弾劾中の韓国・尹錫悦大統領が釈放 検察が不服申し立て断念
弾劾訴追中の韓国・尹錫悦(Yoon Suk-yeol)大統領が、拘束から数週間後の2025年2月、ソウル中央地裁の判断と検察の不服申し立て断念を受けて釈放されました。韓国の民主主義と「法の支配」をめぐる攻防は、国内世論を大きく二分させています。
何が起きたのか:弾劾中の現職大統領が釈放
ソウル中央地方裁判所は2025年2月上旬、尹錫悦大統領の拘束を取り消す決定を下しました。これを受け、検察は裁判所の釈放決定に対する抗告を見送ることを決定し、尹大統領はその翌日の土曜日に釈放されました。
尹大統領は、ソウルの南約20キロに位置する義王市のソウル拘置所から黒い車両で移送され、車を降りて沿道に詰めかけた支持者に向かって手を振り、頭を下げて応えました。その後、ソウル市内中心部の大統領公邸に到着した際にも車を降り、再び支持者と握手を交わしました。
声明の中で尹大統領は、裁判所の判断に謝意を示すとともに、寒さの中で支え続けた人々の支持、そして与党・People Power Partyのリーダーシップに感謝を表明しました。
裁判所の判断:「手続き」と「実体」の両面で問題指摘
今回の釈放は、尹大統領の弁護団が2月4日に提出した拘束取り消しの申請を、ソウル中央地裁が認めたことによるものです。弁護団は、裁判所の決定について「大統領の身柄拘束が、手続き面でも実体面でも問題だったことを確認した」と評価し、この判断を「法の支配を回復する旅路の始まりだ」と位置づけました。
背景には、拘束期限をめぐる技術的かつ象徴的な争点があります。検察は1月26日午後6時52分に尹大統領を起訴しましたが、ソウル中央地裁は大統領の拘束期限は同日午前9時7分にすでに切れていたと判断しました。起訴時点で拘束の法的根拠が失われていた可能性がある、という見方につながる構図です。
尹大統領の「内乱首謀」疑惑を担当する特別捜査チームは、当初は地裁決定に不服を申し立てる構えでした。しかし、韓国の検事総長がチームに対し、裁判所の判断に従うよう指示したと地元メディアは伝えています。司法判断を尊重するのか、それとも徹底的な追及を優先するのか――検察内部の葛藤もにじみます。
ソウル中心部で賛否の大規模デモ
尹大統領の釈放当日、ソウルの街頭では対立する2つの集会が同時進行しました。報道によると、支持派の集会には約5万5,000人が参加し、都心の主要エリアを埋め尽くしました。一方で、憲法裁判所の周辺では尹大統領に反対する人びと約3万2,500人が集まり、弾劾の支持などを訴えました。
一人の現職大統領をめぐって、これほど大規模な集会が賛成・反対の双方で開かれるのは、韓国でも極めて異例です。街頭での政治参加が活発な韓国社会の特徴が、改めて浮き彫りになったと言えます。
背景:戒厳令宣言から弾劾、憲法裁判所の審理へ
事態の発端は、2024年12月3日夜に尹大統領が宣言した非常戒厳令でした。この戒厳令は、野党が多数を占める国会(国会議員で構成される国会)によって数時間以内に取り消されましたが、その是非をめぐって大きな議論を呼びました。
その後、12月14日に国会で尹大統領の弾劾訴追案が可決されます。これを受けて、韓国の憲法裁判所は大統領の職務継続の可否を審理し始め、これまでに11回の口頭弁論が開かれました。当時、最終判断は「翌週にも示される」と広く見込まれていましたが、その結論や政治への影響については、韓国内外でさまざまな観測が飛び交っていました。
尹大統領本人は、2025年1月15日に大統領府内で身柄を拘束され、1月26日には勾留されたまま起訴されました。現職大統領が逮捕・起訴されたのは、韓国では初めてのことです。
問われる「法の支配」と民主主義
今回の一連の動きは、韓国の民主主義と司法制度にとって、いくつかの重要な問いを投げかけています。
- 現職大統領の非常措置(戒厳令)に対し、国会と裁判所がどこまで歯止めをかけられるのか
- 拘束期限や起訴の手続きなど、形式面のルールをどこまで厳格に運用できるのか
- 数万人規模の街頭デモが、司法判断や政治プロセスにどのような影響を与えるのか
韓国ではこれまでも、大統領が任期中あるいは退任後に捜査や訴追の対象となるケースが繰り返されてきました。尹大統領のケースは、その中でも「初の現職逮捕・起訴」という意味で、制度の耐久性が改めて試される局面となりました。
2025年12月のいま振り返ると、2024年末から2025年初めにかけての出来事は、韓国社会に深い亀裂と同時に、制度を通じて問題を解決しようとする意識の高まりも映し出しているように見えます。裁判所の判断、検察の対応、そして街頭に集まった人びとの声が、今後どのようなかたちで韓国の政治文化に影響を与えていくのか。引き続き注視する必要がありそうです。
Reference(s):
Impeached ROK president released as prosecution decides not to appeal
cgtn.com








