米商工会議所、関税が中小企業に「回復不能な損害」と警告
米国商工会議所がホワイトハウスに書簡を送り、現在の関税が中小企業に回復不能な損害を与え、景気後退を招きかねないと警告しました。即時の関税緩和を求めるこの動きは、2025年の米国経済と国際貿易の行方を占う重要なシグナルとなっています。
ホワイトハウスに「即時の関税緩和」を要請
米国商工会議所(U.S. Chamber of Commerce)はホワイトハウス宛ての書簡で、中小企業が関税によって深刻な打撃を受けており、「回復不能な損害」と景気後退のリスクが高まっていると訴えました。書簡は財務長官スコット・ベッセント氏、商務長官ハワード・ラトニック氏、通商代表ジェイミソン・グリア氏宛てに水曜日に送付され、その内容が木曜日の声明で公表されました。
書簡では、行政に対し「米国の中小企業を救い、景気後退を回避するため、直ちに行動を起こす」よう求めています。商工会議所がここまで強い表現で警告を発するのは、関税負担が企業のコスト構造や雇用に直接響いていると判断しているためです。
商工会議所が求めた3つの関税対策
米国商工会議所は、関税の影響を和らげるために、次の3点を柱とする対策を提示しています。
- 中小輸入企業への自動除外
すべての中小企業の輸入者について、一定の条件を満たせば関税を自動的に免除する仕組みを設けること。 - 雇用へのリスクを示せる企業の除外申請プロセス
関税が米国の雇用にリスクをもたらすと立証できる企業に対し、関税の除外を申請できる新たな手続きの整備。 - 国内で生産できない・入手困難な製品の一括除外
米国内で生産できない、あるいは容易に入手できない製品については、すべて関税の適用対象から外すこと。
いずれも「関税そのものをすぐに全廃する」ではなく、「影響の大きいところから現実的に緩和する」ことを狙った提案といえます。
中小企業を直撃する高コストとサプライチェーンの混乱
商工会議所のスーザン・P・クラーク会頭兼CEOは声明で、「日を追うごとに、中小企業は高いコストと途切れがちなサプライチェーンによって、回復不能な損害に近づいている」と危機感を示しました。
中小企業は大企業と比べて、次のような弱点を抱えがちです。
- 仕入れ先や物流ルートの選択肢が少なく、関税や輸送コストの上昇を回避しにくい
- 価格転嫁の余地が小さく、コスト増をそのまま利益圧迫として抱え込んでしまう
- 資金余力が限られ、急なコスト増や在庫の積み上がりに耐えにくい
こうした中で関税が引き上げられると、サプライチェーン(供給網)の混乱とコスト増が重なり、雇用や投資の削減につながりやすくなります。商工会議所が「景気後退」という言葉まで使ったのは、この連鎖を強く警戒しているからです。
「米国では作れないもの」にまで関税が波及
クラーク会頭は、「コーヒー、バナナ、ココア、鉱物や、その他数多くの製品は、そもそも米国では生産できない」と指摘しました。そのうえで、こうした製品に関税を課すことは、単に輸入業者を苦しめるだけでなく、「生活費の支払いに苦しむ家庭をさらに追い込むだけだ」と述べています。
関税は形式上は海外からの輸入品に課されますが、実際には次のような形で国内に跳ね返ります。
- 輸入企業や卸売業者のコスト増
- 小売価格の上昇(消費者物価への波及)
- 販売数量の減少による企業収益の悪化と雇用への影響
特にコーヒーやバナナのような日常的な食品、鉱物のような基礎素材は、多くの産業の「土台」です。その価格が上がれば、家計だけでなく、幅広い産業のコスト増を通じて経済全体に影響が及びます。
日本と世界への示唆:関税と「中小企業目線」の政策
今回の動きは米国の国内問題でありながら、「関税政策をどう設計するか」という点で、日本を含む各国・地域にとっても示唆を含んでいます。
- 貿易摩擦や安全保障を理由に関税が導入される場面は増えつつある
- その負担はしばしば中小企業と一般消費者に集中しやすい
- 政策決定の段階で、中小企業や生活者の視点をどう組み込むかが問われている
日本の企業、とりわけ米国市場と取引のある企業にとっても、米国の関税政策の変化は無視できません。米国の輸入コストが下がれば、現地での販売価格や需要に影響し、サプライチェーンの再編にもつながり得ます。
2025年の世界経済は、不透明な地政学リスクと物価高のはざまで揺れています。その中で、米国最大級の経済団体が「中小企業」と「景気後退リスク」を前面に出して関税見直しを求めた事実は、今後の政策議論に少なからぬ影響を与えそうです。
これから何が注目ポイントか
今後の焦点は、ホワイトハウスと関係当局が商工会議所の提案にどう応えるかです。
- 中小企業向けの関税除外プロセスが具体化するのか
- 米国で生産できない製品のリスト化と除外の範囲
- 景気後退リスクを意識した経済政策パッケージが打ち出されるか
日本を含む世界の投資家や企業は、米国の関税政策の変化を注視しています。中小企業と家計を重視するか、それとも関税による圧力を維持するのか。米国の選択は、2025年以降の国際経済の方向性を映し出す鏡になるかもしれません。
Reference(s):
U.S. Chamber of Commerce warns tariffs hurting small businesses
cgtn.com








