トランプ大統領とゼレンスキー氏が激論 米ウクライナ鉱物協定の署名式が中止に
今週金曜日、ワシントンのホワイトハウスで予定されていた米ウクライナ「鉱物協定」の署名式が、直前の激しい口論を受けて中止となりました。ロシアとの3年にわたる紛争をめぐり、ドナルド・トランプ米大統領とウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー氏の対立が世界に生中継された形で、米ウクライナ関係と西側の結束に新たな疑問符がついています。
ホワイトハウスで何が起きたのか
米メディアによると、金曜日にホワイトハウスで開かれる予定だった記者会見では、本来であればトランプ大統領とゼレンスキー氏が米ウクライナ間の鉱物協定に署名し、経済協力の強化をアピールするはずでした。しかし、その前に行われた大統領執務室での会談が一転、激しい言い合いの場となり、署名式自体がキャンセルされました。
この鉱物協定は、ウクライナに豊富に存在する資源の開発や供給をめぐり、米国との連携を深める狙いがあったとされています。エネルギー安全保障やハイテク産業に欠かせない資源をめぐる国際ニュースとしても注目されていましたが、政治的対立がその象徴的な場を飲み込んだ形です。
バンス副大統領の「感謝」要求から一気にヒートアップ
会談冒頭は、メディア向けの短い撮影と質疑(いわゆるプール取材)で穏やかに進むはずでした。しかし、同席していたJD・バンス米副大統領が発言したことで空気が一変します。バンス氏はゼレンスキー氏に対し、ロシアとの3年にわたる紛争の終結に向けたトランプ氏の取り組みに「感謝すべきだ」と強く求めました。
この発言をきっかけに、トランプ氏、バンス氏、ゼレンスキー氏が互いに声を重ねる形で言い合いになり、その様子はテレビでそのまま中継されました。ゼレンスキー氏は、ウクライナとロシアの紛争の影響を「将来、米国自身も感じることになる」と反論。これに対しトランプ氏は、ゼレンスキー氏は「われわれが何を感じるかを決める立場にない」と語気を強め、「自らを非常に悪い状況に置いてしまった」と批判しました。
「カード」と「ギャンブル」が象徴する温度差
口論の中でトランプ氏は「あなたは今、交渉のカードを持っていない。米国と組むことで初めてカードを持てるようになる」と発言。これに対してゼレンスキー氏は「私はカードゲームをしているわけではない」と応じたと伝えられています。
さらにトランプ氏は、ゼレンスキー氏の姿勢を「数百万人の命を賭けたギャンブルだ」と厳しく非難しました。「あなたは第3次世界大戦を賭けにしている。それはこの国に対して非常に失礼だ」と繰り返し述べ、戦争拡大のリスクを強調しました。安全保障を「カード」や「ギャンブル」にたとえる発言は、戦争の現場にいる側と、支援を行う側の温度差を象徴しているとも言えます。
会談後、それぞれのメッセージ
険悪なムードのまま会談は終わり、予定されていた鉱物協定の署名式は中止に。トランプ氏はその後、記者団に対し、ゼレンスキー氏は「平和を望んでいる人物には見えなかった」と語り、「会談は『うまくいった』とは言い難い」「彼は自分の手札を過大評価した」と不満をあらわにしました。
一方のゼレンスキー氏は、X(旧ツイッター)に「大統領、議会、そして米国の人々に感謝する。ウクライナには公正で持続的な平和が必要であり、私たちはまさにそのために取り組んでいる」と投稿し、米国の支援そのものへの謝意を改めて示しました。
米テレビ局のインタビューでは、ゼレンスキー氏は対米関係について「2人の大統領以上のものだ」と述べ、トランプ政権との関係がぎくしゃくしても、国と国とのつながりは修復可能だとの見方を示しました。同時に、より大きく強力なロシア軍と戦う上で、「米国の支援なしでは難しい」と、引き続きワシントンの支援が不可欠だとも訴えています。
ゼレンスキー氏は、ロンドンで日曜日に開かれる会合に出席する予定で、英国のキア・スターマー首相のほか、イタリア、ドイツ、ポーランドなど欧州の首脳と顔を合わせる見通しです。ワシントンでの緊張した会談を受け、欧州側との連携を改めて固められるかが焦点となります。
欧州首脳が一斉にゼレンスキー氏を擁護
