韓国・尹錫悦大統領の逮捕取り消し決定 勾留なし裁判への道
韓国のソウル中央地裁が、逮捕・起訴されていた尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の逮捕取り消しを認めました。弾劾審理が続く中、現職大統領が勾留されないまま刑事裁判を受ける可能性が開けたことになります。
逮捕取り消しで何が変わるのか
ソウル中央地裁は金曜日、尹大統領側が2月4日に申し立てていた逮捕の取り消し請求を認めました。裁判所の決定が確定すれば、尹氏は釈放され、在宅のまま公判に臨む道が開きます。
ただし、検察が不服として抗告すれば、別の裁判官が判断を下すまで釈放は保留されます。逮捕の有効性そのものが、今もなお法廷で争われている格好です。
- 決定を出したのはソウル中央地裁
- 尹氏は「内乱の首謀者」として逮捕・起訴されていた現職大統領
- 逮捕が取り消されれば、勾留なしでの裁判が可能になる
鍵となった「勾留期限」の計算
2月20日に開かれた関連審理では、勾留期限の解釈が大きな争点になりました。尹大統領側は、逮捕状の効力が切れた後に勾留中のまま起訴されたと主張。一方、検察は「適法な起訴だ」と反論しました。
裁判所は最終的に、尹氏が逮捕期限を過ぎてから起訴されたと認定しました。その理由として、「勾留期間は日付ではなく実際の時間で計算すべきだ」と指摘しています。
具体的には、尹氏は今年1月15日に大統領公邸で身柄を拘束され、1月26日に勾留されたまま起訴されました。検察が起訴状を提出したのは1月26日18時52分でしたが、裁判所は尹氏の逮捕期限が同日9時07分にすでに満了していたと判断しました。
尹氏は「内乱の首謀者」として逮捕・起訴された韓国史上初の現職大統領とされています。それだけに、手続き上の一つひとつの判断が、事件の行方を大きく左右する状況です。
裁判所は、こうした手続きの曖昧さを残したまま刑事裁判を進めれば、「上級審での判決取り消しややり直し(再審)の原因になりかねない」として、まずは勾留の適法性を明確にする必要があると強調しました。
高官捜査機関CIOの権限にも言及
今回の決定では、捜査を担った機関の権限にも踏み込んだ判断が示されました。裁判所は、「高位公職者犯罪捜査処(CIO)は内乱事件を捜査する権限を持たない」と指摘し、CIOと検察が法的根拠なく勾留期間を分け合う形で使っていたと批判しました。
尹氏の「内乱」容疑については、まずCIOが予備的な捜査を行った後、今年1月に事件を検察に送致していました。裁判所の判断は、高官の不正を専門に扱うCIOと従来の検察の間で、どこまで権限を分けるべきかという制度上の課題も浮かび上がらせています。
背景にある戒厳令宣言と弾劾審理
事件の出発点は、昨年12月3日の「非常戒厳令」宣言です。尹大統領は同日夜に非常戒厳令を布告しましたが、数時間後、野党が多数を占める国会がこれを取り消しました。
その後の12月14日には、国会で尹大統領に対する弾劾訴追案が可決されました。これを受けて、韓国の憲法裁判所は尹氏の弾劾適否を判断する審理を進め、決定が出た当時までに11回の口頭弁論が開かれていました。当時、最終判断は「来週にも出る」と広く見込まれていました。
法の手続きが問うもの
今回の逮捕取り消し決定は、尹大統領の刑事責任の有無そのものを判断したものではありません。それでも、
- 勾留期限の1分1秒まで含めた厳密な計算
- 捜査機関ごとの明確な権限分担
- 将来の裁判のやり直しを避けるための「手続きの透明性」
といった論点が前面に出たことで、「権力者をどのようなルールで裁くのか」という、より根本的な問いを投げかけています。
日本から見ると、現職大統領の逮捕や弾劾という事態は映画のようにも感じられます。しかし、その裏側では、民主主義の根幹である法の支配と手続きの適正さをめぐる、ごく現実的な議論が積み重ねられています。韓国政治の行方だけでなく、私たち自身の社会のあり方を考える手がかりにもなりそうです。
Reference(s):
South Korean court approves release of arrested President Yoon
cgtn.com








