トランプ関税がインフレと景気後退を招く?クロアチア専門家が警鐘
トランプ米大統領が導入した新たな関税政策をめぐり、クロアチアの経済アナリストが「インフレが景気後退の引き金になる」と強い懸念を示しています。欧米の株式市場が不安定さを増すなか、関税と景気減速のつながりをどう見るべきでしょうか。
トランプ米大統領の「相互関税」とは
トランプ米大統領は先ごろ、いわゆる相互関税に関する大統領令に署名し、すべての輸入品に対して最低10%の関税を課す方針を打ち出しました。対象国や品目によっては、さらに高い税率が適用される可能性があります。
この動きは、国際貿易をめぐる緊張を一段と高めるものとして、市場や企業の間で警戒感を呼んでいます。欧州株式市場はここ数日の取引で4営業日連続の下落となり、米国の代表的な株価指数であるS&P500も3日続落するなど、国際ニュースとしても大きく報じられています。
「インフレは燃料、関税はマッチ」専門家の厳しい見方
クロアチアの経済アナリスト、ペタル・ヴシュコヴィッチ氏は、現地のテレビ局N1のインタビューで、今回の関税政策を強く批判しました。同氏は「インフレが景気後退の燃料だとすれば、関税はそれに火をつけるマッチだ」と表現し、景気後退のリスクが高まっていると指摘しました。
ヴシュコヴィッチ氏は、世界の株式市場が大きく値下がりしている現状を挙げ、「経済的なアルマゲドンが来るかどうかではなく、すでに始まっている」との見方を示しています。投資家は先行きが読めず不安を強めており、この状況が新たな景気後退の局面を示しているというのが同氏の認識です。
雇用にも波及、「コロナ禍より悪い」現場の肌感覚
市場の動揺にとどまらず、企業の現場でも影響が出ているといいます。ヴシュコヴィッチ氏によると、企業はすでに従業員の解雇に踏み切り始めており、状況は「新型コロナウイルスのパンデミック時より実質的に悪い」と感じられる段階にあるといいます。
打撃を受けるのは特定の業種だけではありません。国家予算の税収、投資家、企業オーナー、従業員まで、経済を支えるあらゆる主体がリスクにさらされていると同氏は指摘し、「ひと言で言えば、経済状況は悪い」と現状を総括しました。
クロアチア経済への波及:輸出と物価への二重の打撃
では、クロアチア経済にとって、トランプ米大統領の関税はどの程度のインパクトを持つのでしょうか。ヴシュコヴィッチ氏によると、クロアチアから米国への年間輸出額は5億8700万ユーロ(約6億4200万ドル)で、欧州全体の対米輸出額の1割に満たない水準です。
数字だけ見れば、クロアチアのシェアは決して大きくありません。しかし、個々の企業や家計にとっては影響が無視できないといいます。
- 関税によって輸入される原材料の価格が上昇し、生産コストが増加する
- その結果、クロアチア企業の輸出品の価格競争力が低下する
- 家計にとっては、コンピューター部品など輸入製品の小売価格が上昇する
ヴシュコヴィッチ氏は、とくに次のような輸出企業が大きな打撃を受けると指摘します。
- ワインやオリーブオイルなどの食品関連
- 医薬品や製薬関連製品
- 機械や木材製品などの工業品
- サーディン缶詰などの水産加工品
これらの企業の輸出が落ち込めば、クロアチア政府の税収減にもつながりかねません。とくに輸出産業が大きな影響を受けた場合、国家予算の歳入が下押しされるリスクがあると警告しています。
なぜ関税がインフレと景気後退を同時に招くのか
ヴシュコヴィッチ氏が懸念するのは、関税が物価と景気の両方に悪影響を与える点です。関税は輸入品に上乗せされる税金であり、企業は増えたコストを販売価格に転嫁しやすくなります。その結果、消費者はより高い値段で商品を買わざるを得なくなり、インフレ圧力が高まります。
一方で、コスト増に直面した企業は利益を守るために投資を縮小し、雇用を抑える方向に動く可能性があります。家計は物価上昇で実質的な購買力が下がり、消費を控えるようになります。こうした動きが重なると、景気全体が冷え込むリスクが高まります。
物価は上がるのに成長は鈍るという状況は、企業にとっても家計にとっても厳しい環境です。ヴシュコヴィッチ氏が「インフレが燃料で、関税がマッチ」と表現したのは、この悪循環が加速する可能性への警告だといえます。
保護主義への懸念と、これから注視すべき点
ヴシュコヴィッチ氏は、トランプ米大統領の経済政策を「保護主義的で好ましくない」と批判し、「関税によって守られるのは最も裕福な層であり、多くの市民はむしろ貧しくなる」と懸念を示しました。
国際ニュースとしての関税問題は、単なる外交カードではなく、「誰が負担を負うのか」という国内の再分配の問題でもあります。企業や投資家だけでなく、一般の生活者にとっても、物価や雇用の形で影響が及ぶ可能性があるためです。
今後は、各国の株式市場の動きに加え、企業の雇用計画や投資判断、インフレ率の推移などが重要なチェックポイントになりそうです。クロアチアを含む欧州の経済が、関税ショックをどのように乗り越えるのか。世界経済の行方を見通すうえで、引き続き注視が必要です。
Reference(s):
cgtn.com








