トランプ大統領の関税ショック 共和党と支持者にも広がる動揺
米トランプ大統領が今年4月9日に打ち出した関税政策の急転換が、ウォール街やシリコンバレーの有力者、共和党議員、そして熱心な支持層にまで不安を広げ、アメリカ政治と経済に波紋を呼んでいます。本稿では、この関税をめぐる最新の動きと、共和党内で高まるけん制の動きを整理します。
90日間の一時停止と一律10%関税という急ブレーキ
4月9日、トランプ米大統領は、引き上げた米国の関税に直撃された各国について、90日間の猶予期間を設けると発表しました。これは国際ニュースとしても大きな転換であり、従来の強硬な関税路線からの一時的な後退を意味します。
約60の貿易相手国・地域に対する追加関税が実際に発動した直後、トランプ大統領は突如として方針を変え、「すべての相手に対して一律10%の相互的な低い関税」という新たな枠組みを認めると表明しました。交渉が続く中での暫定措置と位置づけられています。
大統領は、この関税引き下げと一時停止の理由について、株式市場の急落で人々が怖がり始めたためだと説明しました。市場不安が、強硬姿勢を売りにしてきたトランプ政権の通商政策にも直接影響を与えた形です。
市場クラッシュが「鉄板の味方」と熱心な支持層も揺らす
今回の市場の急落は、トランプ大統領を長年支えてきた「鉄板の味方」にも動揺を広げています。ウォール街の金融関係者、シリコンバレーのビリオネアたち、たとえばイーロン・マスク氏のような起業家、そして議会の共和党議員や熱心な支持者らも不安を隠せません。
特に、株価下落と企業活動への悪影響が懸念されるなか、これまでトランプ政権の減税や規制緩和を高く評価してきた層の間でも、「関税だけは別問題だ」という空気が強まっています。
共和党からも異例の強い関税批判
今回の関税政策には、トランプ大統領と同じ共和党からも公然と批判の声が上がっています。党内の対立が表面化している点は、国際ニュースとしても注目されています。
テッド・クルーズ上院議員「関税は実質的な増税」
テキサス選出の共和党上院議員テッド・クルーズ氏は、テレビ局のインタビューで、関税は本質的には消費者への「税金」であり、アメリカの消費者に大幅な増税を行うことには賛成できないと述べました。
自身のポッドキャスト番組でもクルーズ氏は、関税を他国に自国の関税引き下げを迫るための短期的なてことして使うこと自体は、条件次第で勝ち得る取引になり得ると認めています。一方で、長期にわたって高い関税を維持した場合には、インフレを押し上げ、雇用の伸びを損ない、最悪の場合はアメリカ経済を景気後退に追い込む可能性があると警鐘を鳴らしました。
ランド・ポール上院議員「国家緊急事態を口実にすべきでない」
ケンタッキー選出の共和党上院議員ランド・ポール氏も、最近の上院での演説でトランプ大統領を批判しました。貿易赤字を理由に「国家緊急事態」を宣言し、その名目で関税を正当化するやり方に反対を表明したのです。
ポール氏は、国家安全保障に直接関わらない問題まで緊急事態として扱えば、行政府の権限が肥大化し、議会によるチェックが弱まると懸念しています。
カナダ向け関税を巡る上院決議 4人の共和党議員が造反
4月初旬には、カナダからの輸入品に対するトランプ政権の関税を巡り、上院で重要な動きがありました。4人の共和党上院議員が民主党と歩調を合わせ、関税を止めようとしたのです。
リサ・マーカウスキー氏、ミッチ・マコネル氏、ランド・ポール氏、スーザン・コリンズ氏の4人は、カナダへの関税を終わらせる決議に賛成票を投じました。この決議は51対48という僅差で可決され、トランプ大統領に正面から異を唱える、共和党としては珍しい行動となりました。
この造反劇は、伝統的に自由貿易を重視してきた共和党の考え方と、トランプ政権の保護主義的な通商路線との間に深い亀裂があることを印象づけました。
関税に議会の「最終チェック」を求める超党派法案
共和党と民主党の一部議員は、行政府による関税権限を絞り込もうとする動きも強めています。その象徴が、上院議員チャック・グラスリー氏(共和党)とマリア・カントウェル氏(民主党)が共同提出した法案です。
この法案は、新たな関税が発動されてから60日以内に議会が承認しなければ、その関税の履行を自動的に止めるという仕組みを導入しようとするものです。すでに7人の共和党上院議員が賛同を表明しており、党派を超えた関心を集めています。
しかしホワイトハウスはこの法案に強く反対しており、トランプ大統領が拒否権を行使する姿勢を示しています。大統領権限の維持を図る政権と、議会の役割を取り戻そうとする超党派の動きとの間で、今後も綱引きが続きそうです。
何が見えてくるのか:トランプ流通商政策のリスク
今回の一連の動きからは、トランプ大統領の通商政策を巡るいくつかの重要なポイントが浮かび上がります。
- 関税は「交渉カード」か、それとも「長期的な負担」か
短期的には他国の譲歩を引き出す圧力になり得る一方、長期的に続けばインフレや雇用への悪影響が懸念されます。 - 市場が政策転換を促すリスク
株式市場の急落が、関税の一時停止や修正を促したことからも分かるように、市場の反応が政権の判断を大きく制約しつつあります。 - 共和党のアイデンティティの揺らぎ
自由貿易を重んじてきた党の伝統と、保護主義的な姿勢を取る大統領との間で、路線対立が鮮明になっています。 - 議会と大統領の権限を巡るせめぎ合い
関税を巡る超党派法案は、行政府の通商権限をどこまで認めるのかという、アメリカ政治の根本的な問いを投げかけています。
日本と世界にとっての意味
アメリカの関税政策は、日本を含む世界各国の企業や市場に直接影響します。今回のように方針が急に変われば変わるほど、企業にとっては中長期の投資やサプライチェーンの計画が立てづらくなります。
とくに、対米輸出に依存する企業や、米国を経由したグローバルな供給網を持つ企業にとって、トランプ政権の通商政策の行方は引き続き重要なリスク要因です。
今年4月の関税ショックと、その後に表面化した共和党内の反発は、アメリカ政治の内部で「どこまで関税を使えるのか」という線引きをめぐる議論が本格化していることを示しています。今後の交渉や法案審議の行方は、日本を含む世界の投資家や企業にとっても注視すべき国際ニュースと言えそうです。
Reference(s):
Trump's abuse of tariffs unsettles 'staunch allies, die-hard fans'
cgtn.com








