でも永住権保持者でもなく、母親が不法滞在中に出産した子どもについては、政府がパスポートなどの公的書類を発行しないと定めています。さらに、母親が合法的に滞在していても一時的なビザで入国している場合は同様に扱うとされています。
大統領令は、修正第14条が「常に」、不法滞在中の人の子どもを市民権付与の対象から除外してきたと主張します。その論拠として、「親が他国の権力に服している子どもは、合衆国の管轄に服しているとは言えない」とし、「合衆国内で生まれたという事実だけでは市民権は与えられない」とする法務省の見解が法廷に提出されています。
ワシントン州のニック・ブラウン司法長官は、裁判所への提出書面で、この大統領令により「全米で年間約15万人、ワシントン州だけでも約4千人の新生児が市民権を奪われる」と指摘しました。
州と移民団体が一斉に提訴、全米で広がる法廷闘争
ブラウン司法長官は、大統領令が発表された翌日の火曜日、トランプ政権を相手取り提訴に踏み切りました。記者会見で同氏は、大統領令を「違憲で、アメリカらしさに反し、残酷なものだ。アメリカ人であることの意味を勝手に書き換えようとする試みだ」と批判しました。
ワシントン州の訴訟には、オレゴン州、イリノイ州、アリゾナ州も加わっています。地元紙シアトル・タイムズによると、これとは別に18の州がマサチューセッツ州の連邦地裁に類似の訴えを起こし、複数の移民支援団体もニューハンプシャー州の連邦地裁で政権を提訴しました。
一方、トランプ政権側は、州には訴える資格がないと反論しています。連邦司法省の弁護士は、「合衆国で出生したという事実だけでは、自動的に市民権を得る権利は生じない」と主張し、非居住外国人の子どもは他国の権力に服しているため、合衆国の管轄には該当しないとする歴史的な証拠があるとしています。
市民権をめぐる法廷闘争は始まったばかりですが、誰を「アメリカ人」とみなすのかという根源的な問いが、いま改めて突きつけられています。今後の裁判の行方が、アメリカの移民政策と社会の在り方に大きな影響を与える可能性があります。
Reference(s):
cgtn.com








