トランプ政権、連邦職員に大規模レイオフ指示 マスク氏が内閣で1兆ドル削減を提案
米国のトランプ政権が、連邦政府職員の大規模なレイオフに向けてさらに踏み込みつつあります。新たなメモで各省庁に「大幅な人員削減」の計画提出を命じる一方、イーロン・マスク氏が内閣会合の場で1兆ドル規模の予算削減目標を披露しました。本記事では、この国際ニュースのポイントを日本語で整理します。
新メモで「大幅な人員削減」を指示
トランプ米大統領の政権は、最近出したメモで、すべての連邦政府機関に対し、2026年3月13日までに「大幅な人員削減」を含む計画を提出するよう求めました。対象となるのは、すでに度重なるレイオフや事業縮小に揺れている連邦職員です。
メモが特に重視しているのは、トランプ氏とイーロン・マスク氏が進める、連邦政府のスリム化方針です。マスク氏の側近を中心に運営されるとされる新組織「政府効率省(Department of Government Efficiency、略称DOGE)」は、これまでも各省庁の事業と人員の削減を主導してきました。
これまでのレイオフの中心は、採用から日が浅く、身分保障の弱い試用期間中の職員でした。しかし今回の方針転換により、今後ははるかに多いベテランの公務員層にも削減の矛先が向かうとみられます。
- 連邦政府の文官職員:約230万人
- これまでに解雇や早期退職優遇の対象になった職員:約10万人
- 今後は「ベテラン公務員」も本格的な対象に
EPAや内務省でも大幅削減案 最大65%カットも
内閣会合の場で、トランプ氏は環境保護庁(EPA)のリー・ゼルディン長官が、1万5,000人を超える職員の最大65%削減を検討していると明らかにしました。
また、ロイター通信に語った内務省関係者によると、米魚類野生生物局やインディアン問題局などの局でも、最大40%の人員削減を想定した準備を進めるよう指示が出ているといいます。環境保護や先住民政策といった分野を支える現場が大きく揺らぐ可能性があります。
マスク氏、内閣会合で「1兆ドル削減」をアピール
今回の内閣会合では、マスク氏が主役級の扱いを受けました。テスラやスペースXの最高経営責任者として知られるマスク氏は、閣僚の前で、連邦予算6.7兆ドルのうち1兆ドルを今年中に削減できると自信を示しました。
マスク氏は正式な閣僚ではなく、上院の承認も受けていません。トランプ氏は、マスク氏がDOGEを率いていると繰り返し語ってきましたが、ホワイトハウスは裁判所への提出書類で、マスク氏はDOGEに対する公式な権限を持たないと説明しています。それでもトランプ氏は、今回マスク氏を内閣の場に招き入れ、その方針をあらためて後押ししました。
会合後、トランプ氏は大統領令に署名し、各機関に対してDOGEと協力して「不要」と判断される契約を見直し・終了させること、政府不動産を管理する一般調達局(GSA)に対しては、不要な資産の売却計画を策定することを命じました。
支出はむしろ増加 歳出削減は道半ば
一方で、こうした大ナタにもかかわらず、政府支出の伸びは鈍っていません。ロイターの分析によると、トランプ氏の就任直後1か月間の政府支出は、前年同時期と比べて13%増加しました。
その主因とされるのは、国債残高の増加に伴う利払いの増加、そして高齢化に伴ってふくらむ医療・年金関連の費用です。現在、米国の政府債務残高は36兆ドル規模に達しているとされています。
トランプ氏は一貫して、人気の高い医療・年金給付には手を付けないと約束しており、これらは予算全体のほぼ半分を占めています。「そこには触らない」とトランプ氏はあらためて述べました。
2017年減税の延長と社会保障削減案
その一方でトランプ氏は、2017年に導入された減税措置の延長を議会に求めています。この減税は2025年末に期限を迎える予定で、期限まで残された時間は多くありません。
超党派の財政監視団体「責任ある連邦予算委員会」による試算では、2017年の減税はこれまでに2.5兆ドルの債務増加要因になったとされています。さらに、この減税を今後10年間延長すると、5兆ドル超の追加コストが発生する可能性があると見積もられています。
報道によれば、共和党内では、こうした減税の財源を確保するため、低所得者向けの医療保険や食料支援プログラムの削減案が検討されていますが、具体策はまだ示されていません。
「成果報告メール」に回答しない職員は解雇のリスクも
今回の一連の動きの象徴となったのが、週末に多くの連邦職員に届いた1通のメールです。マスク氏の名で送られたとされるこのメールは、職員に対し、その週に達成した業務成果を列挙するよう求めるもので、無視した場合は解雇になる可能性があると警告していました。
マスク氏は内閣会合で、このメールは「政府からの給与が、本当に働いている人に支払われているかを確かめるため」だと説明しました。トランプ氏は、約100万人とされる未回答の職員について、職を失うリスクがあるとの見方も示しました。
職員の業務を「数日単位」で可視化し、応答しない人をふるい落とすやり方は、民間のテクノロジー企業では珍しくありません。しかし、公務部門で同じ手法を適用した場合、長期的な政策立案や地道な調整業務が評価されにくくなる懸念も出ています。
効率か公共サービスか 問われる優先順位
トランプ政権とマスク氏が進める連邦政府のスリム化は、米国内だけでなく、世界経済や国際協調にも影響を与えうるテーマです。環境規制、エネルギー、安全保障、金融監督など、連邦政府が担う分野は多岐にわたります。
日本企業や投資家にとっても、アメリカの規制当局の人員や予算が大きく変われば、事業許認可のスピードやルール形成のプロセスに影響が出る可能性があります。国際ニュースとしてこの動きをフォローすることは、日本の読者にとっても重要だと言えるでしょう。
「効率性」を掲げて政府を小さくしようとする動きと、社会保障や公共サービスを維持しようとする圧力は、しばしば同じ予算の中で競合します。今回のトランプ政権のレイオフと予算削減の動きは、どこまでが本当に「無駄」の削減で、どこからが将来世代へのツケ回しになるのか──私たち自身の社会のあり方を考えるヒントにもなりそうです。
Reference(s):
Trump orders more layoffs, Musk touts cuts at cabinet meeting
cgtn.com








