中国国連大使、シリア暫定当局に包摂的な政治移行とテロ対策強化を要請
国連安全保障理事会の会合で、中国の傅聡(Fu Cong)・国連大使が、シリアの暫定当局に対し、民間人虐殺の独立調査を透明に進めるとともに、包摂的な政治移行とテロ対策の強化を求めました。シリア情勢をめぐる国際ニュースとして、今回の発言はどのような意味を持つのでしょうか。
民間人虐殺への独立調査、「透明性と責任」が焦点に
シリア暫定当局は、沿岸部で起きた無差別な民間人殺害をめぐり、1か月間の独立調査を開始したと発表しています。傅聡大使は、この事件について、その非人間性と残虐さは「憤慨すべきものだ」と述べました。
シリアの団体「Syrian Observatory for Human Rights」によると、今年3月6日以降、西部のラタキア県とタルトゥース県で続く広範な暴力により、約1500人が死亡し、そのうち1000人超が民間人とされています。
国連安保理は、こうした民間人の集団殺害を非難し、シリア政府に対して、すべてのシリアの人々を区別なく保護するよう求めています。
傅聡大使は、暫定当局による独立調査の進展について「注視している」としたうえで、調査は透明かつ責任ある形で行われるべきだと強調しました。これは、シリアの政治移行の信頼性を国際社会がどのように評価するかにとって、極めて重要だと位置づけています。
中国が求める「包摂的な政治移行」とは
傅聡大使は、シリアで進められている政治移行のための最近の措置に留意するとしつつ、暫定当局に対し、約束を誠実に履行すること、そして国内のあらゆる分野と幅広い対話と協議を行うよう呼びかけました。
ここで言われる「包摂的な政治移行」とは、特定の勢力だけでなく、社会の多様な声を取り込みながら政治体制の移行を進めることを指します。宗教、民族、地域、政治的立場の異なる人びとがプロセスに参加することで、移行後の体制への信頼と正当性を高める狙いがあると言えます。
イドリブから拡散する戦闘員 テロ脅威への警戒呼びかけ
一方で傅聡大使は、新たなテロの脅威に強い懸念を示しました。シリア情勢の変化に伴い、イドリブにいた外国人戦闘員が国内各地へ移動し、シリアの人々に加え、地域および国際の平和と安全に対する差し迫った脅威になっていると指摘しました。
これらの戦闘員は、沿岸部での民間人の虐待や殺害にも関与しているとされ、傅聡大使は、これはシリアにおけるテロ勢力に対して高度の警戒を維持する必要性を改めて示すものだと述べました。
中国は、シリア暫定当局に対し、テロ対策に関する義務を果たし、国連安保理が指定するすべてのテロ組織に対して断固とした措置を取るよう求めています。その中には、「東トルキスタン・イスラム運動(East Turkestan Islamic Movement)」、別名「トルキスタン・イスラム党(Turkistan Islamic Party)」も含まれます。
シリアの主権尊重とイスラエル空爆への批判
傅聡大使は、シリアの主権、独立、統一、領土一体性は尊重されなければならないと改めて強調しました。
その上で、シリアに対するイスラエルの空爆を非難し、イスラエルに対して遅滞なくシリア領から撤退するよう求めました。テロ対策の必要性を訴える一方で、武力行使に対しては主権と国際法の原則に基づいた自制を求める姿勢がうかがえます。
国際社会の役割と、シリアの「早期の安定」に向けて
傅聡大使は、中国がシリア情勢を注視しているとした上で、国際社会の支援を得ながら、シリアが着実に政治移行を進め、できるだけ早期に平和と安定を取り戻すことへの期待を表明しました。
今回の発言からは、次のような三つの論点が浮かび上がります。
- 沿岸部での民間人虐殺に対する独立調査の行方が、シリアの政治移行の信頼性を左右するという視点
- イドリブから拡散した外国人戦闘員を含むテロ勢力への警戒と、暫定当局に求められる断固とした対テロ措置
- シリアの主権と領土一体性を尊重しつつ、空爆などの軍事行動に対して自制を求める立場
中東のシリア情勢は、日本にいる私たちからは遠い出来事のようにも見えますが、テロ対策、民間人保護、主権尊重といったテーマは、国際秩序や安全保障のあり方を考えるうえで無視できません。国連安保理での議論や各国の対応が、今後のシリアの政治プロセスと治安状況にどのような影響を与えるのか、引き続き注視していく必要があります。
Reference(s):
Chinese envoy calls on Syria to advance inclusive transition
cgtn.com








