ゼレンスキー「保証なき停戦は失敗」 欧米の休戦案と何が違うのか
ウクライナのゼレンスキー大統領が「保証なき停戦は失敗になる」と強調し、欧米が模索する休戦案との温度差が浮き彫りになっています。本記事では、その発言の背景と欧米側の思惑を整理します。
この記事のポイント
- ゼレンスキー大統領は、安全保障の保証がない停戦は長続きしないと警告
- フランスと英国は、空・海・エネルギー分野での1カ月休戦案を提示
- 米ホワイトハウスでの会談は緊迫し、鉱物資源をめぐる暫定合意は見送りに
- EUは、ウクライナ支援と欧州の安全保障保証を協議する臨時首脳会議を3月6日に予定していました
ロンドン会談で示された「停戦では不十分」という立場
ゼレンスキー大統領は、ロンドンで欧州各国の首脳と会談した後の記者会見で、単なる停戦ではロシアによる侵攻は終わらないとの見方を示しました。停戦だけでは「十分ではない」として、安全保障上の具体的な保証が不可欠だと訴えています。
大統領は出発前、記者団に対し「ウクライナが真剣な安全保障の保証もないまま停戦を強いられれば、それはすべての人にとって失敗になる」と述べました。ロシア側が合意を破る可能性が高く、その場合、ウクライナは再び反撃を余儀なくされると予測しています。
一方で、今回の協議自体については「非常に力強いスタート」だと評価し、今後数週間の交渉を通じて「より実行可能な計画」と「ウクライナの安全保障の保証がどのような姿になり得るのか、より明確な理解」が得られるとの見通しも示しました。
仏英の「1カ月休戦」構想と英国の距離感
ロンドンでの危機対応サミット後、フランスのマクロン大統領は、フランスと英国がウクライナでの1カ月の休戦を提案していると述べました。この案は、空と海、そしてエネルギー関連インフラへの攻撃を対象とするもので、当初は地上戦には適用しないとされています。
しかし翌月曜日、英国のルーク・ポラード軍務相は、マクロン大統領の発言について「現時点で政府として認識している計画ではない」と述べ、距離を置く姿勢もにじませました。ポラード氏はBBCに対し、現在、英国とフランス、そのほかの同盟国の間で複数の選択肢が非公開で協議されており、個々の案についてコメントするのは適切でないと説明しました。
キア・スターマー氏も、欧州の指導者たちがウクライナ和平案を取りまとめ、米国側に提示することで合意したと明らかにしましたが、具体的な中身には踏み込みませんでした。
ゼレンスキーが求める「安全保障の保証」とは
ゼレンスキー大統領が繰り返し強調するのは、停戦そのものよりも、その後の安全をどう確保するかという点です。一般に、安全保障の保証には、同盟国による軍事支援の明文化、監視メカニズムの導入、重要インフラ防護への協力など、さまざまな形が考えられます。
大統領は、保証のない停戦はロシア側に体勢を立て直す時間を与え、戦闘の再燃を招きかねないと見ています。短期的には、空爆やインフラ攻撃を止めることは市民の安全に直結しますが、中長期的な抑止力が伴わなければ「持続可能な和平」とは言えない、という問題意識がにじみます。
ホワイトハウスでの緊迫した会談とすれ違い
こうした安全保障重視の姿勢は、ワシントンでの米政権とのやり取りでも鮮明になりました。金曜日にホワイトハウスで行われた会談では、トランプ米大統領とヴァンス副大統領が、ゼレンスキー大統領は十分に「感謝していない」うえ、米側が提示する休戦条件を受け入れようとしないと批判したとされています。
これに対しゼレンスキー大統領は、必要なのは停戦そのものではなく、安全保障の保証だと主張しました。会談は緊迫した雰囲気のまま終わり、ウクライナの鉱物資源の権益を共有する暫定協定への署名には至りませんでした。
一部の米共和党幹部からは、ゼレンスキー大統領は辞任すべきだとする声も上がりました。米国家安全保障担当補佐官のマイク・ウォルツ氏はCNNで「我々および最終的にはロシア側と交渉し、この戦争を終わらせることができる指導者が必要だ」と述べています。
「辞任と引き換えのNATO加盟」発言、ロシアの正統性批判
ゼレンスキー大統領は日曜日、現時点で自身を代えることは容易ではないとしつつ、戦禍にあるウクライナが北大西洋条約機構(NATO)に加盟できるのであれば、辞任してもよいとの考えを改めて示しました。
「今の状況、得られている支援を踏まえれば、単に私を交代させることは簡単ではない」とも語り、国内外の支持が依然として自らに集まっているという認識をにじませました。
一方、ロシア側はゼレンスキー大統領の正統性を繰り返し疑問視しています。ロシアは本来ウクライナが2024年に大統領選挙を実施すべきだったと主張し、戦時下で選挙を禁じる戒厳令を理由に選挙を行っていないことを問題視しています。
欧州が模索する「支援」と「保証」の組み合わせ
欧州連合(EU)の首脳らは、ウクライナへの追加支援や欧州の安全保障の保証、さらに欧州防衛の財源確保について協議する臨時首脳会議を、3月6日に開催するとしていました。当時の議論は、停戦の是非だけでなく、戦後も含めた長期的な安全保障の枠組みをどう設計するかに重点が置かれていたとみられます。
ウクライナ側が求めるのは、短期的な攻撃停止ではなく、再侵攻を防ぐための具体的な保証です。一方で欧米諸国には、自らの負担とリスクをどう管理しながら和平への道筋を描くかというジレンマがあります。
「即時停戦」か「持続的な和平」か、私たちへの問い
ゼレンスキー大統領の「保証なき停戦は失敗」という発言は、単に強硬姿勢を示すものではなく、停戦と和平の違いを突きつける問いでもあります。空爆やインフラ攻撃を止めることと、再び戦争が起きない状態をつくることは、必ずしも同じではありません。
どこまでの保証があれば「受け入れ得る停戦」と言えるのか。ウクライナ人の安全と自決を尊重しつつ、欧米や国際社会はどのような役割を果たすべきか。遠く離れた日本にいる私たちにとっても、国際秩序や安全保障のあり方を考え直すきっかけとなるテーマと言えそうです。
Reference(s):
Zelenskyy says ceasefire without guarantees 'will be a failure'
cgtn.com








