米国の新関税で世界株安 ハイテクに最大の打撃
米国の新関税で世界株安 ハイテク銘柄に痛手
2024年夏、米国のトランプ大統領が予想以上に大きな関税措置を発表し、世界の株式市場が急落しました。特にハイテク企業とアジアの製造拠点が大きな打撃を受け、安全資産とされる金や円、米国債に資金が流れ込む展開となりました。
何が起きたのか:予想外に分厚い関税の壁
今回の関税は、世界最大の経済である米国が、自国市場の周りに「分厚い壁」を築くものと受け止められました。トランプ大統領は輸入品全体に対して一律10%の関税を課す方針に加え、特定の貿易相手にはそれよりはるかに高い税率を上乗せしました。
報道によると、中国本土からの輸入品には30%を超える追加関税が課され、合計で5割を超える水準に達するとの見方も出ています。別の説明では、中国本土には34%、日本には24%、ベトナムには46%、韓国には25%、欧州連合には20%の関税が設定されたとされています。アジアと欧州の主要な輸出拠点が一斉に対象となったことで、世界の貿易とサプライチェーン(供給網)への影響が意識されました。
シティグループの金利ストラテジスト、ベン・ウィルトシャー氏は、米国の実効関税率が「過去100年以上で最も高い水準」に達する可能性を指摘しています。香港のピンポイント・アセット・マネジメントのチーフエコノミスト、チャン・ジーウェイ氏も「今回の関税は世界貿易にとって大きなリスクとなる」と警鐘を鳴らしました。
市場の反応:ハイテク急落、安全資産に逃避
関税発表直後の木曜日、株式市場は一斉にリスク回避モードに入りました。ナスダック先物は4%下落し、S&P 500先物も3.3%安となりました。いわゆる「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる米ハイテク大手7社では、時間外取引だけでおよそ7,600億ドル相当の時価総額が吹き飛んだとされています。
特に、iPhoneを中国本土の工場で生産しているアップルの株価は、時間外で約7%下落しました。サプライチェーンが中国本土やアジアの製造拠点に深く依存しているハイテク企業ほど、今回の関税によるコスト増や需要減の懸念が意識された形です。
一方で、安全資産と見なされる商品や通貨には資金が殺到しました。金価格は1トロイオンス当たり3,160ドル超と過去最高値を更新。米国の10年国債利回りは一時、14ベーシスポイント(0.14ポイント)低下し、5カ月ぶりの低水準である4.04%まで下がりました。投資家が株式から国債へ資金を移し、今後の米国の景気減速と利下げの可能性を織り込み始めたことを意味します。
原油価格も世界経済の先行き不安を映しました。世界景気のバロメーターとされる北海ブレント原油先物は3%超下落し、1バレル72.56ドルまで下げています。
アジア・欧州市場にも波及、日本株は8カ月ぶり安値
ショックは米国だけにとどまりませんでした。東京市場では、日経平均株価が序盤の取引で3.9%安と急落し、約8カ月ぶりの安値水準を付けました。海運、銀行、保険、輸出関連など、ほぼすべての業種が売られる全面安となりました。
韓国の株式市場でも、代表的な株価指数であるKOSPIが2%下落。ベトナム株に投資する上場投資信託(ETF)は時間外取引で8%超の急落となり、オーストラリア株も2%安となりました。欧州市場でも、FTSEや欧州各国の株価指数先物がほぼ2%近い下げとなるなど、世界的な連鎖安が広がりました。
なぜテックが最も打撃を受けたのか
今回の関税ショックで、なぜハイテク銘柄が特に売られたのでしょうか。大きな理由は、スマートフォンや半導体、データセンター向け機器など、多くのハイテク製品が中国本土をはじめとするアジアの工場で組み立てられているためです。
米国が高関税を課すと、こうした製品のコストが一気に上昇し、企業の利益率が圧迫される可能性があります。また、企業が生産拠点を移転しようとすれば、多額の投資と時間が必要となり、その間の不確実性も高まります。市場はこうしたリスクを織り込み、株価に先回りして反応したと考えられます。
米国カリフォルニア州メンローパークに拠点を置くウェルスアドバイザー、ロバートソン・スティーブンスのチーフエコノミスト、ジャネット・ジェラッティ氏は「今回の関税は、当初の予想をはるかに上回る包括的な内容だ」と述べたうえで、「不透明感が晴れれば株価にプラスになるという期待もあったが、いざ内容が明らかになると、市場は誰も歓迎していないことがはっきりした」と話しています。
金利と為替:利下げ期待と円高圧力
米国の10年国債利回りが急低下した背景には、投資家が今後の米景気の減速を織り込み、米連邦準備制度による利下げの可能性を高めて見ていることがあります。金利先物市場では、今後数カ月以内の利下げ織り込みが一段と進んだと伝えられています。
日本の投資家にとっては、米金利低下は為替を通じて影響が及ぶ可能性があります。一般に、米金利が下がる局面では円が買われやすく、円高が進みやすくなります。輸出企業の業績や日本株全体のバリュエーションにとっても、為替動向がこれまで以上に重要になっていきそうです。
2025年の今、今回のショックから何を学べるか
2025年12月の現在も、世界経済を取り巻く最大の不確実要因の一つは、関税や通商政策の行方です。2024年の関税ショックは、政策の一つの発表が、わずか数時間で株式、債券、商品、市場全体に連鎖的な影響を与えうることを改めて示しました。
個人投資家にとっては、企業の業績や株価指標だけでなく、貿易政策や地政学的リスクにも目を配ることが欠かせません。また、特定の国や業種に過度に偏らない分散投資や、為替リスクへの備えなど、基本的なリスク管理の重要性も浮き彫りになっています。
関税政策そのものの評価は立場によって分かれますが、市場にとって重要なのは「規模」と「不確実性」です。今後も、各国・各地域の政策決定が、世界の資本市場を大きく揺らす可能性があることを念頭に置きながら、ニュースとマーケットを冷静に追いかけていく必要がありそうです。
Reference(s):
cgtn.com








