オーストラリア総選挙前日 首相の座を争う2人が有権者に最後の訴え
オーストラリアの総選挙を翌日に控え、現職のアンソニー・アルバニージー首相(与党・労働党)と野党・保守連合を率いるピーター・ダットン氏が、全国各地で有権者に最後の支持を訴えました。物価高や住宅、移民政策など暮らしに直結する論点が争点となる中、世論調査は労働党の続投を予測しつつも、単独過半数の行方には不透明さが残っています。
アルバニージー首相「オーストラリアにはもっと良い未来を」
総選挙前日の金曜日、アルバニージー首相はクイーンズランド、ビクトリア、タスマニアの各州を駆け巡りました。首相は、自身が率いる労働党政権について、主要政党の党首としては2004年以来となる「連続勝利」を目指しています。
ブリスベンで行った記者会見で、アルバニージー首相は野党・保守連合の選挙運動について「政権を担う準備ができていないことを示している」と批判しました。そのうえで「オーストラリアには今より良い政治が必要であり、自分がそれを実現する」と強調し、安定した政権運営と生活支援策の継続を訴えました。
ダットン氏は巻き返しに自信「選挙当日には大きなサプライズ」
一方、保守連合のリーダーであるピーター・ダットン氏は、同じ金曜日に南オーストラリア州と西オーストラリア州で集中的に遊説しました。世論調査では労働党に後れを取っているとされますが、ダットン氏は勝利への自信を崩していません。
公共放送ABCラジオのインタビューでダットン氏は「選挙の夜には大きなサプライズが待っていると思う」と述べ、2019年の総選挙で保守連合が世論調査の予測を覆して政権を維持した前例を引き合いに出しました。
また西オーストラリア州での記者会見では、有権者に対し「保守連合が政権を担えば、生活費は今より『安くなる』」と強調し、物価高に苦しむ人々への支援を前面に押し出しました。
労働党優勢も、過半数確保は不透明
複数の世論調査は、労働党が下院第1党の座を維持し、政権を続投する可能性が高いと予測しています。ただし、下院(定数150)で単独過半数となる76議席以上を獲得できるかどうかについては見方が分かれています。
労働党が過半数に届かない場合には、小規模政党や無所属議員の支持を得た「少数政権」となる可能性もあります。その際に鍵を握るとみられているのが環境や社会政策で急進的な立場を取る左派政党、緑の党です。
緑の党が「キャスティングボート」を握る可能性
今回の総選挙で、労働党と保守連合のいずれもが単独過半数を逃した場合、緑の党が下院で「キャスティングボート(決定票)」を握る可能性があります。緑の党は現時点で下院に4議席を保有しており、選挙後に議席を伸ばせば、連立交渉や閣外協力の場面で影響力を持つことになりそうです。
過去最多の期日前投票 有権者の関心の高まりも
オーストラリア選挙管理委員会のデータによると、有権者約1800万人のうち、木曜日までに560万人が全国の期日前投票所で既に投票を済ませ、さらに150万人が郵便投票を返送しています。
期日前投票所での投票数は、2022年の前回総選挙で記録した過去最多をすでに上回りました。金曜日は例年、期日前投票が最も多くなる傾向があり、その集計結果次第では記録がさらに伸びる見通しです。
働き方の多様化や仕事・家庭の事情などから、投票日の前に一票を投じることが広く定着しつつあるとも言えます。政治への関心の高まりとあわせ、開票作業や結果判明のタイミングにも影響を与えそうです。
有権者が重視するのは「生活防衛」
公共放送ABCが実施しているオンライン調査「Vote Compass」の最新データによると、回答者が挙げた重要な争点は、
- 物価高など生活費の問題
- 景気・経済
- 政府の運営や透明性
- 気候変動対策
- 住宅問題
などでした。日々の生活に直結するテーマが上位を占めていることが分かります。
特に住宅については、「今の若い世代が住宅を購入するのは、これまでの世代より明らかに難しくなっている」と答えた人が90%を超えました。住宅価格の高騰や賃貸市場の逼迫が、世代間の不公平感として表れていると言えます。
移民受け入れをめぐる世論の変化
同じ調査では、移民受け入れに対する意識の変化も浮き彫りになりました。「オーストラリアが受け入れる移民の数」について、49%が「今より少ない、またはやや少ない方がよい」と答えた一方、「今より多く受け入れるべきだ」と答えた人は16%にとどまりました。
2022年の総選挙前に実施された同様の調査では、「今より多く、またはやや多く受け入れるべきだ」と答えた人が49%に達しており、今回の結果は、移民受け入れに対してより慎重な姿勢が広がっている可能性を示しています。
日本から見るオーストラリア総選挙の意味
資源輸出国であり、インド太平洋地域で重要なパートナーでもあるオーストラリアの政権選択は、日本にとっても無関係ではありません。どの勢力が新政権を担うにせよ、物価高や気候変動、移民政策といった課題への取り組みは、他の先進国が直面する問題とも深く重なっています。
総選挙の結果次第では、オーストラリアの対外政策や経済運営の方向性が変化する可能性もあります。開票作業が進む中で、労働党が単独過半数を確保できるのか、それとも緑の党などを巻き込んだ少数政権となるのか。今後の動きを見守ることが、国際ニュースを読み解くうえでも重要になりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








