トランプ新関税前に米国で日用品買いだめ 物価不安が広がる
トランプ米大統領の新たな輸入関税を前に、米国の一部の消費者が豆や小麦粉、歯みがき粉まで日用品を買いだめする動きが広がりました。背景には、物価上昇と景気後退への強い不安があります。
トランプ新関税前に広がった「備蓄モード」
2025年4月初め、トランプ政権が最新の輸入関税を発表し、その数日後に発動される見通しになると、米国の大型スーパーでは「今のうちに買っておこう」と考える人たちの姿が目立ちました。こうした現場の空気を、ロイター通信の取材は伝えています。
米ニュージャージー州のウォルマート・スーパーセンターでカートを押していたトーマス・ジェニングスさん(53)は、ジュースや調味料、思いつく限りの食品を次々とカゴに入れていました。
ジェニングスさんは「豆、缶詰、小麦粉、何でもいつもの2倍買っている」と話し、「景気後退が来ると思っている。最悪の事態に備えているんだ」と語ります。少し前には会員制スーパーのコストコで小麦粉や砂糖、水をまとめ買いしたといいます。
ジェニングスさんのように、多くの米国の買い物客が「トランプ政権の関税で小売価格が上がる」とみて、先回りして日用品をストックし始めています。
新関税は家計にどれだけ響くのか
米国の非営利調査機関Tax Foundationは、今回の新たな関税が今後10年間で米国全体に3.1兆ドルの負担をもたらし、2025年だけでも1世帯あたり約2,100ドルの事実上の増税に相当すると試算しています。
こうした数字を目にしても、多くの買い物客は「とりあえず様子見」という姿勢を崩していません。一方で、「誰かが買いだめを始めれば、連鎖的なパニック買いで物価がさらに上がるのではないか」と懸念する声も出ています。
コロナ禍の「棚が空っぽ」の記憶
ロサンゼルス郊外でサプライチェーン(供給網)管理会社を経営するマニッシュ・カプールさんは、今回の関税が人々の不安を呼び覚ましていると指摘します。
「新型コロナのときも、みんなが必要かどうかにかかわらず店にあるものを慌てて買い占めた。今はそこまでではないが、商品の価格が上がるかもしれないと心配して、とにかく備蓄しようとしている」と話します。
パンデミック期に経験した、がら空きになった棚や品薄、物価上昇の記憶が、今回の関税をめぐる心理にも影を落としている形です。
退職後の不安と「静かな備え」
衣料産業で長年働き、現在は退職している55歳のアンジェロ・バリオさんも、その一人です。バリオさんは、トランプ氏の「水を濁し、混乱を引き起こすようなやり方」が、自分や友人たちの間で経済の先行きへの不安を強めていると話します。
バリオさんは、関税コストが小売価格に上乗せされることを恐れ、保存のきく食品や日用品を11月ごろから少しずつ買い足してきました。今週訪れたコストコでは、歯みがき粉ブランドのクレストや石けん、水、米などをまとめて購入し、すでに缶詰でいっぱいになっている自宅地下室の容器に詰め込んだといいます。
大手小売のウォルマートやコストコは、こうした消費者の動きや関税の影響についての取材の要請に、すぐには応じていないとされていますが、現場の棚の前では「静かな備え」が着実に進んでいます。
買いだめの連鎖がインフレを加速させるおそれも
関税は輸入品に上乗せされる追加コストのため、多くの人が「企業が最終的に価格に転嫁するのでは」と考えています。その不安が強まると、「今のうちに買わないと損をする」という心理がはたらき、買いだめが加速しかねません。
しかし、「値上がり前の備え」が行き過ぎてパニック買いになると、需要が一気に膨らみ、一時的な品薄やさらなる値上がりを招くリスクもあります。今回の米国の動きには、インフレを恐れる行動が、逆にインフレ圧力を高めてしまうかもしれないというジレンマが見えます。
日本の私たちへの示唆:過度な不安とどう向き合うか
日用品の棚が空になる映像は、距離のある海外の出来事であっても、画面越しに強いインパクトを与えます。米国の一部の消費者の買いだめ行動には、将来の不安が強まったとき、人はまず身近な生活必需品から守ろうとするという心理がよく表れています。
一方で、備蓄とパニック買いの境界線はあいまいです。適度な備蓄は災害対策としても有効ですが、過度な不安に駆られて必要以上に買い込めば、市場全体の混乱や周囲の不安を生むことにもつながります。
トランプ政権の新関税と米国の買いだめ騒動は、日本の私たちにとっても「将来への不安が高まったとき、自分はどのように行動するのか」を考えるきっかけになりそうです。
Reference(s):
Some U.S. consumers stockpile goods ahead of Trump's new tariffs
cgtn.com








