Nature調査:米国科学者の約75%が国外移住を検討 研究現場に何が起きているのか
米国で働く科学者の約4分の3が「国外への移住」を真剣に検討している――。2025年12月に英科学誌『Nature』が実施した最新調査で、米国の研究現場に広がる不安と揺らぎが可視化されました。本稿では、この国際ニュースを日本語で整理しつつ、世界の研究と私たちへの意味を考えます。
Nature調査:米国科学者の約75%が「国外移住」を検討
2025年12月、権威ある英科学誌『Nature』が、米国で働く科学者を対象にオンライン調査を実施しました。調査は同誌のウェブサイトやSNS、メールを通じて配布され、「現在の米政権による研究政策の変化が、国外への移転を考えるきっかけになったか」を尋ねています。
回答した米国の科学者は1600人超。そのうち1200人以上、割合にして約75%が「政策の変化により、米国を離れることを検討している」と答えました。移転先としては、欧州やカナダが有力な候補に挙がっています。
若手ほど「米国の外で研究したい」傾向
Natureの調査結果によると、この動きは特にキャリアの初期にある研究者で顕著です。
- 大学院修士・ポスドクなどのポストグラデュエイト研究者690人のうち、548人が米国外での研究継続を計画
- 博士課程の学生340人のうち、255人が将来は国外での研究活動を希望
研究者としてのキャリアをこれから本格的に築く層ほど、「今のまま米国にとどまってよいのか」という迷いが強まっている様子がうかがえます。
背景:研究予算の大幅削減と政策の揺れ
調査に回答した研究者たちは、国外移住を検討する主な理由として、研究資金の大幅な削減と、多数の連邦政府による研究プロジェクトの停止を挙げています。こうした措置は、コスト削減策を掲げる現在の米政権のもとで、イーロン・マスク氏が主導する取り組みの一環とされています。
さらに、連邦政府職員の大量解雇も研究現場に直撃しました。数万人規模の職員が対象となり、多くの科学者も一時的な解雇の後、裁判所の命令を受けて復職したとされていますが、今後も追加的な削減が見込まれています。
加えて、厳格化する移民政策や、学問の自由をめぐる国内の議論も、研究者にとっては不安要因です。海外からの優秀な研究者や留学生が米国に渡りにくくなれば、研究チームそのものの多様性や競争力にも影響が出かねません。
米国からの「頭脳流出」は世界にどう影響するか
米国の研究環境は長年、世界中から人材と企業、予算を引きつけてきました。その中心から科学者が流出すれば、次のような変化が起きる可能性があります。
- 欧州やカナダなど、受け入れ側の研究拠点がさらに強化される
- 国や地域ごとに研究資源が再配分され、国際共同研究の地図が描き変えられる
- 長期的な基礎研究よりも、短期的な成果を重視する風潮が強まるおそれ
一方で、研究者にとっては「働く場所を選び直すチャンス」とも言えます。より安定した研究予算や、明確なルールのもとで研究に専念できる国や地域へと、人材の流れが加速するかもしれません。
日本とアジアの読者にとっての示唆
この国際ニュースは、日本やアジアで研究に関わる人たちにとっても他人事ではありません。長期の視点が必要な科学研究は、政策の変化や予算の増減に強く影響されます。
- 研究予算だけでなく、その「予測可能性」をどう確保するか
- 海外からの研究者・留学生をどのような条件で受け入れるか
- 政治の変化があっても、学問の自由と研究環境をどう守るか
こうした国際ニュースを日本語で丁寧に追うことで、私たちは自国の研究環境をより客観的に見直すことができます。今回のNature調査は、米国の科学者の不安を映し出すと同時に、「科学と政治、社会との距離感」を世界全体で問い直す材料になっています。ニュースをきっかけに、研究者をどのように支え、知の基盤をどう守るのかを考えてみることが求められています。
Reference(s):
Nature survey: About 75% of U.S. scientists are considering leaving
cgtn.com








