トランプ政権、移民の子ども約2万6000人への法律支援を停止
米トランプ政権が、拘束中の移民の子ども約2万6000人に弁護士を提供してきた法律支援プログラムを停止したと、米紙ロサンゼルス・タイムズが報じました。読み書きもおぼつかない年齢の子どもたちが、法的な助けなしに国外退去処分に直面することへの懸念が高まっています。
何が起きているのか
報道によると、支援が打ち切られたのは、米保健福祉省の難民再定住局(Office of Refugee Resettlement、ORR)の管理下にある、あるいは過去にあった移民の子どもたちに弁護士を手配していた連邦資金によるプログラムです。これまでに支援を受けた子どもは、全米でほぼ2万6000人にのぼり、そのうち約4000人はカリフォルニア州に住んでいるとされています。
多くの子どもは、米国内に親や法的な保護者がいない状態で、国外退去の手続きに直面しています。子どもによっては、まだ文字を読めなかったり、十分に話すことも難しい年齢であるにもかかわらず、複雑な移民裁判に向き合わざるを得ません。
突然止められた法律支援プログラム
このプログラムを調整していたのが、アカシア・センター・フォー・ジャスティスという団体で、連邦政府からの資金で弁護士費用などを賄ってきました。しかし、内務省が火曜日に同団体に対し業務停止を命じ、事実上プログラムがストップしました。
内務省は、契約に関する規則を理由として挙げたものの、なぜこのタイミングで停止するのかといった具体的な説明は示していないとされています。そのため、現場の弁護士や支援団体からは、政治的な判断ではないかとの見方も出ています。
法律支援が打ち切られる子どもたち
支援対象になっていたのは、拘束施設やシェルターなどで保護されている、いわゆる単独渡航の未成年(保護者のいない子ども)たちです。彼らは、難民再定住局の管理下に置かれた後、移民裁判所での手続きに進みます。
- 対象はおよそ2万6000人の子ども
- このうち約4000人はカリフォルニア州在住
- 一部の子どもは、まだ読み書きや会話がほとんどできない年齢
- 多くは米国内に親や保護者がいない状態
これまでは、こうした子どもたちに弁護士を付け、手続きの説明や主張の整理、必要な書類作成などをサポートしてきました。プログラムの停止により、今後は裁判所に一人で出廷し、自分の権利や選択肢を十分に理解しないまま、重大な決定を迫られるリスクが高まります。
トランプ政権の移民政策との関係
ロサンゼルス・タイムズは、トランプ政権が就任以来、拘束された移民を支える仕組みを弱めようとしてきたと指摘しています。今回の法律支援停止も、その流れの一環と位置づけられています。
政権内には、億万長者の側近イーロン・マスク氏が関わるとされる行政改革の助言グループ、政府効率省(Department of Government Efficiency)が存在し、このグループが政府機関の職員削減や、政権の方針に合わないとされるプログラムの廃止を進めていると報じられています。今回の決定も、効率化やコスト削減を名目とした見直しの一部とみられます。
2008年制定の法律と特別な保護
未成年の移民保護の枠組みは、2008年に成立した人身取引被害者保護法(Trafficking Victims Protection Act)によって整えられてきました。この法律は、単独で米国に到着した未成年に対し、特別な保護を与えることを定めています。
同法は、国外退去手続きに入った子どもたちについて、政府が法律代理人を見つける手助けをするべきだとしています。ただし、すべての子どもに弁護士をつけることは義務ではなく、実際には法律支援の有無に大きな差がありました。そのギャップを埋めてきたのが、今回停止されたような連邦資金による支援プログラムでした。
現場からの声: 子どもが背負う大人並みの重圧
子どものための法律支援団体「キッズ・イン・ニード・オブ・ディフェンス」で政策・アドボカシー担当副代表を務めるジェニファー・ポドクル氏は、子どもたちが置かれている状況を次のように語っています。
「ごく幼い子どもたちが、非常に重い結果を伴う、大人のような状況に突然放り込まれているのです」とポドクル氏は述べ、移民裁判で現在弁護士がついている子どもはおよそ半数にとどまると指摘しました。
弁護士や専門家たちは、法律支援がなければ、子どもが制度の中に取り残されたり、所在不明になったりし、手続きそのものが滞るおそれがあると警告しています。単なる「コスト削減」の問題にとどまらず、司法制度全体の機能にも影響が及びかねません。
支援団体のジレンマ: 法的義務と政府命令のはざまで
テキサス州を拠点とする支援団体エストレージャ・デル・パソの事務局長、メリッサ・L・ロペス氏は、今回の停止命令を受けても、推定2000人の子どもたちの支援を続ける考えを示しました。同団体もプログラムから資金提供を受けてきました。
ロペス氏は「私たちには、クライアントのために行動する法的かつ倫理的な義務があります」と語り、資金が止まっても可能な限り支援を続けると強調しました。
同団体はこれまで、シェルターで子どもたちに対し、自分の権利や手続きについて説明する法的プレゼンテーションも行ってきましたが、現在はそれも禁じられているといいます。「子どもたちは、何の説明も受けないまま、一人で裁判所に行くことを求められることになるでしょう」とロペス氏は危機感をあらわにしています。
私たちが考えたい3つの問い
今回の動きは米国の内政問題である一方で、グローバルな視点で見れば、民主社会における子どもの権利と法の支配をどう守るのかという問いを突きつけています。日本に暮らす私たちにとっても、決して無関係ではありません。
- 国境を越えてやってきた子どもに対し、国家はどこまで保護責任を負うべきか
- 政府の効率化や財政削減と、人権保障や司法アクセスをどう両立させるか
- 複雑な法的手続きは、大人だけでなく子どもの目線から見て十分に「分かりやすい」と言えるか
移民政策をめぐる議論は、とかく賛否が激しく対立しがちです。しかし、今回のように最も弱い立場にある子どもたちに、どのような支援が提供されるべきかを起点に考えると、見えてくるものも変わってきます。今後、法律支援の行方や、子どもたちの裁判手続きがどのように進んでいくのか、引き続き注目が集まりそうです。
Reference(s):
Trump admin halts legal aid program for 26,000 immigrant children
cgtn.com