ホワイトハウスでのやり取りが伝えられると、欧州の指導者たちは相次いでゼレンスキー氏への支持を表明しました。欧州議会のロベルタ・メツォラ議長はXで「あなたの尊厳はウクライナの人々の勇気を称えるものだ。強く、勇敢で、恐れないで。あなたは決して一人ではない」と投稿し、「公正で持続的な平和」に向け共に歩む姿勢を強調しました。
ドイツのオラフ・ショルツ首相も「誰よりも平和を望んでいるのはウクライナの人々だ」と指摘し、「ウクライナはドイツと欧州を頼ることができる」とメッセージを送りました。フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、ロシアへの制裁とウクライナ支援を続ける決断は「正しかった」と述べ、戦闘が始まって以来戦い続けてきた人々への敬意を呼びかけました。
ポーランドのドナルド・トゥスク首相は「親愛なるウクライナの友人たち、あなたがたは一人ではない」とツイートし、スロベニアのナターシャ・ピルツ・ムサル大統領も、国際法と外交の原則への尊重を改めて表明。「きょう大統領執務室で目にしたものは、これらの価値を損なうものだ」とし、「欧州が国際法と国連憲章、公平さ、そして何より礼節を尊重しながら、平和への道を主導すべき時だ」と訴えました。
欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長や欧州理事会のアントニオ・コスタ議長、アイルランド、リトアニア、モルドバ、ノルウェー、スペインなどの首脳も、同様にウクライナの主権への支持と連帯を発信しています。ワシントンでの対立をきっかけに、欧州側の「結束メッセージ」が一気に噴き出した形です。
ホワイトハウス会談が映し出した「西側の信頼危機」
中国・遼寧大学の崔征・副所長(研究センター副主任・准教授)は、中国のテレビ局へのコメントで、今回の会談を「現在の国際政治の変化を映し出す縮図」と表現しています。崔氏によれば、トランプ氏によるロシア・ウクライナ紛争解決のための戦略は、ウクライナ側を深く失望させ、ゼレンスキー氏からは「ロシアへの譲歩」と受け止められたとされます。
金曜日の会談が激しい口論に発展し、ゼレンスキー氏が大統領執務室を後にする事態となったことは、単なる個人的な感情のもつれではなく、「ロシア・ウクライナ問題をめぐる米国とウクライナの大きな立場の違い」そして「西側内部の信頼危機」を浮き彫りにしたものだと崔氏は見ています。欧州と米国の間で、対ロシア政策や安全保障の主導権をめぐる見方のズレが深まっている、という指摘です。
崔氏はまた、米国がことし2月に欧州の同盟国を迂回してロシアと2度直接交渉したことが、欧州の深い不安と不満を呼び起こしたとも指摘します。自らの安全保障に関する意思決定の主導権を失いつつあるのではないか、という欧州側の懸念が、今回のトランプ氏とゼレンスキー氏の口論にも反映されているという見立てです。
日本とアジアから見る今回の国際ニュース
今回のホワイトハウス会談は、戦争そのものの行方だけでなく、「誰が安全保障のゲームのルールを決めるのか」という、西側内部の力学を浮き彫りにしました。日本やアジアの読者にとっても、以下の点で無関係とは言えません。
- 米国と欧州の間で対ロシア政策への温度差が広がれば、制裁やエネルギー市場の見通しにも影響し、世界経済の不確実性が増す可能性があります。
- ウクライナ支援の枠組みが揺らげば、「力による現状変更」をめぐる国際社会の抑止力が試されることになり、アジアの安全保障環境にも間接的な影響を与え得ます。
- 一方で、欧州諸国が国際法や国連憲章を重視し、独自に「平和への道」を模索しようとしている姿勢は、多極化する国際秩序の一つの流れとして注目されます。
トランプ政権とゼレンスキー氏の関係が今後どのような軌道をたどるのか、そして欧州がどこまで主体的な役割を果たせるのか。ウクライナの戦況と合わせて、2025年の国際ニュースを読み解く上で重要なポイントになりそうです。
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Reference(s):
Trump, Zelenskyy cancel minerals deal signing after heated spat
cgtn.com








