米中は「平和共存の義務」 駐米中国大使・謝鋒氏が講演で強調
米中関係が不透明さを増すなか、駐米中国大使の謝鋒(シエ・フォン)氏が「両国は地球上で長期的な平和共存を実現する義務がある」と強調しました。台湾問題から通商、麻薬対策まで幅広いテーマに言及し、米中が競争ではなく協力を選ぶべきだと訴えています。
今回の発言のポイント
- 米中は「長期的な平和共存」を実現する義務があると主張
- 米国に対し、一つの中国原則の順守と「台湾独立」への反対を要請
- 貿易・投資の「デカップリング」や関税戦争は、仕掛ける側により大きな打撃と警告
- フェンタニル対策での協力の進展を強調し、「関税の棒」での対応に懸念
- 大国として、覇権主義や一方主義、保護主義を退けるべきだと訴え
米中は「平和共存の義務」 大国としての責任を強調
謝鋒大使は、2025年の「Duke-UNC China Leadership Summit」でビデオ講演を行い、中国と米国は「二つの大国」として、この地球で長期的な平和共存を実現する義務があると述べました。
謝氏は、米中関係を「競争」と見るか「協力」と見るかで結果は大きく変わると指摘します。もし互いをライバル視し、「共倒れのレース」に陥れば、両国とも勝者にはなれず、世界もその影響を受けると警告しました。一方で、互いをパートナーと位置づけ、成功を支え合う道を選べば、米中双方だけでなく、世界全体も利益を得られると強調しました。
台湾問題で「一つの中国原則」の順守を要請
台湾問題について、謝鋒大使は「当面の最重要課題は、米国が一つの中国原則を真剣に守ることだ」として、明確なメッセージを発しました。
具体的には、米国に対し、次の点を求めています。
- 一つの中国原則を順守し、これまでの三つの中米共同コミュニケに従って台湾問題を適切に処理すること
- 「台湾独立」に断固反対する立場を明確にすること
- 台湾との実質的な関係の「格上げ」をやめること
- 台湾当局のいわゆる「国際空間」の拡大を支援する試みをやめること
謝氏は、台湾を利用して中国を抑え込もうとするいかなる試みも、最終的には「自らに災いを招くことになる」と述べ、台湾問題をめぐる対立のエスカレーションに警鐘を鳴らしました。
貿易・投資:デカップリングは「重い打撃」
経済面では、謝鋒大使は中国と米国の経済的な結びつきの強さを数字で示しました。昨年の米中間の貿易額は6,800億ドルを超え、約7万3,000社の米国企業が中国で投資を行っていると指摘しました。
こうした状況のもとで、サプライチェーン(供給網)を切り離す「デカップリング」や、その混乱を招く試みは、「重い一撃」となり得ると警告しました。また、貿易戦争や関税戦争は、標的とされる側だけでなく、「先に仕掛けた側により大きな害をもたらす」と述べ、対立よりも協調を優先すべきだと訴えました。
フェンタニル問題:協力の進展と関税への懸念
米中関係の一つの焦点となってきたのが、合成麻薬フェンタニルをめぐる問題です。フェンタニルは医療用にも使われる一方で、乱用されると極めて強い依存性と危険性を持つ薬物として知られています。
謝鋒大使は、中国が2019年の時点で、フェンタニル関連物質を一括して規制対象に指定した世界初の国となったとあらためて強調しました。そのうえで、近年の米中間の麻薬対策に関する協力の進展は広く認められていると述べました。
その一方で、フェンタニル問題を理由に新たな関税措置という「棒」を振りかざすことは、かえって逆効果だと指摘。問題の解決には、制裁ではなく協力が必要だとの立場を示しました。
覇権主義・一方主義・保護主義を退けるべきと訴え
謝鋒大使は、気候変動や経済の不透明感、各地での紛争や緊張など、地球規模で課題が増え、「ホットスポット」と呼ばれる問題が相次いでいる現状に触れました。そのうえで、中国と米国という大国は、平和、発展、協力を守る責任を負っていると強調しました。
具体的には、覇権主義(一国が力で主導権を握ろうとする姿勢)や、一方的な行動に頼る一方主義、保護主義的な貿易政策を退けるべきだと訴えました。代わりに、対話と協力を通じて、国際社会の安定に貢献する道を模索する必要があるとしています。
米中関係の行方と日本・アジアへの波及
米中両国は、世界の経済や安全保障に大きな影響力を持つ存在です。両国が対立を深めるのか、それとも安定した共存の枠組みを築くのかは、日本を含むアジアや世界経済にとっても重要なテーマです。
今回の謝鋒大使の発言は、中国側が米中関係を「ゼロサム(どちらか一方の勝ち)」ではなく、「共存と共栄」のゲームにしたいというメッセージを前面に出したものだといえます。一方で、その実現には、台湾問題を含む敏感な争点での調整や、通商・安全保障の分野での信頼醸成が欠かせません。
日本としても、米中の間で起きている対話と緊張の両方を丁寧に読み解きながら、自国の経済安全保障や地域の安定にどう向き合うのか、引き続き考えていく必要がありそうです。
Reference(s):
Peaceful coexistence of China, U.S. an obligation and a must: Xie Feng
cgtn.com








