米ロが関係改善とウクライナ紛争終結で合意 サウジで高官協議
リード:サウジアラビアで開かれた米ロ高官協議で、ウクライナ紛争の終結に向けた協力と二国間関係の改善で合意しました。バイデン政権期とは異なるアプローチに、欧州とウクライナが揺れています。
サウジで米ロ高官が初の本格対話
サウジアラビアの首都リヤドで、ロシアと米国の高官による4時間半に及ぶ協議が行われました。ロシア側はセルゲイ・ラブロフ外相と大統領外交顧問ユーリ・ウシャコフ氏、米国側はマルコ・ルビオ国務長官、マイク・ウォルツ大統領補佐官(国家安全保障担当)、中東担当特使スティーブ・ウィトコフ氏が出席しました。
ウィトコフ氏は協議を「前向きで、明るく、建設的」と評価し、ウシャコフ氏も「取り上げたい全ての議題を非常に真剣に議論した」と述べました。ラブロフ外相も会見で「非常に有益だった」と語り、ロシアとしてNATO軍のウクライナ派遣は受け入れられないとの立場を改めて強調しました。
合意内容:ウクライナ紛争と二国間関係
米国務省の声明によると、両国は主に次の3点で合意しました。
- 二国間関係の「刺激要因」を処理するための協議メカニズムを新設し、互いの大使館など外交代表部が「正常に機能」できる環境を整えること。
- ウクライナ紛争を「できるだけ早く、持続可能で、すべての当事者に受け入れ可能な形」で終結させる道筋を検討するため、高位の担当チームを双方で任命すること。
- ウクライナ紛争の「成功裏の終結」後に生まれるとされる地政学的課題や経済・投資の機会について、今後の協力の土台を築くこと。
双方は「互いの利益を考慮しつつ二国間関係を発展させる」ことでも一致し、凍結状態だった米ロ関係を再び動かそうとする意思を示しました。
トランプ政権の「リセット」 バイデン期からの転換
今回の会談は、今年1月にドナルド・トランプ氏が米大統領に就任して以来、冷え込んでいたとされる米ロ関係に変化が生じている最新のサインと受け止められています。
ロシア・ウクライナの大規模な武力衝突が始まった後、ジョー・バイデン政権の米政府は欧州と足並みをそろえ、軍事支援と対ロ制裁でウクライナを全面的に支える姿勢を取ってきました。このときの合言葉が「ウクライナ抜きのウクライナ協議はない(nothing about Ukraine without Ukraine)」でした。
一方、現在のトランプ政権は、前政権から引き継いだ対ロ政策を見直し、「緊張した関係をリセットしようとしている」と米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは社説で評しています。
電話会談と「第三国会談」構想
リヤド会談の約1週間前には、トランプ大統領とロシアのプーチン大統領が約1時間半にわたり電話会談を行い、プーチン氏はトランプ氏をモスクワに招待しました。クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官によれば、両首脳は「第三国での実務会談を調整し速やかに開催する」ことで認識を共有しました。
トランプ大統領も、この電話会談を「長く、非常に生産的だった」と振り返り、ウクライナ危機の解決策を中心に協議したと明らかにしています。
さらにラブロフ外相とルビオ国務長官も電話で定期的な連絡を続けることで合意し、「前政権から受け継いだ一方的な障害」を取り除き、貿易や投資などの「互恵的な協力」を妨げないようにする方針を確認しました。
欧州とウクライナの複雑な反応
ただし、今回の米ロ接近は必ずしも歓迎一色ではありません。特に、協議の場から欧州とウクライナが外されたことが、大きな波紋を広げています。
米国がロシアとの直接対話を進める一方で、欧州との防衛協力をめぐる認識のずれも表面化しています。ワシントンは、欧州諸国の防衛費負担が十分ではないと繰り返し不満を示してきました。
先週開かれた北大西洋条約機構(NATO)国防相会合で、ピート・ヘグセット米国防長官は「米国は、依存を助長するような不均衡な関係をこれ以上容認しない」と述べ、欧州に対し「自らの安全保障は自らの責任で」と迫りました。
「欧州とウクライナ抜き」は許されるか
米ロ会談の前夜、パリでは緊急の欧州首脳会議が開かれ、十数カ国の首脳がウクライナ支援継続へのコミットメントを改めて表明しました。それでも、米ロが欧州抜きで協議を進める構図に不満を示す声は収まりません。
オランダのルーベン・ブレケルマンス国防相はSNS「X」で、「ウクライナ抜きのウクライナ交渉はあり得ない。欧州についても同様だ。欧州は交渉に関与しなければならない」と投稿し、牽制しました。
トルコ訪問中のウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領も、リヤドでの米ロ会談について「メディア報道で知った」と述べ、「背後で交渉を進めるべきではない」と強調。予定していたサウジ訪問を取りやめると発表しました。
ゼレンスキー大統領はこれまでも、ウクライナが参加しない米ロ協議には加わらず、ウクライナ抜きで決められた合意は受け入れないと繰り返し表明してきました。
米ロ接近はウクライナに和平をもたらすのか
今回の合意で、米ロがウクライナ紛争終結に向けた「道筋作り」を高官レベルで進めることになったのは大きな一歩です。しかし、その過程にウクライナや欧州がどのような形で関与するのかは依然として不透明です。
特に注目されるのは、次のような点です。
- ウクライナ不在の協議が、実際に停戦や和平合意につながるのか、それともかえって不信を深めるのか。
- NATO内の結束が、米国の対ロ接近と欧州の警戒心の間でどのように揺れるのか。
- 米ロが経済・投資協力の「機会」をどこまで具体化させるのか。
トランプ大統領は「ウクライナ指導部は、そもそも紛争を始めるべきではなく、3年前に終わらせるべきだった」と繰り返し批判しており、ウクライナ側の責任を重く見る発言を続けています。この認識の違いが、今後の仲介努力にどう影響するかも焦点となりそうです。
読者にとってのポイント
今回の動きをどう理解すべきか、考えるヒントとして次の問いを挙げてみます。
- 「当事者抜き」の和平構想は、正当性や持続性を持ちうるのでしょうか。
- 米国が欧州により大きな防衛負担を求めることで、NATOの安全保障のあり方はどう変わるでしょうか。
- ウクライナ紛争後の「経済・投資機会」に期待を寄せる発想は、和平プロセスにどのような影響を与えるでしょうか。
ウクライナ紛争の行方だけでなく、米ロ関係、米欧関係、そして欧州の安全保障の枠組みそのものが、いま大きな転換点に立っているのかもしれません。
Reference(s):
U.S., Russia agree to improve ties, work on ending Ukraine conflict
cgtn.com








