ゼレンスキー氏、米国との鉱物資源協定に意欲 和平への道は険しく
ウクライナのゼレンスキー大統領が、米国との鉱物資源協定の署名に前向きな姿勢を示す一方で、ホワイトハウスでの対立や欧州との駆け引きなど、和平に向けた課題が浮き彫りになっています。
ホワイトハウス会談での対立と署名見送り
ゼレンスキー大統領は、米英などが関わる和平案の一環として、ウクライナの豊富な鉱物資源を米国と共同開発する協定に署名するため、金曜日にワシントンを訪問しました。これは紛争後の復興を見据えた、米ウクライナ間の包括的な資源協力の枠組みと位置づけられていました。
しかし、ホワイトハウスの執務室で行われた会談は、テレビ中継されるほど注目を集める中、厳しい雰囲気になりました。トランプ大統領は、3年に及ぶ紛争で米国が行ってきた支援に対し、ウクライナ側はもっと感謝を示すべきだと強い口調で求め、米国の支援がなければウクライナはすでにロシアに征服されていたと主張したとされています。
この応酬の後、ゼレンスキー大統領は予定されていた米ウクライナの共同記者会見を行わないまま車列でホワイトハウスを後にし、鉱物資源協定は最終的に署名されないまま残されました。
鉱物資源協定は何を目指していたのか
今回の鉱物資源協定は、単なる経済協力にとどまらず、停戦や和平プロセスと結びついた政治的な意味合いを持つものでした。合意案では、ウクライナの鉱物資源を共同で開発する代わりに、米国が停戦合意の仲介やウクライナの戦後復興を後押しし、その見返りとして米国側が財政的な利益を得る構図が想定されていました。
一方で、トランプ大統領は、欧州の部隊が停戦監視などの役割を担う可能性が語られる中でも、米軍部隊を和平維持のために投入することには繰り返し慎重な姿勢を示してきました。つまり、米国が軍事的な関与ではなく、経済と外交面で影響力を行使する形で関わろうとする意図がにじんでいます。
NATO加盟から「安全保障保証」へ 専門家が見るウクライナの現実路線
中国社会科学院ロシア・東欧・中央アジア研究所の研究員である趙会栄氏は、国際メディアの取材に対し、ウクライナ側の安全保障戦略の変化を分析しています。
趙氏によれば、ウクライナは長らく北大西洋条約機構(NATO)への加盟を「究極の安全保障」と見なしてきました。しかし、トランプ大統領による「最大限の圧力」戦略の下で、ウクライナは期待値を引き下げざるを得なくなっていると指摘します。
代わりに、キーウは次のような形での安全保障上の保証を模索しているといいます。
- ウクライナ軍兵士や幹部に対する継続的な訓練支援
- 兵器や弾薬の安定的な供給
- ウクライナ国内での兵器生産体制の構築支援
つまり、正式な同盟ではなくても、実質的に軍事能力を強化する支援のパッケージが、安全保障保証の中身として重視されているという見立てです。
欧州も鉱物協力に名乗り 米欧の競争が激化
鉱物資源協定を巡っては、米国だけでなく欧州も大きな関心を示しています。趙氏は、米ウクライナ間の協議における課題として、次の点を挙げています。
- 安全保障保証の中身を巡る米ウクライナ間の認識のずれ
- 欧州各国もウクライナとの鉱物協力に関心を示し、米欧間で競合関係が生じていること
- ウクライナの実際の鉱物埋蔵量に不確実性があり、採掘コストや技術的難易度も高い可能性があること
こうした中、日曜日にロンドンで開かれた首脳会議では、スターマー英首相の主催でウクライナの支援国が集まり、ゼレンスキー大統領への支持を改めて表明しました。多くの欧州首脳が、安全保障への支出拡大や、停戦が成立した場合にそれを守るための「連合」の構築に意欲を示したとされています。
ロンドン会議後、マクロン仏大統領は英仏両国として、ロシアとの間で1カ月間の部分的な停戦を提案したい考えを示しました。短期の「試験的な停戦」を通じて、より広い和平合意への道筋を探る狙いとみられます。
6カ月〜1年で停戦の可能性 それでも残る領土問題
趙氏は、米国による停戦への圧力と外交的働きかけが続いていることから、ロシアとウクライナの間で今後6カ月から1年の間に停戦に至る可能性があると予測します。
その一方で、ウクライナは戦場での劣勢を抱えつつも、将来の交渉でより大きな譲歩を迫られないよう、欧州との関与を一段と強めたうえで、改めて米国との協議に戻るとみられると分析しています。米国の支援はなお不可欠であり、そのバランスをどう取るかがウクライナの外交の核心となっています。
日曜日の会合で、ゼレンスキー大統領は、和平合意のためにウクライナがいかなる領土もロシアに譲ることはないと改めて強調しました。領土保全を譲れない一線とする姿勢は一貫しています。
しかし趙氏は、仮に停戦が成立しても、それが直ちに恒久的な和平につながるとは考えにくいと見ています。なぜなら、ロシアとウクライナの間で領土を巡る根本的な対立は解消されず、両側が「現状の領土状態」をそれぞれ自らに有利な形で解釈しようとする可能性が高いからです。
日本の読者が押さえたい視点
今回の一連の動きからは、戦後復興や和平交渉が、軍事支援だけでなく鉱物資源などの経済的利益と密接に結びついている現実が浮かび上がります。米国と欧州がウクライナの資源と安全保障をめぐってどのように役割を分担し、競い合うのかは、今後の国際秩序にも影響を与えかねません。
日本からこのニュースを見るとき、次のような問いが生まれます。
- 資源と安全保障が結びつく交渉は、どこまで持続的で公平な和平につながりうるのか
- ウクライナの主権と領土保全を尊重しつつ、各国はどのように役割を果たせるのか
- 短期的な停戦と、長期的な地域の安定をどう両立させるのか
ウクライナと米国の鉱物資源協定をめぐる攻防は、単なる二国間の経済交渉にとどまらず、資源、外交、安全保障が絡み合う現代の国際政治の複雑さを映し出しています。今後数カ月から1年にかけての停戦の行方とともに、ウクライナがどのような条件で和平と復興への道を歩むのか、引き続き注視する必要があります。
Reference(s):
Zelenskyy ready to sign minerals deal with U.S., but challenges remain
cgtn.com








