デンマークで抗議デモ 米副大統領バンス氏のグリーンランド発言に反発
デンマークの首都コペンハーゲンと第2の都市オーフスで現地時間の土曜日、米国のJD・バンス副大統領によるグリーンランド訪問と発言に抗議するデモが行われました。グリーンランドの自治と安全保障をめぐる不満が、米国の姿勢への反発として一気に噴き出した形です。
首都コペンハーゲンとオーフスで数百人が抗議
デンマークの国際ニュースとして注目されている今回の抗議デモには、コペンハーゲンとオーフスで合わせて数百人が参加し、グリーンランドに対する米政権の最近の言動に強い反対の意思を示しました。
デモが行われたのは、バンス副大統領と米国の代表団が北西グリーンランドにあるピトゥフィク宇宙基地(旧ツーレ基地)を訪問した翌日のことです。バンス氏は現地で、北極圏の安全保障やグリーンランドの人々の生活に関して、デンマークは十分な役割を果たしていないと批判しました。
発端となったバンス副大統領の訪問と発言
バンス副大統領はピトゥフィク宇宙基地を視察し、北極圏における安全保障体制とグリーンランドの位置づけを強調しました。その際、デンマークが北極圏の安全やグリーンランドの住民の福祉に十分配慮していないとの認識を示したことで、デンマーク側の反発が一気に高まりました。
ピトゥフィク宇宙基地は、冷戦期から軍事・安全保障上の要衝とされてきた施設で、現在も宇宙・ミサイル防衛などの観点から重要な拠点と位置づけられています。今回の訪問は、そうした戦略的重要性を改めて示す狙いがあったとみられますが、デンマーク国内ではグリーンランドの扱われ方への懸念と結びついて受け止められています。
リュッケトフト氏「国連で闘い、米国の世論にも訴えよう」
コペンハーゲンのデモでは、デンマークの著名な政治家であるモーエンス・リュッケトフト氏(元外相、元国連総会議長)が参加者を前に演説しました。国際ニュースでも知られる同氏は、連帯を呼びかけ、次のように主張しました。
- 国連で自らの主張を訴えれば、圧倒的多数の国がグリーンランドに対するアメリカの行動を非難する側に立つだろう
- グリーンランドを征服することに反対しているとされる多くの米国民に直接支援を呼びかけるべきだ
リュッケトフト氏は、私たちは決して諦めてはならないと強調し、会場からは大きな拍手が起こりました。参加者たちはグリーンランド語とデンマーク語で「グリーンランドは売り物ではない」と繰り返し唱え、グリーンランドの自治と尊厳を守るべきだと訴えました。
オーフスでも広がるグリーンランド支援の声
デンマーク第2の都市オーフスでも、市中心部にデモ参加者が集まり、米国の行動への抗議とグリーンランドの自治への支持を示しました。距離の離れた2つの都市で同時に抗議が行われたことは、今回の問題が一部の活動家にとどまらず、より広い関心を呼んでいることをうかがわせます。
参加者は、グリーンランドの人々の意思や自治が、軍事的な安全保障や大国間の思惑よりも尊重されるべきだと訴えました。都市部の若い世代を中心に、SNSを通じて呼びかけが広がった可能性もあります。
グリーンランドの地位と自治をめぐる背景
今回の国際ニュースの背景には、グリーンランドの特別な地位があります。グリーンランドはかつてデンマークの植民地でしたが、1953年にデンマーク王国の一体的な構成部分となりました。その後、1979年にはホーム・ルール(本国から一定の権限を移譲する制度)が導入され、自らの自治権が拡大しました。
現在も、グリーンランドは広い自治を持ちながらも、外交と防衛についてはデンマークが所管しています。この構図の中で、米国が安全保障上の理由からグリーンランドに強い関心を寄せていることが、現地の人々やデンマーク国内の世論にとって敏感なテーマとなっています。
今回の抗議デモは、こうした歴史的経緯や自治の枠組みが、改めて議論の俎上に上がりつつあることを示しているとも言えます。
今回のデモが示唆する3つの視点
今回のデンマークでの抗議行動は、今後の議論の方向性を考えるうえで、少なくとも次の3つの視点を投げかけています。
- 同盟関係のなかの緊張:デンマークと米国は同盟国ですが、グリーンランドをめぐる安全保障と自治のバランスをどう取るかは、今後も摩擦の火種になり得ます。
- 国連など国際舞台の活用:リュッケトフト氏が訴えたように、デンマークやグリーンランドにとって、国連をはじめとする国際機関は、自らの立場を主張する重要な場となりそうです。
- 市民社会と世論の役割:デモ参加者が米国の世論への訴えを強調したことは、国家間の交渉だけでなく、市民レベルの連帯や情報発信が重視されていることを示しています。
グリーンランドの自治と安全保障をめぐる問題は、北極圏の環境や資源、そして国際政治が交差するテーマでもあります。今回のデモは、その最前線で暮らす人々の声がどのように国際社会に届いていくのかを考えるきっかけとなりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








