トランプ2期目「最初の100日」 創造的破壊は壊すだけで終わるのか
2025年現在、トランプ米大統領の2期目が就任から約100日を迎えようとしています。米国内外では大規模な政策転換と混乱が同時進行しており、本記事では、この最初の100日で何が起き、なぜ「壊したあと」が見えてこないのかを整理します。
「創造的破壊」を掲げた2期目のスタート
2期目のトランプ政権は、「創造的破壊」を前面に掲げたスタートとなりました。政策の優先順位として強調されたのは、連邦政府そのものを小さくすることです。具体的には次のような方針が打ち出されています。
- 連邦官僚機構の大幅な縮小
- 歳出の大幅削減と国内の連邦公務員の削減
国際面では、少なくとも10ポイント分の上乗せとなる大規模な関税引き上げが打ち出され、多くの同盟国を驚かせ、戸惑わせました。これらはどれも、既存の仕組みを一気に揺さぶる「破壊」に重心が置かれているという共通点があります。
健全な経済から一転、市場はジェットコースターに
こうした急激な政策転換に対し、国内外の初期反応は決して好意的ではありませんでした。経済面では、トランプ政権はインフレ率の急低下と歴史的な低失業率に支えられた、バイデン政権から比較的健全な経済を引き継いだとされています。
それにもかかわらず、関税引き上げの発表直後に株式市場は急落し、その後も世界的な貿易戦争の激化とともに、市場はジェットコースターのような乱高下を続けました。失業率はじわじわと上昇に転じ、消費者マインドも急速に悪化し、多くの米国民が経済の先行きに悲観的になっていると描写されています。
支持率の低下 得意分野だった移民でも逆風
政治面でも、トランプ政権の船出は順風とは言えません。ピュー研究所の世論調査によれば、トランプ氏の支持率は再登場後、多くの層で低下し、特に熱心ではない支持層や2024年に投票しなかった人々の間で落ち込みが目立ちます。全体として、大統領としての仕事ぶりを評価する成人は40%にとどまるとの結果が示されています。
さらに、これまでトランプ氏の「強み」とされてきた移民問題でも逆風が吹いています。ワシントン・ポストやABCニュース、イプソスによる調査では、移民対応を「不支持」とする人が53%に達し、このテーマでも不満が優勢です。国際的にも、ブルッキングス研究所の調査によると、韓国では対米感情が前年より大きく悪化しているとされています。
カオスを好む統治スタイルと人事の問題
2期目のホワイトハウスは、1期目以上のスピードと「カオス」を進んで受け入れていると分析されています。ウクライナのゼレンスキー大統領との対立をめぐる騒動の後、トランプ氏自身が混乱状態を「テレビ向きだ」と語ったことも紹介されていますが、そのようなカオスが必ずしも統治や政治戦略に資するとは限りません。
人事面では、トランプ氏が自らの判断に自信を深めた結果、専門性よりも忠誠心を優先して側近を選んだとされます。国防長官のピート・ヘグセス氏をはじめ、「シグナルゲート」疑惑や個人連絡先の漏えいなど、繰り返し失態を指摘されながらも、説明責任を問われないままポストにとどまっている人物もいると批判されています。このような人事のもとで、政治的な得点稼ぎを狙った政策は、組織化された強い反対運動に直面するようになりました。
大学・企業・市民社会からの反発
国内の社会政策でも対立が深まっています。政権は多様性・公平性・包摂性を掲げるDEI(ダイバーシティ、公平性、インクルージョン)関連の取り組みを標的とし、多くの大学や企業が当初は圧力に屈して方針を修正したといわれます。
しかし、その流れに対しハーバード大学が反旗を翻し、最終的には150以上の大学学長が連名で、ホワイトハウスによる過度の政府介入を非難する書簡に署名しました。
移民政策でも、強硬な措置により国境での違法な越境は一時的に減少したものの、メリーランド州在住のキルマー・アブレゴ・ガルシア氏が誤ってエルサルバドルに送還された事件が大きな批判を呼びました。この件に関する法廷闘争は続いており、同氏への共感も広がっていると伝えられています。
いくつかの大手法律事務所はホワイトハウスからの圧力を受け入れましたが、全米の学生団体はこうした事務所の採用説明会をボイコットし、政権への協力に抗議する動きを強めています。エリート大学、企業、市民社会の三者が、政権の象徴的な政策に対しそれぞれの形で抵抗している構図が見えてきます。
予算交渉の勝利と、野党の巻き返し
一方、財政をめぐる攻防では、共和党が短期的な勝利を収めたとされています。政府閉鎖を回避するための予算交渉で、上院少数党院内総務のチャック・シューマー氏が共和党側と歩調を合わせ、妥協案をまとめたためです。
しかし、この妥協は同時に民主党の側を奮い立たせる結果にもなりました。トランプ氏が前回の大統領選で最大18ポイントの差をつけて勝利した選挙区でさえ、民主党は競争力のある候補者を擁立しようとしていると伝えられています。短期的な予算交渉の勝利が、中長期的には選挙地図を塗り替える引き金となる可能性もにじみます。
対外政策のつまずき 日本との関税交渉とロシア・ウクライナ
対外政策でも、政権の思惑と現実のギャップが浮き彫りになっています。トランプ政権は当初、日本との関税交渉を成功事例とし、それを他国との交渉に横展開したい考えでした。
しかし、石破茂首相は、拙速な譲歩には応じないと公然と表明し、米国による対中国本土への圧力を目的とした経済ブロックづくりに距離を置く姿勢を示しました。
さらに、日本の自動車メーカーであるスバルは、カナダ向けの車両を米国ではなく日本で生産するようサプライチェーンを再編すると発表し、トランプ政権の関税を回避する構えを見せました。これは政権にとって一つの顔つぶれとも言える出来事です。
ロシアとウクライナの紛争についても、トランプ氏は就任から24時間以内に解決すると公言していましたが、現時点でも解決には至っていません。外交・安全保障の分野でも、短期間で劇的な成果を示すことの難しさが浮かび上がっています。
壊したあとをどう描くのか 見えない再構築
こうして見ると、「壊す」ことは進んでも、「再びつくる」方向性はほとんど見えていないと指摘されています。大統領令に署名して既存の政策を取り消し、予算を削り、連邦公務員を減らすこと自体は比較的容易です。
しかし、持続可能な合意を築き、新たな制度を設計し、複雑な政策を実行に移すことは、はるかに難しい作業です。これこそが、本来の意味での「創造的破壊」が直面する最大のハードルと言えるでしょう。
トランプ氏の戦略には、もし初期に問題が噴出しても前政権であるバイデン政権の責任にでき、後になって状況が好転すれば自らの功績として主張できる、という計算があるのかもしれません。ただし、「破壊」のあとに「再構築」が伴わないのであれば、その戦略は本当に成功したと言えるのでしょうか。
2期目の最初の100日をめぐる動きを見る限り、この問いはなお重く残っています。答えを示すのは、これから積み重ねられる時間と、実際に現れてくる政策の結果だと言えそうです。
Reference(s):
cgtn.com








