カナダ総選挙でカーニー首相続投 自由党は少数与党に、対米関係は新局面
カナダで行われた最新の総選挙で、マーク・カーニー首相率いる自由党が第1党の座を守りました。ただし単独過半数には届かず、少数与党として政権を続ける見通しです。米国との関税交渉や対米依存の見直しが、これからのカナダ政治の最大の焦点になりそうです。
自由党が第1党維持も、過半数に届かず
今回のカナダ総選挙では、カーニー首相の自由党が下院343議席のうち167議席で当選または優勢と報じられています。最大野党の保守党は145議席で追う展開となりました。
単独過半数に必要な議席数は172。自由党は政権こそ維持したものの、このラインにはわずかに届かず、他党の協力を得ながら政権運営を行う「少数与党」体制となる見込みです。
カナダでは、少数与党政権が2年半以上持ちこたえることはまれとされます。今回も、早期の信任投票や解散・再選挙の可能性をにらみながらの不安定なスタートとなります。
「これまでの米国との関係は終わった」カーニー首相の危機感
カーニー首相は首都オタワでの勝利演説で、米国との関係と世界の貿易秩序について強い言葉を使いました。
「第二次世界大戦以降、カナダの繁栄を支えてきた米国主導の開かれた貿易システムは終わった」「米国との、統合が着実に進むことを前提としたこれまでの関係は終わった」と語り、「これは悲劇であると同時に、私たちの新しい現実だ」とも述べました。
トランプ米大統領がカナダ製自動車に25%の関税を課す可能性に言及し、過去にはカナダを「51番目の州」にするために「経済的な力」を行使する考えを示したことなどが、こうした危機感の背景にあります。
トランプ大統領の関税・併合発言が愛国心を刺激
自由党は今年1月の時点で、世論調査で保守党に20ポイント差をつけられていたとされています。ところが、ジャスティン・トルドー氏が退陣を表明し、その後トランプ大統領が関税や「併合」に関する発言を繰り返すと、状況は一変しました。
カーニー首相は「アメリカはわれわれの土地も、資源も、水も、国そのものも欲している。これは空虚な脅しではない。トランプ大統領は、アメリカがカナダを所有できるように、われわれを打ち砕こうとしている。それは決して起こらない」と強調し、主権と経済を守る姿勢を前面に打ち出しました。
こうした発言やトランプ氏の強硬な物言いが、カナダ国内の愛国心をかき立て、政治の世界では新人ながら、2つの主要7か国(G7)の中央銀行を率いた経済通としてのカーニー氏への支持を押し上げたとみられます。
野党は善戦 生活不安や住宅危機に焦点
ただし、今回の結果は自由党の一人勝ちというわけではありません。右派寄りの保守党は「9年以上続く自由党政権のもとで国が壊れた」と主張し、生活費の高騰、犯罪、住宅危機といった身近な問題に焦点を当てて善戦しました。
ピエール・ポワリエヴル保守党党首は、オタワで支持者を前に敗北を認めつつ「まだゴールラインは越えられなかった。変化は必要だが、変化を手にするのは簡単ではない。時間がかかる」と語り、今後も政権を厳しく監視していく姿勢を示しました。
選挙戦終盤には、米国との緊張を受けて、左派の新民主党(NDP)やケベック州を地盤とするブロック・ケベコワを支持してきた有権者の一部が、対米強硬姿勢を掲げる自由党に流れたとも指摘されています。NDPのジャグミート・シン党首は自身の選挙区で敗北を認め、党首を辞任する意向を表明しました。
一方で、保守党はトロント周辺の議席の多い都市部で議席を伸ばし、自由党の過半数獲得を阻む要因となりました。ポワリエヴル氏自身はオタワ近郊の選挙区で接戦となっており、開票は続いています。
少数与党のカーニー政権、これからの試練
カーニー首相は、ワシントンに対し輸入関税では譲らない強硬な姿勢を見せる一方で、カナダ経済の対米依存を減らすために数十億ドル規模の投資が必要だと訴えてきました。
しかし少数与党となったことで、こうした大型政策を進めるには、他党の支持を一つひとつ積み上げていく必要があります。国内の生活費高騰や住宅不足、安全保障への不安といった有権者の声にも同時に応えなければなりません。
カナダの自由党は、2004年に4回連続で総選挙に勝利した最後の政党です。今回も長期政権への評価と、対米関係という大きな外圧への対応が同時に問われた選挙でした。
日本から見る「同盟と経済安全保障」の行方
今回のカナダ総選挙は、一国の国内政治を超えて、同盟国との関係や経済安全保障をどう位置づけるかというテーマを突きつけています。強硬な隣国のリーダーを前に、どこまで対立を辞さない姿勢を取りつつ、同時に国際協調や貿易のルールを守れるのか。
日本にとっても、主要な貿易相手であり価値観を共有する国同士が、通商と安全保障をめぐってどのように交渉し、どこで妥協点を見いだすのかは見逃せない論点です。カーニー政権が少数与党という制約の中で、どこまで主権と繁栄を両立させる道筋を描けるのか。今後の動きを静かに追っていきたい局面です。
Reference(s):
Carney's Liberals win Canada election, set to form minority government
cgtn.com








